第248話 適応力
シーラさんとの決勝戦も、すぐに行うことにした。
この後は去年と同じくボードゲームも控えているため、あまり時間をかけていられない。
本当はコンボの確認をしたかったが、万全の準備ができていないのはシーラさんも同じ。
Switchが2台あればいいのだけど……現状は1台しかないので、仕方がない。
今後のスマブラ利用者次第では、新たなSwitchの購入も検討するつもりだ。
そんなことを考えているうちに、決勝戦の時間がやってきてしまった。
シーラさんの選んだキャラは、麺を使って攻撃するミェンミェン。
このキャラは64時代には存在しておらず、よく知らないキャラだが、CPUとは何度か戦っている。
リーチが長く、遠距離攻撃も多彩。
復帰も強いため、キャラパワーとしては間違いなく上位に位置するだろう。
ここで初めて見せられたキャラに困惑しつつも、対応策ははっきりしているため、まだ戦える。
空中機動力の高さを生かして翻弄しながら近距離戦に持ち込み、私は的確にダメージを与えていった。
ヨッシーはバタ足が強力で、ダメージを蓄積させ、相手がバタ足を意識し始めたところで上に飛ばしてコンボにつなげる。
ヨッシーの代名詞であるタマゴ投げにはメテオ効果もあり、こちらのペースでまずは1ストックを奪い切った。
シーラさんはなるべく距離を取ろうと立ち回っているが、この駆け引きではこちらに分がある。
岸際で取れる行動が多く、追い込んでしまえばヨッシーが圧倒的に有利だ。
ミェンミェンは一撃のダメージが大きく、ダメージをかなり稼がれてしまったが……しっかりとコンボからの空中前攻撃メテオで仕留め、2ストック目も取り切った。
こうなったら、大会を通じて1ストックも取られずに完全優勝を狙いたいところだが、ここは堅実に戦うことにする。
なるべく飛ばされないように立ち回りながら、着実にダメージを与えていく。
その後1ストックは取られてしまったものの、どう足掻いても負けない盤面を作り出すことに成功。
いつ飛んでもおかしくないダメージ量に消極的になったところを狙い、しっかりコンボを繋げて3ストック目を取り切った。
シーラさんはやり込んでいるだけあって、かなり手強い相手だったが、優勝できて本当に良かった。
仲間内だけのスマブラ大会とはいえ、優勝するというのはやはり嬉しいな。
「佐藤さん、強すぎます……! ガードの隙もありませんし、駆け引きでは全部負けてしまいました」
「シーラさんも強くなっていましたよ。駆け引きの部分は……数をこなすしかありませんね」
オンライン対戦ができれば、シーラさんは今の倍は強くなっていると思う。
実質的に相手がヘレナしかいない状況では成長が難しく、駆け引きで私が勝ってしまうのも仕方のないことだ。
「準優勝は悔しいですが、負けたのが佐藤さんなら悔いはありません。この後のボードゲームで取り返して、総合優勝を狙います!」
「ぬっはっは! シーラ、わらわを忘れておるな! わらわも佐藤と同じく優勝したから、ポイント的には優勝候補筆頭なのじゃ!」
会話に割り込んできたのは、いまだにテンションの高いヤトさん。
威張り散らしてはいるけど、ヤトさんがボードゲームで好成績を残せる印象はない。
なにせ、嘘をつくのが下手だからね。
やってみないと分からないが、現時点でポイントでは私とヤトさんが上回っているものの、優勝候補筆頭はシーラさんだと思う。
「ボードゲームでは負けないからね! 今回も部門ごとの優勝賞品があるんでしょ?」
「もちろんです。スマブラ部門、ボードゲーム部門、総合成績に応じて賞品がありますので、スマブラでの成績が振るわなかった方も全力で頑張ってください」
私のそんな発言に、娯楽室がドッと沸いた。
みんなノリが良くて助かる。
「それでは早速始めていきましょうか。今回のゲーム大会に備えて、新たなボードゲームも入荷していますので、そちらからやっていきましょう」
「……楽しみ。新しいゲームなら、みんなスタート地点が同じですもんね」
「はい。どなたでも勝つチャンスがありますので、ルールをしっかり把握してくださいね」
ということで、優勝の余韻に浸る間もなく、ボードゲーム部が開始された。
スタート地点が同じとはいえ、やはり慣れている人が強くなる。
基本的にはボードゲームに慣れている人が好成績を残す中、好成績を連発したのはローゼさん。
決して嘘をつくのが上手なわけではないが、観察眼が鋭いようで、嘘を見抜くのが非常に上手い。
さらに、成績にバラつきが出る運要素の強いゲームでも圧倒し、初参加ながら見事に優勝に輝いた。
スマブラでもそうだったが、ローゼさんの適応能力は群を抜いて高い。
2位はシーラさんで、去年と同じくスマブラでもボードゲームでも惜しくも2位。
3位は去年の優勝者・アシュロスさんで、やはりボードゲームが強いようだ。
スマブラ大会で優勝したヤトさんはブービー、私も成績としては中位。
つまり、スマブラ部門では2位。
そして、ボードゲーム部門で優勝したローゼさんが総合優勝となり、今年のゲーム大会の覇者に決まった。
どちらも2位という素晴らしい成績を残しながら、総合優勝を逃したシーラさんは、とても悔しそうだった。
運要素で逆転された面もあり、今大会で最も強かったのはシーラさんという印象だが、運も含めての実力。
シーラさんには、来年こそ雪辱を果たしてもらうとして、今回はしっかりとローゼさんを讃えよう。
初参加・初プレイでこの成績はまさに化け物であり、紛うことなき総合優勝者。
ローゼさんには連覇を目指してもらい、優勝賞品を贈呈することにしよう。





