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TSヤサグレVTuberは輝きたい  作者: 恋狸


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28/31

引きこもり、家を出る

 ──レヴィ・スケルト。


 【ばーちかる】三期生の彼女は、生粋のゲーマーとして知られている。というのも、彼女はデビューしてから一度たりとも雑談配信をしたことがない。

 要はゲーム配信しかしない、というスタンスでVTuber活動を行なっていたりする。


 そんなんで数字取れんの? と思うかもしれないが、彼女にとってゲーム配信こそが雑談枠のようなもので、超絶上手い神プレイと巧みな話術で大きく数字を伸ばしている。


 現在のチャンネル登録者数は125万人。

 【ばーちかる】においても三番目に位置する登録者数の多さで、事務所に来るゲーム案件の全てをこなして貢献している。


「……クソ……油断してなかったら勝ってた……って言えたら良かったんだがな……!!」


 ボロ負けだった。

 手も足も出ずにあたしは敗北した。


 そりゃ相手がプロゲーマーだったら、流石のあたしも「まァ、勝てねぇ」と納得できる。そもそもVTuberとプロゲーマーじゃ畑が違ぇ。

 だが、レヴィ・スケルトはプロゲーマー級の腕前ではあるがプロゲーマーではねぇ。VTuberだ。あたしは同じ畑の人間に劣っていたのだ。


「あぁくそ許せねェ……って最近こんなことばっかだな!! 負けず嫌いすぎるあたしの性格を恨むぜ……」


 とはいえ負けっぱなしで過ごせるほどあたしの沸点は低くないし、負けた相手に負けたままでいることは屈辱でしかない。

 

 歌の次はゲームか……やってやろうじゃねぇか。

 喫緊の予定全部ブッチしてゲームの練習してやらァ!!!



☆☆☆


「ダメです」

「ハイ……あの、本当に事務所行かなきゃダメなんですか。リモートとかで良いんじゃ……」

「機材とスペックの都合上、リモートじゃ敢行することができないんですよ」

「なるほど……」


 あたしに案件が来ていた。

 こんなクソムーブかましてるあたしに案件をくれる企業なんかいるわけない、とは思っていたが思ったよりも応募があったらしい。

 まァ、注目自体はされてるからな。企業のイメージが損なわない案件内容であれば利があると考えたんだろう。


 んでもって【ばーちかる】には案件のノルマがあったりする。

 複数の案件が来た場合、月に2回は受けなければならないというノルマがある。クソです。


 で、その案件が厄介なもんで。

 新型ゲームコントローラーの案件なのだが、企業からの要望でFPS配信で使って欲しいとのこと。

 それこそ(くだん)のレヴィ・スケルトの出番だろ……と思うが、どうやらあたしのキレ芸を見たいらしい。

 別にキレてるのを芸にしたわけではねーんだが、確かにFPSはプレイしてて永遠にイラつくからな。

 

 レヴィ・スケルトは"冷静"そのものみたいな女だし、キレ芸は期待できるものではない。

 

 ……おい、それってあたしがFPSでミスることが前提じゃねーか。……てか、なんでコントローラーの使い心地の案件なのに主題がキレ芸なんだよ。


「あたしのパソコンのスペックじゃ無理ですか」

「恐らく。……不備があると困りますし、企業案件は一定の言っちゃいけないこと……みたいな暗黙の了解があったりするので、万が一トラブルが起きた際に止められるようにしたいんです」


 そのために遅延設定──実際にあたしが話してから5分後にリスナーに届く設定──にするらしい。

 ……まァ、今の時代色々とセンシティブだもんな。ポリコレだとか著作権がどうのとか云々はあるわな。


 流石にあたしもめんどくせぇ〜、とは言えない。

 そこら辺を間違えると業界から追放されるし。


「分かりました……事務所に行きます……」


 あたしはマネージャーからの電話に項垂れた。

 コミュ障のあたしにとって、対面で人に会うというのは割と絶望なのである。


「では、明後日よろしくお願いしますね」

「あい……」


 憂鬱な気分になりながら電話を切る。

 ……まあ、目を合わせなきゃ何とかなるか?


 

 ということであたしは、唯一の弱点──コミュ障を人前で晒すことが決定してしまったのである。



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― 新着の感想 ―
ゲーム配信でお金貰ってるなら それは立派なプロゲーマー(屁理屈 あと電話での主人公の借りてきた猫っぷりw
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