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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

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第391話 絶対王者


 私としては、予選は大きな見どころもなく終了。

 ガロさんもライムもマッシュも予選を突破したものの、苦戦らしい苦戦もなく勝ち進んだ。


「あっさり予選が終わりましたね。もう少し強い人がいると思っていましたが、今のところは盛り上がりなしです」

「ライムとマッシュが強すぎるんですかね? でも、能力の一部が禁止されていますし、闘士の方が意外と強くない……?」

「決めつけるのはまだ早いって。ここからは負けたら終わりのトーナメントでしょ? 強い人たちが出てくると思うわよ」


 あまりの楽勝ぶりに拍子抜けしていたけど、ベルベットさんの言う通り、ここからが本番。

 少なくとも、アールジャックさんとスピンさんは強いからね。


 短いインターバルを挟んで、すぐにトーナメントが行われることになった。

 今日は1回戦だけ行われ、2回戦以降は明日。


 本日だけで決勝まで行ってしまうと、予選免除の人が有利すぎるし、そもそも時間的にも難しいからね。

 アールジャックさんの戦いが見られるだけでも嬉しい。


 そんなことを考えていると、1回戦の第1試合として登場したのはマッシュ。

 予選に続き、またしても第1試合であり、その気になる相手は――まさかのアールジャックさん。


「うわー! マッシュ、いきなり去年の優勝者が相手じゃないですか!」

「去年の優勝者どころか、大会3連覇中の絶対王者ですよ。とんでもなくくじ運が悪いですね」

「マッシュには悪いけど、ここで真価が分かるのはありがたいね。今のところ、闘士のレベルが低いと言わざるを得なかったからさ」


 ブリタニーさんの言う通り、この一戦で今大会のレベルが分かる。

 ヒヤヒヤしながら見守っていると、両者が並び立った。


 やっぱりアールジャックさんはとんでもなく大きい。

 筋肉の厚みもすごいし、並び立つと一気に勝てる未来が見えなくなってしまう。


「すごい盛り上がりですね。今日いちばんでしょうか?」

「絶対王者VS予選を楽々突破した初参加の魔物だからね。そりゃ盛り上がるカードだとは思う」

「実際、どっちが勝つのか私も分からないな。ただ、能力を制限されているのはかなり痛いか」


 私もルーアさんと同じ意見。

 マッシュのいちばんの強みは状態異常にさせる胞子で、今回は最近覚えた魔法も使えないからね。


 単純な戦闘でここまで勝ち進んだとはいえ、さすがに相手が悪すぎると思ってしまう。

 そんな中、早速試合が始まるようだ。


 マッシュは元々武器を扱えないが、今回はアールジャックさんも素手。

 武器差がないのは大きいと思うが、アールジャックさんの拳はもはや凶器のようだ。


「それでは――試合開始!」


 合図とともに、先に動いたのはアールジャックさんだった。

 巨体で、筋肉で極限まで鍛え上げられた体なのに、初速からめちゃくちゃ速い。


 一瞬で間合いに入り込むと、渾身の正拳突きを叩き込んできた。

 動き出しに地面を蹴る音、突きを放つための踏み込みの音、マッシュへ届いた正拳の衝撃音。


 すべてが規格外の威力だからか、すべての動作の音が私たちのいる来賓席まで届く。

 まともに食らえば一撃でノックアウトしてしまいそうな攻撃を、マッシュは何とか頭の傘の部分で受け止め、吹っ飛ばされながらも体勢を立て直してみせた。


 地面を転がされながらも体勢を立て直したマッシュに、観客から大きな歓声が上がる。

 渾身の突きを放ったアールジャックさんも、マッシュがすぐに立ち上がったことに驚きの表情を浮かべたが、すぐに好戦的な笑みへと変わった。


 観客の反応から、大半の闘士が一撃で沈められてきたことが分かる。

 そんはアールジャックさんにとって、久しぶりの手応えある相手。


 その自覚があるからこその、あの好戦的な笑みだと思う。

 正拳突きまでの動作の滑らかさや速度。


 威力も踏まえると、ここからマッシュが巻き返す手が思いつかない。

 獲物を狙うような笑みを見てしまったからこそ、戦わないで逃げてほしい気持ちでいっぱいだけど、マッシュ自身はまだ諦めていない様子。


 すぐに体勢を整え、今度はマッシュのほうからアールジャックさんに仕掛けていった。

 マッシュなりのフェイントを交えつつ、何とかタックルに入ろうとしたが――カウンターの突きが飛んでくる。


 攻撃したのはマッシュのはずなのに、吹っ飛ぶのはマッシュという異常な状況。

 今回も何とか傘で防いだものの、今度はアールジャックさんが動き出した。


 そもそもマッシュのターンが来ていないのと同じであり、起き上がる前に間合いを詰め、体勢を立て直させる前に拳を叩き込む。

 マッシュもさすがで、傘でガードはできているものの、いわゆる起き攻めの形を取られている。


 拳で吹っ飛ばしながら、傘ではないボディ部分を、三日月蹴りやテンカオで着実にダメージを重ねてくるアールジャックさん。

 それでもマッシュは立ち上がったが、ダメージが蓄積し動きが鈍ったところをホールドしてからの――ジャーマン・スープレックス。

 傘から地面に落ちたものの、この一撃が致命傷となったようで、マッシュは倒れたまま動けなくなった。


「勝者――アールジャック!」


 審判の勝利宣言。マッシュは奮闘したものの完敗。

 私はすぐにマッシュのところへ向かおうとしたが、控室から出てきたガロさんが、来なくていいという合図を試合会場から送ってきた。


 実際、マッシュは倒れたままだったものの意識はあるようで、私たちに手を振ってくれた。

 その姿にホッとしたけど……やはり一方的に攻撃され続けられてしまうこのルールは、見ていてヒヤヒヤしっぱなしだなぁ。



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