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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

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第390話 盛り上がり


 コロッセウムに出ている屋台で軽くご飯と飲み物を購入してから、私たちは来賓席に着いた。

 周りはお金持ちという人ばかりで、場違い感に襲われる。


「何だかすごい席ですね……! 僕たち、場違いな感じがします!」

「実際、ベルベットさん以外は場違いだと思いますよ。そんな中、こんな席を用意してもらえてありがたい限りです」


 そんな会話をしていると、続々と試合会場に闘士たちが姿を現し始めた。

 選手層の幅はかなり広く、小柄な闘士や細身の闘士も珍しくない。


 ただ大半を占めているのは、体のごつい闘士。

 体の大きさとパワーでねじ伏せるアールジャックさんが今のチャンピオンということで、流行りが技巧派からパワー型へと移り始めているんだと思う。


 そんなことを考えていると、急に会場がドッと沸いた。

 誰か有名な闘士が登場したのかと思い、きょろきょろと見渡していると……会場に出てきたのはガロさんだった。

 やはり、いまだに人気がすごいらしい。


「あっ、ライムとマッシュが出てきましたよ。緊張している様子はなさそうですね」

「せっかく参加させてもらえることになったんだから、緊張している暇もないでしょ。私たちの代表みたいなものでもあるんだし、ライムとマッシュにはかましてもらわないと」

「ここはライムとマッシュを全力応援だね。ただ……飛び入り参加ができるなら、私も参加すれば良かったよ」

「ブリタニーさんは武闘大会ルールの方が強そうですもんね! 僕も参加しているところを見たか――」

「「「うおおおおおお!!!」」」


 ライムとマッシュを見ながら他愛もない雑談をしていた最中、今日いちばんの歓声が上がった。

 少し前のガロさんへの歓声もすごかったけど、今回は会場が揺れるほどの大歓声。


 姿を見せたのはもちろんアールジャックさんであり、私も姿は今日初めて見たんだけど、一目で分かるほど強烈な見た目をしている。

 身長は200センチを優に超えており、筋骨隆々で岩のような体つき。


 ごつごつした体ながら、無数の傷跡が戦闘経験の多さを物語っており、強いということが戦いを見ずとも分かる。

 何といっても特徴的なのは首の太さで、穏やかそうな顔つきとのギャップが相まって余計に怖い。


「あれがアールジャック? とんでもなく強そうだな」

「間違いなくアールジャックさんだと思います。ガロさんと見比べると……別の生物のように見えてしまいますね」


 ガロさんの背が小さいということもあるけど、それにしても横並びになると別の生物にしか見えない。

 スピンさんがアールジャックさんには勝てないと断言したのもよく分かる。


 軽く話してから別々の方向へ散っていったガロさんとアールジャックさんを見ていると、最後に支配人さんが試合会場に姿を現した。

 本来なら支配人さんの長話が始まってもおかしくないところだけど、支配人さんは開会宣言だけしてすぐに引き上げた。


 1ファンとして、お偉いさんの長話が無駄になりがちということをよく分かっているんだと思う。

 支配人さんに対して密かに感心しつつ、試合会場に視線を落としていると……どうやらもう予選が始まるようだ。


 シードは4枠で、前回大会のベスト4に入った者は予選免除。

 特別参加のガロさん、ライム、マッシュはどうなるのかなと思っていたけど、ガロさんですら予選からの参加のようだ。


「あっ、呼び出されたマッシュが出てきましたよ。予選の第1試合から出番みたいです」

「本当ですね。対戦相手の方は……大きな方ですか」


 マッシュの対戦相手は、スキンヘッドの巨漢の男性。

 武器は大きな鉈のようなもので、見るからにパワー型だと分かる。


 観客の視線も、武闘大会初の魔物であるマッシュに向けられており、第1試合から凄い盛り上がり。

 相手も手強そうではあるけど、ここで負けてほしくはない。


 祈るように見守っていると、早くも試合が開始された。

 先に動いたのは巨漢の男性。


 鉈を振り上げ、マッシュに襲いかかってきたが……マッシュは難なく避けて、背後から思い切りタックルをぶちかました。

 胞子が使えるのであればここで試合終了だろうけど、今回のルールでは禁止されているため、まだ終わらない。


 そう思い、ヒヤヒヤしながら戦況をうかがっていたんだけど……巨漢の男は倒れたまま動かない。

 そんなに強く突進したようには見えなかったけど、もしかしてマッシュは相当強くなっているのか?


「戦闘不能。勝者、マッシュ」


 起き上がろうとしても起き上がれない男を見て、審判がマッシュの勝利を宣言。

 注目されていたカードなだけに、一気に会場のボルテージが上がった。


「マッシュが一撃で倒しましたよ。すごいですね」

「うーん……負けるとは思っていませんでしたが、相手がひどすぎましたね」

「同感だ。倒れまいと踏ん張った拍子に、膝をやったように見えた」


 会場が大盛り上がりの中、シーラさんとルーアさんは冷静にそう分析した。

 マッシュが強くなったというより、相手がひどすぎたから勝てた――ということか。


「とりあえず初戦勝利には変わりないですね! 予選突破も難しいのではと思っていましたが、マッシュも予選突破できそうで良かったです!」


 そこからも流れるように試合が行われ、ガロさんもライムも余裕の勝利。

 これは、トーナメントが始まるまでは盛り上がる試合もなく進んでいくかもしれない。



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