第237話 大量の魔力塊
滞在期間中、しっかりともてなしたことで、ファウスティナさんは機嫌よく帰っていった。
この場所を気に入ってくれたようで、また必ず訪ねますという言葉も残してくれた。
そろそろ冬が訪れることもあり、次に会うのは年明けになると思うけれど、その頃にはサツマイモの結果も出ているだろうし、二つの意味で再会が楽しみだ。
持ってきた鉱石が使えるかどうかもロッゾさんが試してくれているし、魔族の方々とは積極的に交流していきたい。
そんな思いに耽りながら、久しぶりに農業に専念する日々を送っている。
冬に入る前のラストスパートでもあり、ここでしっかりとNPを貯蔵しておきたいところだ。
「佐藤さん、こちらの収穫が終わりました」
「シーラさん、ありがとうございます。こっちも種や苗植えが終わったので、あとは片付けて上がりましょう」
「はい。この後は畑に再集合でしたよね?」
「ですね。体を流してからでいいので、シーラさんも来てくださると嬉しいです」
「もちろん行かせていただきます。それでは、また後ほどよろしくお願いします」
そう言うと、シーラさんは小走りで別荘に戻っていった。
私はその背中を見送ってから、戻ってくるまでに準備を進める。
これから行うのは、従魔たちへの魔力塊の配布。
定期的に魔力塊は与えているのだが、つい先日、蓮さんたちが大量の魔力塊を送ってくれた。
どうやらドニーさんも積極的に集めてくれていたようで、馬車2台分の魔力塊が送られてきたのだ。
ダンジョン攻略前に分配したいということで、今日のうちに全員に行き渡らせたいと思っている。
進化を重ねていることや、もともと強い魔物であることもあって、最近はあまり進化が起きていなかった。
強いて挙げるなら、ゴブリン部隊の一部が進化したくらいだが、ゴブリンソルジャーならソルジャー、ゴブリンファイターならファイターと、元の名称をそのまま使っているため、進化について特別に触れることはしていない。
ただ、ゴブリンたちにもきちんと進化してもらいたいので、魔力塊はしっかりと与えるつもりだ。
そんなことを考えながら、せっせと物置に積んでいた魔力塊入りの麻袋を畑に運んでいく。
従魔たちを呼びに行くつもりだったけとわ、どうやら魔力塊の存在を嗅ぎつけたようで、勝手に集まってきてくれた。
「佐藤さん、お待たせしました。もう従魔たちを集めたんですね」
「集めたというか、勝手に集まってきたというか……。とりあえず、均等に渡していきたいと思っているので、手伝ってもらってもいいでしょうか?」
「もちろんです。……あれ? ヘレナは呼びに行かなくていいんですか? さっきリビングでだらだらしていましたよ」
「ヘレナは魔力塊を食べないので大丈夫です。嫌いというわけではないみたいですが、好んで食べたいとは思わないようです」
「そうなんですね。常々人間みたいだとは思っていましたが、やっぱり魔物ではないんですね」
まぁ、ヘレナも魔力塊を大量に摂取すれば、他の従魔と同じように進化するとは思うけど、本人が望んでいないのに無理やり食べさせるようなことはしない。
他の従魔たちは好んで食べたがっているしね。
ということで、さっそくだが魔力塊を配ることにした。
これだけの量があれば、誰かしらが進化するはずだが……あくまでご褒美なので、進化は期待せずに渡していく。
「マッシュ、ライムはそっちにあるものを食べてください。……あっ、ライム用の金鉱石も届いていますので、分けておきますね」
銀鉱石を大量に食べてシルバースライムに進化したこともあり、今回は大量の金鉱石も一緒に送られてきた。
順当にいけば、次はゴールドスライムになるはずだが、進化するかどうかは分からない。
奪い合いにならないように、私は均等に分けて配っていったのだけど……。
クイードの分の魔力塊を渡している最中に、突如ライムの体が光り始めた。
これは確実に進化の兆候。
今回の進化第1号も、ライムのようだ。
「佐藤さん、ライムが光っていますよ! ライムは本当に色々と進化しますね」
「最初の普通のスライム状態が、もう思い出せないぐらい進化していますね。進化のたびに強くなってくれているので、こちらとしてはありがたい限りですが」
シーラさんと話しながら、ライムの輝きが収まるのをじっと待つ。
やがて輝きが落ち着き、現れたのは金色に輝くライムだった。
シルバースライムの時も煌びやかだったが、ゴールドスライムはやはり別格。
心くすぐられる色合いだし、何だかとても強そうにも見える。
ドラクエで言うなら、次の進化先はメタル……というイメージだが、どうなるかは全く読めない。
とりあえず今は進化したライムを褒めつつ、次の進化は深く考えずに楽しみに待つとしよう。





