王太子②
今話も読みにきてくださってありがとうございます。
相変わらず誤字脱字が多くてすいません、報告お待ちしております。
一迅社様より「地味な私が転生したら王太子妃の取り柄のない妹だったので、自立の為に頑張ります」の書籍化が決まりました。発行をお楽しみに。
「ああ、彼は第一騎士団のジェイドだ。いつもの護衛は急に体調を崩してね。今日だけ彼に来てもらってるんだ。伯爵家の嫡男だが腕はたつんだ」
ロベルト兄様が彼を見てそう言った時、猫のレオンがカウンターの上に乗って言った。
「おい、リリィ。あいつこの前森の館に占いに来たやつじゃないか?」
「やっぱりレオンもそう思う? なんかイメージが全然違うからどうかなと思ったんだけど」
「あんな整った顔そうそういないぜ。間違いない」
レオンがそういうと、ロベルト兄様が私達が彼を知っていることに驚いた。
「ジェイドが森の館に行ったのかい? それで、リリィが占ってあげたってことかい?」
ロベルト兄様や王族の皆さんはレオンのこともその正体が獅子であることも知っている。
レオンが何故話せるかは、私もよく知らない。亡くなったおばあちゃんもそのうち分かると教えてくれなかったし、レオンも教えてくれないのだ。
幼い頃は気になって何度も聞いていたが、レオンはレオンだ。そのうち教えてくれるだろう。
「まあ、成り行きでね」
「それはすごい幸運なやつだね。そんな奴が何故あんな怖い顔をして窓からこっちを伺ってるのだろうな」
ロベルト兄様は首を傾げた。
「ロベルト兄様。彼に外で待つように言った時、なんて言ったの?」
何か理由があるんだろうか。
「ああ。私は大切な人と会う用事があるから店の外で待つように。それとここに来た事は国王や王妃、マリアベルには内緒だと」
いや、原因それでしょ。
「それは明らかに怪しいと思われるわね。どうしてマリアベルお姉様にも内緒なの?」
根っから生真面目な王太子はリリィに向き合って答えた。
「みんなリリィに会いたがっているのに、俺だけこっそり会ったと知れたら皆が羨ましがるだろう? 特にマリアベルはつわりが酷くてここまで来たくても来れないからな」
その前に王族が簡単にお忍びでくるのもどうかと思うけど。
「王族がお忍びで、街の雑貨屋で大切な人と会うってどうなんだろうな」
あ、レオンが言っちゃった。
「リリィは俺にとっても、父上や母上にとっても大切な家族だ」
「ありがとう、ロベルト兄様。でも誤解を生みそうな発言は控えてね」
私の正体を言うわけにもいかないし、しょうがないのだろうがジェイドの視線が突き刺さる。
「それと、今日来たのは依頼もあるんだ。この金で何かマリアベルが食べられそうなものを見繕って城まで持ってきてくれないか?」
ロベルト兄様が革袋から数枚の金貨を出すと私の手に握らせた。それを窓から見ていたジェイドが明らかにハッとした顔をした。
「あ〜〜。これリリィが金もらってると思われたな」
レオンがそう言うと、ロベルト兄様がレオンに言った。
「何言ってるんだい?このお金は依頼料だよ」
「うん、俺は知ってるけど……」
複雑な顔をした猫のレオンに私はわかってると言いたげに頷いた。
「とにかく。マリアベルお姉様にも食べられそうな滋養のあるものを何か持って行くわ。明後日にはお見舞いも兼ねて王城に伺います」
ロベルト兄様に向き直ってそう言うと、私は兄様に外に出るよう促した。
「お茶でも一緒にと思ったんだが、忙しいのかい?」
名残惜しそうにする兄様には申し訳ないが、これ以上ジェイドの視線に耐えられない。
「またすぐに王城に行くから。その時兄様がお暇ならご一緒にお茶させていただきます。お姉様によろしく」
そう言って店の外に出てもらうと、ロベルト兄様は少し悲しげにジェイドを連れて馬車が停まっているであろう大通りの方に歩いて行った。
うちの店の前は狭すぎて馬車が停めておけないのだ。
「あいつ、完全にリリィを愛人だと思ったんじゃないか?」
あいつとは聞くまでもないジェイドのことだ。
「あ〜〜。ロベルト兄様にも困ったものね。その辺の俗世のことに疎いんだから。まあ、マリアベル姉様には私から事情を説明して誤解しないように言っておくわ」
「いっそ本当にロベルトの愛人になるって手もあるぞ。それともシリウスの嫁とかな」
「シリウス兄様の? やめてよ。シリウス兄様の事は好きだけど嫁なんてごめんだわ。もちろんロベルト兄様の愛人も」
シリウス兄様とはロベルト兄様の弟、この国の第二王子だ。
「そうか? マーカスとオフィーリアが喜びそうだがな」
いくら国王と王妃に認められようが王族はごめんだ。
「その話はもう終わり。さて、何ならマリアベルお姉様が食べられそうか調べなきゃ」
そしてジェイドが変な誤解をしないでくれればいいのだが。
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