66話 天ぷらと糖分過多
前半がただの今日の料理。
約1時間ほどの現実逃避を終え、追加でヨモギたちを採取してきた耕司は早速夕食の準備を始めた。一番最初に油を熱しておく…意外と油の温度が上がるのはゆっくりだからな。
「まずはじいちゃんの家から届いたフキノトウにタラの芽!」
これがあったから昨日は天ぷらにしたかったんだ…今日はきちんと早めにログアウトもしたし楽しむぞ!
まずはタラの芽のはかま――簡単に言えば外側の茶色くて硬い皮のことだな――を取るために芽をもぎ取った根元を薄く切ってはかまを外す。これをしておかないと食べるときにゴリっとしたのが混ざるから注意…そんで少し水にさらしておく。
ふきのとうは外葉が汚れていたり土や砂が詰まっていることが多いんで、1枚2枚は取ってから蕾が見えるまで開いていく。開くのは別にしなくてもいいんだけど、見た目と蕾周辺までカラッと揚げたいのならこうした方がいい。こっちも同じく水にさらしておく。
「そして同じく届いた筍!…は、既にあく抜きを済ませておいてくれたのを送ってくれたから、一口大に切るだけと」
正直筍のあく抜きはめっちゃ手間が掛かるので有難い…まず米ぬかとでかい鍋が必要だからな。しかも大体2時間は煮込まなくちゃいけないし、一番簡単な生米を使ったやつでも30分は必要だ。そんなに時間は掛けられないってなったらスーパーで水煮を買うのが吉だ。
「んでヨモギと菜の花は水に入れて汚れを落としてっと」
この2つはお好みであく抜きをしてくれ。正直タラの芽やふきのとうだって湯がく人がいればそのまま揚げるって人もいるぐらいで、まさに人によるからな…今回は姉ちゃんや母さんも食べるので軽くあく抜きをしておくけどさ。
次は鶏むね肉を一口大のそぎ切りにして、塩麹と料理酒に生姜を加えて漬けこんでおく。むね肉2枚か3枚に対して生姜は小さじ1で他は大さじ1か2ぐらいが家流の味付けだ…本当はニンニクも入れたいが、確か姉ちゃんが明日は出かけるって事らしいんで配慮しておく。これを今の内に漬けておけばヨモギたちを揚げてる間に下味が付くって寸法よ。
「次はかき揚げの準備かね」
と言っても玉ねぎと人参を細切りにしておくだけなんだけど。ただ忘れちゃいけないのが人参の葉!人参ってセリの仲間だから葉の部分がかなり似てるし味もあんま変わらないんだよ。セリの味わいが嫌いじゃない人は地場産とかで葉付きのニンジンを探してみてくれ!
んで、その人参の葉も3等分ぐらいの長さに切ってかき揚げの種に加えておく…ついでに和える時に小エビも入れとくか。
「そして食材たちの水気をキッチンペーパーで取って、軽く天ぷら粉をまぶす」
これをしておくと衣が付きやすくなるし、揚げた後のべちゃつきが抑えられるぞ!
「さて、後は天ぷら粉を氷水に加えてサクッと混ぜれば準備は完了っと…油の温度も160度を超えてきたしそろそろ揚げ始めてもいいか」
何故薄力粉と卵で衣を手作りしないのかだって?何だかんだこっちの方が上手くいくからだ…凝ったのに味が旨くなかった時の焦燥感は凄まじいからな。
「よし、最初はヨモギから揚げてくぞ!」
「ごちそうさまでしたっと」
揚げている途中に姉ちゃんがMCOからログアウトしてきたんで、付け合わせのお浸しの準備をさせ――またお浸しと言われたけど、昨日はタンポポで今日はアブラナだから違うと言ったら何とも言えない顔をされた――母さんたちも最後のとり天を揚げている最中のナイスタイミングで帰宅し、全員で出来立てのサクサク天ぷらを頂くことが出来た。十分に水切りを出来ていなかったフキノトウに爆撃を食らった以外は完ぺきだったな!そして今日もうちの両親は非常に仲がイイデス…糖分補給が出来そうだよ。
「俺は今日も風呂最後でいいから」
「あらそう?」
「私も結構遅くなるかもー今良いところまで進んでるもの」
「ゲームの話かな?2人とも夜更かしは程々にしておくんだぞ」
「「はーい」」
「返事だけじゃなくてちゃんと守るのよ?」
「「はい!」」
言いつけは守らないと他にも何かを禁止されるからな…ハーブポットの世話の禁止が来たら痛すぎるんで素直に従おう。姉ちゃんも同じ気持ちな様で、互いに顔を合わせ頷いた。
「母さんの言う事は聞くんだよなぁ…俺に威厳はないのか?」
「そんな事無いわよ、あ・な・た♪私からすればあなたほど頼りになる人は居ないもの」
「そうかい?なら悪い気はしないな~」
「「ごゆっくりー」」
これ以上の糖分補給はいらんと、ほぼ同時に廊下に向かう種田姉弟であった。
「そうだ、あんたまだ村のことは終わってないの?」
「あー…一応終わったと言えば終わったけど、結構大事だったからまだ時間が掛かるかな」
「そう、私はまだまだ第1エリアに籠るつもりだから着いた時には教えなさいよね」
「りょーかい」
籠るのとさっきの良いところまで進んでるってのを考えると、あの趣味に合致する奴が居たんだな…
「ついでにその大事って何?第2エリアの落石と関係してたりする?」
「関係しかないけど、正直ややこしいぞ」
「ならいいや!今は気軽にやりたいし!」
その言葉とともに自室へ引っ込んでいく纏。
「……後でメールで情報爆撃してやろうか」
いや、これだと姉ちゃんと同じか…
今回は全編現実回でした。
次回、ベリー採取編…までいけるだろうか。
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