70話 逸らし方と到着
宴会の描写はいつになるのか…
娘が迎えに行ったというのに店内に入った気配がしないことに疑問を持ったパネットさんがキッチンからやって着たお陰で、入り口の障害物は無事店の椅子に撤去された。
「ごめんなさいね。悪気はないのよ~」
「あ、はい。そこは分かってると思います」
蝉化したけども、震えてる感じもしないし何ならもう肩から顔を覗かせてるからな…ただ単に驚いただけっぽい。
「ほら、貴女からもちゃんと謝りなさい」
「ごめんなさい!」
『…む!』
「ありがとう!今後気を付けます…」
話の流れ的に許しはしたけど驚かすのはやめてくれって言ったんだろうか。それにしてはピリンさんの落ち込みようが凄い気がするけど。
「なんて言ったんだい?」
「今回はいいけど、近くで変な行動をしないで欲しいって伝えてきたわね~」
予想よりも辛辣な言葉で伝えてるな…そりゃちょっと動きが大げさだけど、変な行動扱いされるのは落ち込むわ。
「出来るだけ遠くで眺めることにするわ…」
「それはそれでストーカーっぽい気がするけどね」
「じゃあどうすれば!?」
「一旦違うことを考えて気を逸らしたら良いのでは?」
「悪くないかもですね。ほら、デザートの飾りつけを考えるのはどうです?」
「飾り付け…粉砂糖で妖精の精巧な姿の再現ってできるかしら」
「すでに逸らせてないわよ。迷惑になるのなら置いていくのも手かしら~?」
「ご勘弁を。真面目にやるのでそれだけはやめて」
心の底から出たような声で置いていくのを拒否したぞ。そんなにフェルと一緒に行きたいのか…
パンッパンッ
喝を入れるように頬を叩き、一度体に力を入れ椅子から立ち上げったピリン。目の焦点も合ってるし、おろおろして四つん這いになってた時よりは大分ましな雰囲気をしてる。
「ふぅ…ちょっと細工で詰まっちゃったのもあって暴走しちゃってたわ。もう大丈夫!」
「細工ですか?」
「ええ、このお店の接客にデザートの飾りつけはお手伝いでやってて私の本業はアクセサリー作りなの。お父さんの店に幾つか並んでるはずよ」
あー、そう言えばナイフとかを売ってる場所の近くにイヤリングとか売ってた気が…駄目だ買ったナイフの記憶しかない。
「インスピレーションを刺激されちゃったから一気に進めたんだけど、細かいところが難しくて…」
チラ
目を向ける先は勿論フェル。ただこれ以上変な事をして嫌われるわけにはいかないとあーだーこーだしてる…既に変な動きをしてるぞ。でもフェルはその動きを体を動かしながら眺め、気が付いたピリンさんはその動きを少し大きくしてフェルの動きや服装を逃さぬように見ているが――その後ろにはいい笑顔のパネットさん。手には注ぎ口が分厚くなっている大きなお玉が。
ゴーン!と鐘に近い音が鳴り、バーンベリー摘み出発の合図となった。
頭にデカいたんこぶを携えたピリンを引き連れ、山の麓までやってきた…が。
「いいわ!凄くいい!こんなにバーンベリーが生ってるなんて!」
ベリーの茂みを見つけたパネットさんのテンションがぶち上がってる。目に赤い実が見えた瞬間に縮地でもしたんじゃないかってぐらいの速度で俺たちを置いて実を観察し始めたレベルだ。
『おー』
「パネットさんにはあんま驚かないんだな」
自分が対象じゃないから?考えてみりゃ最初からプロングさんやパネットさんにはそこまで警戒してなかったな…二人ともフェルに強い興味があるわけじゃなさそうだし、なんなら自分の好みの物を作った人達だから嫌うわけがないか。
「かなり広範囲に生っていますな」
「あそこにあった茂みがここまで広がったのかい!突然変異ってのは凄いもんだね!」
「確かに、根元を見るとそんなに植わってるわけじゃないですよね」
改めて見るとキュアベリーに比べて幹自体が太くなってるし、樹冠の範囲もかなり広い…実のなり具合もまさに鈴生りだから枝が垂れ下がってるけど、枝が少し太いおかげでしなるだけで抑えられてる。
「厳冬の地域だと木自体がもっと低くて実が少ない代わりに、実自体が結構大きくなるのが生えてるそうよ?」
「そうなんですか!?」
ギュンッと他の変異種について話したピリンの方へ顔を向けるモルト。キュアベリーの変異は他にもあるのか!沼地とかにもあるのだろうか…いや、もしかしたらあの時の精霊の泉にも有るんじゃないか!?興奮したモルトに肩車状態のフェルはその動きに振り回されはしたが、遊びだと思ったのかキャーっと嬉しそうな顔をしている。
「え、ええ(振り回されてるのもかわいい…けど我慢!)。お母さんが言ってたから間違いない筈よ…ですよね?」
「確かに、昔1度だけ自生しているのを見たことがありますね」
「あの時の2人の争い様ったらなかったね!なんせ1本しか生えてなかったからさ!」
うん、俺もその場にいたら参戦するな!
いつかそんな争いも書きたい。
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