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38歳社畜おっさんの巻き込まれ異世界生活~【異世界農業】なる神スキルを授かったので田舎でスローライフを送ります~  作者: 岡本剛也
第4章

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第304話 リハーサル


 たこ焼きの第一陣が焼き上がったタイミングで、サムさんたちがやってきた。

 明日は運営に回ってもらう予定だけど、今日はお客さんとして楽しんでもらう。


「美味しそうな匂いですね。1パックもらってもいいですか?」

「もちろんです。中が激熱ですので、十分に気をつけて食べてください」


 私はたこ焼き8個入りのパックを手渡す。

 明日は対価として銀貨2枚をいただく予定だけど、今日はリハーサルのため金銭のやり取りはしない。


「あっふい! でも、物凄く美味しい! 流石は佐藤さんの手掛けた料理だ」

「ありがとうございます。他の屋台も美味しいので、ぜひ食べてみてください」

「ああ、遠慮なくいただくよ。食べ物系は心配していなかったけど、問題なさそうで安心だ」

「お墨付きをいただけて良かったです」


 今回たこ焼きに使用したタコと、イカ焼きに使用したイカは全てこの世界のもの。

 似てはいるが魔物のため、味が落ちないか心配だったが、この分なら大丈夫そうだ。


 その後も私はたこ焼きを焼き続け、サムさんの仲間やヘレナを含む従魔、ロッゾさんやシッドさん、さらには龍人族やダークエルフの方々にも振る舞った。

 日が暮れているとはいえ、暑い中でのたこ焼き作業は大変だが、明日は今日の比ではないだろう。


 頭にタオルを巻き、汗を封じ込めるスタイルで無心で焼き続けること約3時間。

 リハーサルが終了し、ようやく灼熱地獄から解放された。


「佐藤さん、お疲れ様です。かき氷を食べますか?」

「シーラさんもお疲れ様です。かき氷、いいですね! いただけたら嬉しいです」

「分かりました。すぐに削ってきますね!」


 シーラさんは山盛りのかき氷を持ってきてくれ、私の好きなイチゴに練乳もたっぷりとかけてくれている。

 水分補給はしていたが、暑さから解放された後のかき氷は格別だ。

 私は生唾を飲み込み、口いっぱいにかき氷を頬張った。


「……はぁー! 生き返ります! 氷も最高に美味しいですね」

「喜んでもらえて良かったです。氷は佐藤さんの指示通り、モージとヘレナが魔法で作った天然氷ですからね」

「こだわって正解でした。食べる手が止まりません」


 頭がキーンとならないこともあり、山盛りのかき氷を一気に完食。

 縁日関係なく、かき氷だけでも喜んでもらえるクオリティであり、明日のお客さんの反応が非常に楽しみ。


「佐藤さん、お疲れ様。……おっ、佐藤さんもかき氷を食べていたのか」

「サムさんもお疲れ様でした。かき氷は食べましたか?」

「ああ、もちろんいただいたよ。今回も美味しい料理ばかりだったが、個人的に1位はかき氷だったな。フレーバーも豊富で、あと5杯は食べられるくらい美味しかった」

「大絶賛いただけて良かったです。他の屋台や全体的な総評はどうですか? 特に修正点はなく、明日を迎えて大丈夫でしょうか?」

「遊戯系の屋台の一部だけルールをもっと明確にするつもりだが、それ以外は完璧だ。模擬戦大会に続き、佐藤さんは本当に面白いイベントを考えつくな。イベンターとして素直に感心してしまう」

「ありがとうございます」


 凄いのは私ではなく、お祭りという文化を作り上げてきた先代の方々。

 しかし、ここで謙遜しても困惑させるだけなので、素直に賛辞を受け取ることにした。


「この面白いイベントを失敗に終わらせないためにも、明日は運営側として回させてもらうよ」

「はい。よろしくお願いします」


 サムさんと握手を交わし、リハーサルは終了。

 明日も朝早くから農作業を行わなければならないため、片付けを終えて早めに就寝した。



 翌日。

 1日の流れは昨日と同じ。朝早くから農作業に取り掛かり、お昼過ぎまでに全てを終わらせる。


 模擬戦大会の時のように朝から人が押し寄せることも心配していたが、王都の方で人数制限をかけてくれたようで、午前中は数人しか集まっていない。

 おかげで農作業は捗ったが、人の流れが少ないとそれはそれで不安に感じる。


 これだけ準備して人が集まらなかったら申し訳ない。

 私が密かに抱いていた不安はすぐに杞憂だったと証明される――第一陣がやってきたのだ。


 馬車は数十台に上り、絶え間なく人がやってくる。

 第一陣の人の多さに火がつき、さらに速度を上げて農作業を終わらせた。


 農作業を終えるとすぐに屋台へ向かい、縁日を始められる準備を整える。

 そのタイミングで、王都とは反対側からの馬車や、ヤトさんとローゼさんたちも空から到着。


 夕方を前にして既に大賑わい。こちらのテンションもぐんぐん上がる。

 人の往来や案内はサムさんに任せ、私たちの仕事は美味しい屋台飯を提供すること。

 気合を入れて頬を叩き、少し早いがたこ焼きの第一陣を焼き始めたのだった。



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