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018 7月8日
「…………ごめんなさい、あの……嫌ですよね。こんな女」
「…………」
「……私は……慶介さんの優しさを利用してしまいました。……だから、ごめんなさい。明日には……出て行きます。もう……迷惑をかけたくないから」
「………………」
あー、駄目だ。もうこれ以上、黙っていられない。
全てを吐露して。
申し訳なさそうに小さくなっていく彼女を見て。
それでも、彼女を突き放すことなんて出来るはずもなかった。
我慢の限界だ。
分かっている。
俺がこの子に干渉出来るほどの人間ではないことぐらい。
侑子と知り合ってたかが数日の男が。自分に似ているからという理由だけで、彼女を慰めるようなこと、そんなことはあってはならない。
それは驕りだ。
人として最低の行い。
それでも。
彼女の就寝前の言葉が、俺の胸に突き刺さる。
床で彼女はいつも以上に小さく寝息を立てている。俺はそれを黙って聞いて、今日という日を終える。
今まで……世界ってこんなに静かだったっけか……?




