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出会い

今話も読みにきてくださってありがとうございます。

相変わらず誤字脱字が多くてすいません、報告お待ちしております。


一迅社様より「地味な私が転生したら王太子妃の取り柄のない妹だったので、自立の為に頑張ります」の書籍化が決まりました。発行をお楽しみに。

星読みの力で見た場所に近づくと、淡く光る小さな白い花が所々に咲いている。

「あった。そうっと根っこから引き抜いて…」

三本ほど引き抜いて、おばあちゃんから譲り受けた保存と収納の魔法がかかった魔法鞄に入れると、森の館に帰ろうと踵を返した。

「さて、帰るか……えっ! 人? 生きてる?」

生い茂った草に隠れるように男性が倒れていた。

「ちょっと! 生きてますか? 大丈夫?」

焦って男性を揺さぶると、ううっと小さな呻き声がして男性がゆっくり目を開けた。

紺色の髪に、深い紫色の瞳。

驚くほど整った中性的な顔立ちは男性ながら色気を感じるほどだ。

「水……」

微かな呟きに、ハッとして魔法鞄から革の水筒を出す。

「水ね。はい、お水よ」

水筒の蓋を開けて口元に持っていくと、男性は水をこぼしながらもゴクゴクと飲み込んだ。

「助かった……ありがとう」

そう言うと男性はまた目を閉じた。

「ちょっと! あなた!」

呼びかけてももはや返事がない。

レオンが男性に近寄り前足で頬をムニムニと押すがそれにも反応はない。

どうやら再び意識を失ったようだ。

「どうするの……この人……。足も怪我をしているみたいだし、ここに放っては置けないわよね」

男性の腕を取って持ち上げようとするが、見た目以上に体躯の良い男性の腕一本浮かせるのがやっとだ。

「重い……。ちょっと、レオン。森の館まで運んでよ」

「えーー。俺、男はあまりのせたくないんだけど。しょうがないな……」

かわいい茶色の猫のレオンはそう言うと、みるみると大きくなり立派な立髪を生やした獅子になった。

レオンは男性の襟元を咥えると、軽く首を振って男性をドスンと自身の背に乗せた。

「レオン。怪我人なんだからそうっとね」

「注文が多いな……。帰るんでしょ? リリィも早く乗って」

「うん、お願い」

伏せの体勢になったレオンにリリアナがよじ登ると、レオンは立ち上がった。

「しっかり掴まって、走るよ」

獅子は来た道をあっという間に戻り、星読みの魔女の森の館に着いた。

「こっち。予備のベッドに寝かせて」

男性の右足は、何かの魔物によってざっくりと切られていた。

「わっ、痛そう。とりあえずポーションだよね」

棚からポーションを取り出すと、瓶の蓋を開けてポーションを少しずつかけた。

シュワシュワと音を立てて泡が怪我を包み、泡が消えると共に傷も消えていた。

「良かった。中級で効いた。でも結構血が流れたのかな。顔色はまだ悪いね。しばらく休ませた方がいいかも」

私がそう言うと、猫に戻ったレオンが言った。

「リリィ、コイツこの家に入れて大丈夫だったのか? 紹介を受けたわけでも導かれたわけでもないんだろ?」

星読みの魔女の館にぐうぜん辿り着く事は基本的にはない。

大賢者による結界が、許された者しか入れないようにしているのだ。

紹介で事前に連絡をしてきたものか、または星読みで魔女の館に来ることを見たもののみだ。

「まあ、しょうがない。あんなとこに怪我人を放って置けなかったもん。動けるようになったら、他言しないように言って、すぐ帰ってもらうよ」

「それしかないか」

男性から小さな呻き声が漏れる。

「リリィ、ローブ、ローブ」」

「あ、そうだった」

私は慌ててローブを身につけてフードを深く被った。

たちまち姿は背の高い美女に変わる。

「ここは……」

男性がゆっくりと目を開け、あたりを見渡した。

「確か、俺は森でブラックベアーに襲われて。足を……」

男性は上掛けをガバリとめくると自分の足を見た。

「治ってる。夢だったのか……?」

「夢じゃないわよ。足に酷い怪我をしていたわ。でもブラックベアーに襲われてよくあの程度の済んだわね」

男性に近づくと、男性は目を見張った。

「貴方は! もしかして星読みの魔女様では?」

ああ、できれば知っていて欲しくなかった。やはり私を探してこの森に来たのか。

「私は、貴方を探してこの森にやってきたんだ。貴方に占って欲しいことがあって……」

国の命運を握るほどの高名な星読みの魔女。

国からの紹介又は運命に導かれた者しか占わないと有名であるにもかかわらず、こうして危険な森にやってくるものは少なくない。

星読みは慈善事業ではないし、無闇に星読みの力を使いすぎて多くの人の運命を悪戯に変える事は避けたいのだ。

「いかにも私は星読みの魔女よ。でも紹介で来たのでもない貴方に占いはしないわ。森で倒れていた貴方を助けて、貴重なポーションで足まで治療したのよ。それだけでも十分すぎると思うけど」

男性はハッとして、ベッドからよろよろと降りて、頭を下げた。

「礼を欠いてすまなかった。助けていただき感謝する。ポーションも新しいものを買ってきっと返すと誓う。私は王立騎士団所属のジェイド•リルグランド。紹介が必要とは知らず、直接ここまできてしまった。しかし時間がないのです。妹の容体が急に悪化して、医者も原因が分からず、もう星読みの魔女様に占っていただくしか」

ジェイドと名乗った男性は、頭を下げながら矢継ぎ早に話し出した。

「ちょっと待って。とりあえず頭を上げてちょうだい。まず、謝罪は受け入れます。それから何か理由があるのはわかったわ。とりあえず話だけは聞いてあげるから落ち着きなさい」

「ありがとうございます!!」

ジェイドは頭を上げて微笑んだ。

微笑むと血の気がなかった顔に血色が戻り、ジェイドの顔の良さがよくわかる。

「まだ占うとは言ってないわ。まずはリビングに行きましょう。お茶を飲みながら話を聞くわ」


読んでいただきましてありがとうございました。

少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。

投稿ペースは以前より少しゆっくりになるかもしれませんが、よろしくお願いします。

感想、ブックマーク、評価もよろしくお願いします。


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