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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

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第385話 三白眼


 とりあえず支配人さんとの話は置いておいて……コロッセウム探索を楽しませてもらおう。

 実際に闘士として長年活躍していたガロさんの案内だし、面白い裏話も聞けるかもしれない。


「ガロさん、どこを目指しているんですか?」

「観客席は観客として来ればいいだけじゃからな。今回は闘士たちが行く場所を中心に紹介するつもりじゃ」

「それは楽しみです! 歴史的建造物でありながら豪華ですし、闘士たちの場所はすごそうですもん!」

「ふぉっふぉっふぉ。ジョエルは良い反応をしてくれるのう」


 前のめりに反応したジョエル君を見て、楽しそうに笑っているガロさん。

 かく言う私も楽しみだし、控室が一体どんな場所なのか想像もつかないからね。


 ワクワクしながらガロさんの後をついていき、通路のような場所を進んでいく。

 きらびやかな観客エリアとは違い、何だか暗くてじめっとした雰囲気に感じる。


「通路の影響か分かりませんが、一気にきらびやかさがなくなりましたね」

「本当にそうですね! こういった通路もコテコテに装飾されているのかと思っていました! あっ! でも、何か書かれていま――ヒィッ!」


 薄暗い通路に入っても笑顔だったジョエル君だったけど、壁に描かれているという“絵”を見た瞬間に悲鳴をあげた。

 怖い絵でも描かれていたのかと思い、私も近づいて見てみたんだけど……壁に残されていたのは、無数の血痕だった。


「これは血痕ですか?」

「闘士たちの血じゃ。恐怖で自らの手を傷つける者もおれば、武闘大会で負った傷の血も染み込んでおる」

「全然きらびやかじゃないですよ! 血塗られた通路とか怖すぎますって!」

「勝手にきらびやかな場所だと勘違いしたんじゃろう。お客さんにはきれいで豪奢な場所だと思わせておるが、闘士からしたら“死合い”が行われる場所じゃからな。……まあワシの時代には、すでに武闘大会で死者が出ることは珍しいくらいになっておったが」


 それこそ『レガースキッド』で見た、ブラック=ラックさんが登場する前の力こそ正義の時代には、死者が当たり前だったのかもしれない。

 いろいろな面で見ても、ブラック=ラックさんは英雄と呼んでいいと思う。


「本当に大会の運営が整備されて良かったですね! 僕、死者なんか見たくないですから!」

「ふぉっふぉっ、ワシもそう思う」


 そんな会話をしながら通路を抜けると、そこは練習場のような少し開けた場所だった。

 かかしがいくつも立てられており、どれもボロボロで年季が入っている。


 地面は砂まじりの土であり、多分だけどコロッセウムと同じ質感を再現しているのだと思う。

 よく見ると、ここの土にも血が混じっているように見えるし、外から見るコロッセウムとは違って本当に生々しい。


「通路も生々しかったですけど、私はこの練習場のほうが生々しく感じます」

「練習場ではなく調整場じゃな。ここでは実際にケンカなんかもあったから、生々しく感じるのも無理はない」

「うわっ! 歯が落ちてますよ! 今のところ、コロッセウムは怖いという感想しかありません!」


 落ちている歯を見つけてジョエル君が怖がっていると……奥から誰かが歩いてきた。

 ここにいるということは、武闘大会の参加者であることは間違いないため、自然と私の背筋も伸びる。


 現れたのは、異様なほど前傾姿勢の男性で、四足歩行で歩き出しそうなほど姿勢が悪い。

 細身なこともあってそう見えるのかもしれないけど……手足がすごく長い。


「ぴーぴーとうるせぇと思ったら、観光客が紛れ込んでいたのか。ここは闘士だけが入ることを許された神聖な場だ。お前らにとっては観光名所の一つなのかもしれねぇが……覚悟もねぇやつが踏み入ってんじゃねぇぞ?」


 声量は決して大きくないが、怒気が混じっているからか、はっきりと聞き取れた。

 外で威張り散らかしていた“肩ぶつかり冒険者”とは違い、なんというか本物という感じがする。


「す、すみませんでした!」

「ふぉっふぉっ。大会前でピリつくのは分かるのじゃが、ワシらに当たるのはやめてもらいたいのう」

「……あぁ? 優しく注意してやったってのに、口答えするとは救えねぇな」


 鋭い三白眼がガロさんをにらみつけ、戦闘モードに入ったように見えた。

 対するガロさんもやる気満々といった様子で、場が凍りついたように感じる。


 ついさっき支配人さんからあれほど念押しで注意されたのに、ここで闘士と争ったら本当に出禁になってしまう。

 正直、ガロさんが負けるとは思えないけど、武闘大会を観戦するためにも、ここは絶対に止めなくてはいけない。


「ライム、マッシュ。すみませんが二人を止めてください」


 私の掛け声にうなずいたライムとマッシュ。

 ライムはバネのように体を引き伸ばしてすかさず2人の間に入り、マッシュは胞子で麻痺させにかかった。


 ガロさんも、手足の長い三白眼の男性も、軽く吸い込んだだけで胞子に麻痺の効果があると分かったのか、腕で口を塞いだんだけど……。

 少量でも十分な効果があるようで、2人は片膝を地面につき、動けなくなった様子。


 ライムについていって、マッシュも成長したことが分かったのはうれしい。

 ただ……結局、闘士に危害を加えてしまったようにも思える。果たして大丈夫だろうか。

 正当防衛が認められることを祈りつつ、私は急いでガロさんのもとへ向かった。



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