表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

398/424

第383話 コロッセウム


 ガロさんの案内でギナワノスを回っていたんだけど……正直、今のところの感想はあまり面白くない。

 何せ、居酒屋かバーにしか行っていないのだ。


 しかも珍しい酒を扱う店ではなく、客の少ない店か値段の安い店の2つ。

 冷静に考えれば、ガロさんは長年ギナワノスに住んでいたわけだし、生活のうえで使う店ばかりになるのもおかしくはない。


 大通りの騒ぎからしても、有名人なのは分かりきっているしね。

 変に期待していた私が悪かったということで、最後の居酒屋も退店した。


「……うっぷ。1店舗につき1杯しか飲んでいませんが、僕、もう何も飲めません!」

「ふぉっふぉ。最近の若いのはだらしがないのう。……ひっく」

「ジョエル君はお酒じゃなくてジュースでしたからね。お腹もたぷんたぷんになりますよ。それより……そろそろコロッセウムを案内してほしいです」

「僕もコロッセウムに行きたいです! 居酒屋はもうこりごりですよ!」


 面と向かって嫌だと言えるジョエル君の性格6うらやましい。

 持ち前の明るさもあってか、嫌味を感じさせないからね。


「うーん……ひっく。もう2軒くらいは回ろうと思っておったんじゃが、嫌と言われたら行けんのう」

「コロッセウム行きたいです! 中に入れるんですか?」

「知り合いがおれば入れるとは思うぞ。……ひっく。ただ、武闘大会前じゃから、もしかしたら入れん可能性もある」

「運次第って感じですか。入れることを祈りながら、コロッセウムに向かいましょうか」


 まだ居酒屋巡りをしたがっているガロさんを、半ば強引にコロッセウムへ誘導する。

 酒好きなのはいいけど、お酒自体はものすごく弱いからね。


 飲むスピードが遅いので、必然的に長居になってしまっていた。

 ここまでを反省しつつ、私以上に暇だったであろうライムとマッシュにも気を配りながら、初めてのコロッセウムへとやって来た。


 遠目からは何度も見ていたけど、実際に入るのは今日が初めて。

 歴史ある建物でありながら、定期的に補修されているのか、きれいな状態がしっかり保たれている。


「初めてこんなに近くまで来ましたけど、迫力がすごいですね!」

「そうかのう? ……ひっく。ワシはもう慣れておるから、特に何も感じんの」

「えー! 佐藤さんはすごいと思いますよね?」

「もちろんです。ずっと来たいと思っていましたし、シンプルに感動しています」


 慣れすぎているガロさんと、感動している私とジョエル君――その間に熱量の差を感じる。

 コロッセウムに行きたがらなかったのも、命を削っていた時期の記憶があって、あまり良い思い出がないのかもしれない。


「中もすごいですね! 広いのに誰もいません!」

「本当に入ってしまって大丈夫なのでしょうか? 不法侵入の罪で捕まりませんよね?」

「……ひっく、大丈夫じゃ。もし何かあっても、ワシが全責任を負うからのう」


 何かあってからじゃ困るけど……もう入ってしまったし、今さら引き返すこともできない。

 ガロさんの後を黙ってついていくしかない。

 

 静かなコロッセウム内に、ジョエル君の感心する声と、ライムのペッタンペッタンという足音が響く中、正面から三人の兵士らしき人物が歩いてくるのが見えた。


 街中で見る兵士とは違い、明らかに体格が普通ではない。

 背筋が伸びる思いでいると、こちらに気づいた兵士たちが走って近づいてきた。


「おい! お前たち、何を勝手に入っているんだ!」


 やはりというべきか、出会い頭にしっかりお叱りを受けてしまった。

 私とジョエル君は体を縮こませ、ひたすら平謝りをしている中、ガロさんは飄々と話し始めた。


「勝手に入ったのは悪かったのう。……ひっく。ただ、ここの支配人とは知り合いなんじゃ。すまんが、呼んできてくれないか?」

「支配人と知り合い……? それは本当なのか?」

「……ひっく。嘘なんかつかんわい。支配人の名前はブライアントじゃろ? ガロが来たと言えば伝わるはずじゃ」

「……確かに合っている。それに……ガロ?」


 ガロさんの名前にピンと来たのか、兵士たちは顔を見合わせて固まった。

 それでも、まだ完全には信じ切れていない様子だ。


「ほ、本当にガロなのか? 偽っていたと分かったらただじゃすまないぞ」

「騙るにしても、ガロは騙らんじゃろ。……ひっく。酔いも覚めてきたし、ちょっと相手をしてやってもええぞ」

「あっ、そういえば……さっき“大通りにガロがいる”って騒ぎになっていたと、新入りが話していました」

「じゃ、じゃあ本当にガロ……いや、ガロさんなのか?」

「そうじゃと言っておる。とにかくブライアントを呼んでくれば、すぐに分かる」

「失礼しました! すぐに呼んできます!」


 態度を一変させた大柄な兵士は、ベシッと最敬礼してから、ダッシュで支配人を呼びに行ってしまった。

 兵士の態度の変化には驚いたけれど、やはりガロさんは“レジェンド”なのだと、あらためて実感した。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  ▼▼▼ 画像をクリックすると、販売サイトに飛びます! ▼▼▼  
表紙絵
  ▲▲▲ 画像をクリックすると、販売サイトに飛びます! ▲▲▲ 
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ