011 7月7日
コンビニのバイトは基本的に深夜に入っているので昼は基本暇だ。
なのでいきなり外に放り出されてもやることがない。
街をぶらつくのも面倒臭い。どこかの店に入るのも面倒臭い。結果的に近くの公園のベンチに座って何もせずにぼーっとすることが俺にとって唯一の時間潰しであった。
ベンチの上で俺は煙草に火を付ける。
俺は基本的に煙草は吸わない。でもどうしても心を落ち着けたいときだけ、煙草に手を伸ばす。
なぜこんなに心が揺れているのだろうと考えると、答えは一つしか浮かばなかった。
東山侑子。
無用心にも俺は、名前しか知らぬ少女を家に残した。残しておいて後悔したのかと言われると、そうではないと自分では思う。
盗まれて困るものは家にはないし、通帳も印鑑も財布と一緒に常に持ち歩いている。単純に自衛のためだ。自宅は侵入しようと思えば進入出来てしまうほどセキュリティは手薄なので、自衛の術を施さないと、それは入ってくれと言っているのと同じだ。
空に昇る煙を見ながら、俺はもう一度考える。
……何年ぶりだったろうか。
……あんな風に笑ったの。あんな風に話したの。
結局答えは分かりきっていた。
俺は数年前から人と関わることをやめた。理由は特にない。あえて理由付けるなら面倒だから。
媚びるのも。
諂うのも。
何もかもが面倒になった。――もしくは冷めた。
だけど人は人と関わらなければ、交わらなければ生きていけない。生きていくためには食べなければいけない。食べるためには働かなければならない。働くためには人と関わらなければならない。この悪循環を断ち切る術を俺は知らない。
『――誰もお前の言うことなんか信じない』
ちっ。
俺はくだらない考えを吹き飛ばすように、口の中に溜まった煙を吐き出す。
もくもくと煙が立ち昇る。
……ほんと、何であんな面倒なもの、抱えちまったかなー。




