84話 魔化と大樹
こういう設定を忘れずにいられるだろうか…メモしておかねば。
その後肩を嵌め終わったピリンさんから誠心誠意謝られたこともあって、フェルへの羽交い絞めの話は終わりとなった。暴走から目が覚めたのかピリンさんからの熱視線も大分収まったらしく、特に周囲を気にすることもなくフェルがグルグルと飛ぶようになった!
ただ若干邪魔くさい…いや元気なのはいいことなんだけどさ。
「それでウィーツよ。気になる事とはいったいなんだね」
「あの状況で伝えてきたってことはそれなりに大きな事なのよね~?」
「ありゃヒートアップしすぎたから止めたってのもあるけどね。森の奥にこの山の木が魔化した原因っぽい奴が見つかったのさ!」
「魔化?」
なんじゃそりゃ?言葉のままにすれば魔と化するってことだけど。
「簡単に言ってしまえば動植物がモンスターとなる現象のことですな」
「一応鉱石とかの無機物のゴーレムも魔化と言えばそうなのだけど、あれは地中に出来た魔石が原因だから厳密には違うのよね~」
「結構ややこしいんですね…」
本当にそのままの意味だったな…ちゃんと調べたら結構複雑な感じな気がするけど、そういうややこしい事は検証をする人たちに任せよう…何となくで分かればとりあえず良し!
「山の木が魔化した原因…大方の予想はつきますが」
「一先ず付いていきましょうよ!ウィーツさんとフェルちゃんがもう進んじゃってます!」
「んえ?」
前方を見るとウィーツさんの横にぴったりとフェルが飛びながら付いていってる。あそこまで懐いてたっけか?…あ、何か受け取って口に入れた。ウィーツさんが持ち歩いてるナッツとかに釣られたっぽいな。
『ん~♪…?……ふぅーふー』
こちらが見ていることに気が付いたのか、吹けない口笛を鳴らしながら顔を逸らしている…そうか
「新しく作る予定のおやつは要らんか」
『!?』
その後口の周りにナッツを付けたフェルに至近距離でクルクル回られるという事態が発生したが、それ以外は何も起こることはなくチャコールトレントたちの間を通り抜けながら進んでいった…ええい!おやつはちゃんと作ってやるから、その指を口に咥えながら俺の周りを高速回転をするのをやめんか!段々コマ送りみたいになってきたぞ!
「それにしてもこの山の木が全部トレントだって聞いた時はびっくりしたなー」
「ああ、貴女にはそこしか伝えてなかったわね~」
「全部教えてもらってなかったことには少し不満だけど、私だったら他の人にぽろっと話しちゃっただろうし納得はしてるよ。まぁ今までフェルちゃんの事で頭がいっぱいだったから、聞いたとしても抜けちゃってたかもだけど」
「あり得そうなのがまた怖い」
『う』
本当に目が爛々としてたからな…今はちゃんと理性の籠った眼をしてるけど、とんだ拍子にまた暴走しそうだ。ソースは彼女の家族達と俺の経験則だ!
「おや、前方の森が薄くなっているように見えるが…ウィーツや、ここだけ伐採した訳ではないのだな?」
「そんな無駄なことする訳ないだろうに…その森の木が生えてないとこが目的地だよ!」
実際ウィーツさんが戦斧を振り回せばこの森に空白地帯を作ることは簡単だもんな。にしても目的地がそこなのか。トレントはかなり密集してる場所もあれば点在してる場所もあったけど、生えてない所はなかったから確かに怪しいぞ…
少しして不自然に木々が生えていない場所に辿り着いた。いや、正確には1本生えてるんだけど…
「ほれ!いかにもって感じだろう!」
「如何にもというか」
「絶対これが原因でしょ!」
「大分大きく育った木ね~」
『おー!』
その1本がかなり横にも縦にも大きいのだ。こいつだけ他の木と比べて樹齢が長いのかな?それとも木の種類が違うのだろうか…流石にこんな状態じゃ判別が出来ん。
「この大きさ…モルト殿。魔力視を使ってみていただけませんか?」
「了解です!…えーっとちゃんと今までのトレントと同じみたいに核はありますね――でも結構大きいです」
それなりに離れてる距離なのに核がはっきりと確認できる。正確なサイズは分からないけど、バスケットボールぐらいかな?さっきまでのトレント達のは良いとこ野球とかソフトボールの球ぐらいの大きさだったし、元の木の大きさで変わったりするのかな?
「やはりですか。となると間違いなくハイトレント以上ですな」
『いー?』
「ハイトレント?トレントじゃないんですか?」
「この周囲の感じからして、トレントになった時に周囲の魔力と栄養を大量に吸ったんだろうね…それで今の今まで成長して進化したのさ!」
まさかの上位種ってやつか!え、早くないか?もしかしてこの村って大分後になってから発見される予定だったとか…割とあり得そうだ。
「ここまでの成長で止まってくれて良かったわ~」
「止まったというか強制的に止められた感じだけどねー」
「これ以上育ってたら、山どころじゃなく村の畑に影響があったかもしれないね!」
「なんと!」
「まぁその前に異変を感じて調査をしていたでしょうが」
あ、それもそうか。
「さて、この大物の枝も切ればもう燃焼枝は十分だろうさ!」
そう言いつつ鉈に手をかけながら大樹のトレントに向かっていくウィーツさん。にしてもマジででかい――ん?
『む?』
「おや、どうされましたかな?」
「いや…今枝が動いた気がして」
「そう?あそこまでバキバキな枝が動くとは思わないわよ?」
「ですよねぇ…」
でも一応観察を…あ、鑑定持ってんだからそれ使えばいいじゃん。チャコールトレントでも上位種なら動いたりするかもしれないんだから。
【炭化したトレントの樹皮:木から魔化したトレント種の樹皮が炭化した物】
「あれ?」
ちゃんとあのハイトレントらしきやつを対象にしたはずなのに、出てきたのは樹皮の情報だ。今までこんなことなかったよな?チャージラビットやゴブリン共の時に毛皮や布の事なんて出てこなかったし…
ビキ…
突如、何かが割れる音が聞こえた。
次回から私の苦手なことが始まります…ただその前の作戦会議みたいなものは好きなので、そこが長引くかもしれません。
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