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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

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第310話 顔合わせ


 レティシアさん以外の方とも挨拶を済ませた。

 元奴隷と聞いていたから、酷い状態の方もいるのかと思っていたけれど、今回やってきた方は全員健康だった。


 過度に怯えた様子もないし、酷い扱いを受ける前にクリスさんから助けられたのかもしれない。

 武力行使でなければ、この状態で救い出されることはまずないだろうし、反対的な感情と肯定的な感情が入り混じってしまう。


 それから、今回やってきた方は全員が獣人。

 ただし種族は異なっており、犬人が4人、猫人が3人、それから狸人・兎人・狼人が1人ずつといった内訳だ。


 基本的にはレティシアさんと同じく、耳と尻尾以外は人間といった感じだが、狼人の男性ワルフさんだけは全身の毛や牙などが狼寄り。

 話によれば、血の濃さによって見た目に変化があるらしく、ワルフさんはクオーターで獣の血が濃いのだという。


 能力的にも秀でている部分が多く、力も他の人より強いと言っていた。

 ただ、ワルフさんは獣っぽい自分の見た目にコンプレックスがあるようで、夏なのに長袖長ズボン。

 更に大きな帽子を深く被って顔を隠している。


 私からしたら、狼だし強そうだし、すごくかっこいいという感想しかないんだけどなぁ。

 そのあたりのコンプレックスもいずれ解消してもらいたいと思いつつ、まずはこれから暮らしてもらう部屋の案内を行うことにした。


 男性陣はこれから建築の手伝いをしてもらうということで、ロッゾさんやシッドさん達の家の近くに大きめの家を用意している。

 女性陣には農作業を手伝ってもらうため、龍人族の住む村の近くに家を用意した。


 レティシアさんだけはどうするか聞いていないため、これから決めてもらうことになる。

 能力が高く、本当に何でもできるため、自由に動いてもらうのがいいと私は思っている。


「これから住んでもらう家はこんなところになります。明後日から早速仕事についてもらいますが、慣れるまではゆっくりで大丈夫ですので」

「佐藤さん、ほんまにおおきに。ここまでちゃんとした場所用意してもろえるなんて思ってへんかったわ。恩返しできるように、しっかり働くさかい、期待しといてな」

「私には恩なんて感じないで大丈夫ですよ。人手不足ですし、こちらとしてもありがたいので。準備不足で歓迎会は行えないんですが、明日は納涼会を行いますので、ぜひ参加してくださいね」

「納涼会がどんなもんなんか分からへんけど、必ず参加さしてもらいますわ。楽しみにしときますえ」


 それぞれの案内を終えたところで、レティシアさん達にはゆっくりしてもらうことにした。

 今回も前回同様に徒歩での移動だったわけだし、確実に移動疲れがあるだろうからね。


 明日は納涼会ということで、去年まで行っていた流しそうめんやスイカ割り。

 それから、夜には手持ち花火を行う予定だ。


 ヤトさんやローゼさん、それからミラグロスさんにアス君。

 王都からベルベットさんも遊びに来るし、顔合わせを行うにも良いタイミング。

 私も明日を楽しみにしつつ、農作業に取りかかるのだった。



 翌日。

 今日は納涼会でありながらも、仕事を行わなくてはいけない。


 納涼会の準備はロッゾさんとシッドさん達、

 それからノーマンさんとヤコブさんに任せ、早く仕事を終わらせるために全力を尽くす。


 早めにやってきてくれたミラグロスさんやベルベットさんにも手伝ってもらいつつ、お昼前にはすべての作業が終了。

 各々、お風呂やシャワーに入って汗を流し、準備は万端。


 今年は流しそうめん機も5台に増えており、大人数でも参加することができる。

 配置は難しいけれど、過去に参加したことがある人は後列。


 初参加組とヤトさんを含む不器用組が前列ということで決まった。

 ドラゴンと龍人族の方々に、ダークエルフの方々、それから私の従魔。


 ミラグロスさんとアス君の魔族もおり、今回新しく仲間に加わった獣人族の方々と他種族がごった返しており、獣人族が一切浮いていない状態が作り出せている。

 何なら、人間が一番数として少ないくらいで、良い環境を作れていると我ながら感じる。


「佐藤さん、そうめんの準備ができたぜ。大量に茹でたし、なくなることはない……はず」

「ノーマンさん、ありがとうございます。汁や薬味の方はどうですか?」

「バッチリだ。基本の汁から梅風味、青じそレモンや肉汁まで多種多様なものを用意してある」


 ノーマンさんが指差した方向を見てみると、鍋に入った6種類のつけ汁が用意されていた。

 どれも美味しそうだし、ノーマンさんの成長が凄まじい。


「6種類ってすごいですね! 私のいた世界でもそんなに用意されることないですよ」

「佐藤さんと日々いろいろなものを作っているからな。限界だと思っていた料理の腕が、メキメキと上達していくのが分かる。佐藤さんにはいくら感謝してもしきれない」

「それはこちらのセリフです。いつもいつも本当にありがとうございます」


 先に頭を下げてきたノーマンさんに、私はより深く頭を下げてお礼を返す。

 ノーマンさんがいなければ、イベントの大半が実行不可能だからね。

 最大限の感謝をしつつ、作ってくれた6種類のつけ汁を楽しませてもらうとしよう。



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