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13話 死亡フラグとの戦いが始まった

 周囲は頷きもしない。明らかに歓迎されてなかった。


「……今まで通り手紙のやりとりではいけませんか?」

「んー、帝都で人気のロマンス小説みたいでときめくし、それもありなんだけど」


 遠距離恋愛で手紙のやりとりをして、最後には対面して結ばれる古典的ストーリーらしい。今この場では割とどうでもいい情報ね。


「手紙からでは貴方の考えが全て読み取れません。ここで議論をかわすことで知れる事もあると踏んでいます」


 マーロン兄が口を開いた。最後の最後引導を渡してきたこの男の視線が明らかに私を疑っている。いつでも収容所インできるぞって? やめて近づかないで。


「……無礼を承知で申し上げます」

「うん、どうぞ」

「貴殿方と関わりたくありません」


 収容所がすぐそこならいっそ本音で語ってやるわな気持ちになった。もうどうとでもなれ。


「ブッハ! ほらあ、コールが怖い顔して言うから」

「は?」


 大笑いするイグニスに対しディすられて切れ気味のマーロン兄、他はだんまりだ。


「フィクタちゃんのこと罰しないよ?」

「法を侵せば誰しも罰せられます」

「フィクタちゃんは自分が法を侵すと思ってるの?」

「場合によっては、そうなってしまう可能性があるでしょう?」

「責任をとりたくないということですか?」


 まあそうだけど、子供相手にそういう言い方はやめてよ。マーロン兄はやっぱり苦手だ。収容所インが目の前すぎて嫌。


「そうです。私はできる限り長く生きたいんです」


 フィクタは早世した。同じルートを歩む気はない。意地汚さを出そう。貴殿方貴族とは違うんですよ感を出せば関わり合いたくなくなるはずだ。


「フィクタちゃんの年で長生き?」

「考え方に年齢は関係ないでしょう」

「まあねえ」


 顎に手を添え考える素振りを見せるイグニスは相変わらずの笑顔で話す。


「なら僕のお手伝いって名目で参加しない?」

「手伝い?」

「助手的な」 


 妙にぐいぐいくるのね。そもそも手紙の主を探し当てて断罪すれば終わりじゃないの?

 まさか監視の為に近くに置くのは必須とか?


「……拒否権は」

「ないんだよねえ。正規の出席者としてか、助手かってだけで、参加は決定事項」


 じゃあ今までの会話意味ないよね? 収容所が逃がしてくれない。詰んでいる。


「フィクタちゃんや双子くんを守る為でもあるんだよ?」

「え?」


 こうして私が手紙の主だと知られた以上、他の人間が同じように調べて辿り着く可能性は十二分にある。その前にイグニス側が私を囲ってしまえばいい。守ると言いつつ国益の為が一番ってことか。

 確かに学院二つの改革に今後連合設立があるなら、当然表沙汰になるし大きく広まるだろう。これが完全に安定してからならいいけど、道半ばで私が反対派に殺されたら終わりだ。この面子がいれば設立までいくだろうけど、私は死にたくないから途中で間者の手に落ちるのは避けたい。


「双子くんに危ない橋を渡らせたくないんじゃないの?」


 何故知っている。けどすぐに気づいてマーロン弟を見ると、申し訳なさそうに眉を下げて微笑んだ。この男、私と双子の会話聞いていたわね。


「あの子達の身の安全の保証をしてもらえますか?」

「うん。加えて君の故郷の子供たちの入学から卒業まで纏めて面倒見るよ?」

「……入学するところまで面倒見てもらえれば結構です」

「うん、オッケー」


 チャンスは与えるけど、その後は知らない。だから学院に入るところまでで充分だ。


「フィクタちゃんも二年後入学でいいね?」

「え?」

「ん?」


 何故私の話に及ぶのか。


「私は、入学は、特に……」

「え?! いいの?!」

「はい。引き続き学院で働ければ教育は必要ありません」

「はああ?!」


 イグニスが変な声をあげた。城で文官として働くでもなし、わざわざ勉強する必要はない。なにより帝国からなるたけ離れたい身だ。


「なりません」


 と、ここで学院理事長が静かに声をあげた。まさかの懲戒免職宣言? 震える止めて。


「貴女がここまで優秀であるのなら、下働きなぞせず勉学に身を投じ才能を活かすべきです」

「理事長、そんな」

「貴女が手紙を出して何を本当にしたいのか、私は納得していません。ですが、才ある者に教育を与えないとは学院の理念に反します」


 やめてよ。無駄に関わって死亡フラグかもっと迫ってきたらどうしてくれんの。回収したくないんだって。


「貴女が望むなら卒業後、学院に残り研究や教師といった職を斡旋することも検討しましょう」

「え?」


 学院に残れるのはおいしい。下手に帝国と関わらずにすむし、山を越えた故郷にも近い方だ。本当は下働きを継続して推しカプのハッピーエンドを見たら帰るつもりだけど、中立の学院で研究職も捨てがたい。逃げやすいのも魅力的だし。


「どう? フィクタちゃん」

「……私に旨味がありすぎる気がします」

「うーん、嫌々で会議に出て学院にも通わなきゃいけないのと、将来の就職先の確保がされてるで丁度よくない?」


 嫌なこと二つやって一つ旨味がやってくる。双子や集落の生き残りも入学まで面倒を見てもらえるなら二つに対して二つ。とんとんってとこか。


「……分かりました」


 やったあとイグニスが喜ぶ。


「じゃあ二年後、入学だね」


 次の会議から助手として参加となった。外側から眺めてた主要キャラが推しカプのハッピーエンドの為の環境づくりをしてくれるってのがよかったけど、私自身がガッツリ食い込むことになってて笑える。今後は死亡フラグをどう回避していくかよく考えないといけない。


「フィクタちゃんはいつまでに国家連合作りたい?」

「え? ……えと、その……」


 鎌かけてる? 知らないふりをするべきか悩む。


「あー言い方変えようか? 戦争、いつまでに終わってほしい?」


 成程、少なくともイグニスは戦争がなくなってほしいと思う私の気持ちを信じてくれたのか。


「……九年、いえ八年以内が理想です」


 満足そうに笑う。

 小説外伝のヒーロー・ヴォックスがヒロイン・ユースティーツィアの国レースノワレを攻め滅ぼすところを止める。今、フィクタは八歳で、ヴォックスたちは七歳。あと九年あるけど、その前に終わらせるなら八年がベストだ。


「オッケー、それ目指していこうか」


 死亡フラグとの戦いが始まった。

まあ、あるあるな展開ですよね。一番いいくどき文句は「我々に関わると貴方の推しカプを間近で見られるますよ」だと思いますが(笑)。

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