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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

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第329話 師匠


 私が温野菜のチーズ焼きを完成させたタイミングで、ジョーさんも料理を仕上げた。

 先ほどの料理とは別で、パンにディップして食べるソースを作ったみたい。


 美味しそうではあるけど、アツアツで凄まじく食欲をそそる匂いを放っているチーズ焼きには遠く及ばない……はず。

 一抹の不安を抱えつつも、まずはジョーさんの料理から食べてみることにした。


「まずはジョーさんの料理から頂いていいですか?」

「いいぜ。でも、佐藤の料理が冷めちまうけどいいのか?」

「多少冷めても味は落ちないので大丈夫です。それでは頂きますね」


 チーズで蓋をしているから、そうそう冷めることはない。

 それに今は熱すぎるくらいだし、初めて食べる人にとっては少し冷めたくらいがちょうど良い説もある。


 そんなことを考えながら、私はパンを手に取り、ジョーさんお手製のソースにつけて食べた。

 おおー。この料理もなかなか悪くない。


 酸味が効いていて、次の一口が欲しくなる味付け。

 ……ただ、やはり異世界の食材では、どう転んでも私の料理には勝てないと確信してしまった。


「この料理も美味しいですね。次は私の料理をどうぞ」

「……匂いだけだろ。舌は誤魔化されないからな」


 ポツリとそう呟いたジョーさん。

 匂いは美味しそうだと認めてくれているようだ。

 言い方こそキツいが、それだけ料理への情熱が強いということ。


 審査員もいない訳だし、自分の料理の方が美味いと言い張ってドローに持ち込むこともできる。

 だけど、ジョーさんは素直に負けを認めてくれそうな気がする。


「――んぐッ!? ……な、なんだこの料理は!」


 一口食べた瞬間に目を見開き、その後は無言で次々とチーズ焼きを食べ進めていった。

 私も一口くらいは食べたかったんだけど、驚くほどの速さで完食してしまったジョーさん。


「どうでしたか? 私の料理も中々だと思うんですが……」

「な、中々なんてもんじゃねぇ……! 意味が分からない! どうやってこの料理を作ったんだ!」

「茹でてからチーズを乗せて焼いただけ――って、ちょっと落ち着いてください!」


 肩を掴んできたジョーさんを、なんとか落ち着くように説得する。

 調理工程は見せていたはずなのに、納得できないようだ。


「食材ですよ! 食材が美味しいんです!」

「……食材? この見たことのない食材が美味いっていうのか?」

「はい。生でも食べられるので、一口食べてみてください」


 ジョーさんはトマトを一つ手に取ると、勢いよくかぶりついた。

 そして、その一口だけで全てを理解してくれたようだ。


「本当に生でも美味い。こんなに美味い食材が用意されていたのに、俺は見もせずにスルーしたってのか」

「時間制限を設けていましたし、それは仕方がないですよ。私がジョーさんの使った食材で美味しい料理を作れと言われても、絶対に勝てませんからね」

「いいや。俺の今までの考えが全て間違っていた。……さっき辞退すると言ったが、取り消させてもらってもいいか?」

「もちろんです。ジョーさんを引き止めるための料理対決でしたので、残ってくれるならありがたい限りですよ」

「本当にありがとう。今日からは佐藤さん……いや、師匠と呼ばせてもらう!」

「いやいやいや、師匠は勘弁してください。料理の腕自体はそこそこなんですから」


 必死で拒否したんだけも、ジョーさんは師匠呼びをやめるつもりはないらしい。

 既に坊主頭なのに更に丸めてくると言っているし、見た目通りの超絶熱血系だ。


「お、佐藤さん。採用試験をやっていたのか?」


 腰を90度に曲げて頭を下げているジョーさんに困惑していたところ、調理場を見に来たノーマンさんが通りかかった。

 ここはノーマンさんに助けてもらおう。


「そうなんですが……師匠になってくださいと言われて困っていたんです」

「はっはっは! 全くもって意味が分からないな。まぁでも、師匠くらいなってあげればいいんじゃないか?」

「勘弁してください。料理は全くの無知なんですから」

「師匠。この師匠に馴れ馴れしい人は誰なんだ?」


 私への態度が気に食わなかったのか、ジョーさんはノーマンさんに睨みを利かせている。


「ノーマンさんはこの村の料理長です。睨むのはやめてください」

「料理長? 師匠よりも美味い料理を作るのか?」

「当たり前ですよ。私の……師匠みたいなものです」

「師匠の師匠? 俺の大師匠ってことか!?」

「何を言ってるんだこいつは。頭が弱そうだな」

「ということで、ノーマンさん。ジョーさんをよろしくお願いします。料理の腕は間違いありませんので」

「おい。俺に面倒なことを押しつけんじゃねぇ」

「大師匠、よろしく頼む!」


 ジョーさんをノーマンさんに託し、私は急いで宿のキッチンを後にした。

 何だかめちゃくちゃなことになっていたけど、結果としてジョーさんも残ることになったし、色々と言うことも素直に聞いてくれるようになったと思う。


 ツンケンしていた時の方が面倒くさくなかった説はあるけど……。

 何より、頼もしい料理人が増えたのは非常に大きい。




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