50話 芽生えと耐久
モルトが発見した、謎の物体の正体とは(冒頭ネタバレ)
クレーターがあるのを疑問に思い、謎の物体の上の方に燃焼枝を掲げてみると…崩れたのであろう岩がごろごろと詰まっているのが見えた。そういや火口跡に続く穴とかが崩落して探索が出来なかったとか言ってたよな。
「ってことはこれが焼山になった原因の落下物?にしては燃えたような跡とか衝撃や熱にやられて罅が入ったような感じもないな」
でかい音を鳴らしながら落ちたのなら、割れてたりするもんだと思ってたんだけど…そもそもこれなんだ?
【謎の種:魔力を吸収し、きっかけを与えると芽吹く】
「え、種なのかこれ!?」
驚きながらも種だと判明した物の周辺を確認してみると、確かに先端が尖って玉ねぎのような形をしている種っぽくは見える。3m以上あるからオブジェにしか見えんけど。
「魔力を吸収しってことは…やっぱり。こいつがファティリ村の魔力枯渇の元凶か」
魔力視で確認すると、今まで流れてきていた魔力はこの種に吸収されていくのが見えた…ただ集めていた魔力が膨大だったのか吸収が追い付いていないようだ。
「あの偽装壁が原因で、ほんの少ししか魔力の通る道がなくて吸収できてなかったのか?そんで少しでも吸収できる量を増やすために一気に量を増やしたって感じ…なら天井からも魔力が来てもいい筈なんだが」
分かれ道の時もさっきも上に引っ張られている魔力があったのに天井の瓦礫の方からは一切来てないんだよなぁ…あっちも詰まってるとか?崩落したんだしあり得るか。
「それにわざわざ道伝いでしかも空中で魔力を移動させなくてもいいんじゃ…いや、トレントに吸収されるのか」
あの道は根が原因で隆起しているところがなかったけど、地面の下には伸びている可能性はあるか。この種中々頭がいいな…いや生存のために本能でやったのかな。
魔力を吸収し終わるまでが暇なのでそんなことを考えながら待つモルト。え、十字鍬とかで種を割ったりしないのかって?こういう吸収や変身だったりのイベントは終わりまで待つのが基本だろ!
「お、吸収が終わったか…なんか魔力が一瞬種から漏れた気がするけど、げっぷじゃないよな?」
にしても魔力が余りすぎじゃないだろうか。周囲にいっぱいあるぞ…今も増えてるし、どうなるんだこれ。
「これが発芽したら散ってくれるかな?なら次はきっかけを与えないと…なにすりゃいいんだ」
それこそ衝撃を与えてみるとか?
吸収も終わったしと試しに十字鍬を持ってみると、グラッと種が動いたように見える。
「嫌がってる?だとしても他に方法がなさそうな…何か使えるものあったかな」
ライフポーション…垂らしてみたら種の表面で蒸発した…鉄板かよ、こりゃ水魔法も意味なさそうだな。そんじゃあ熱耐性薬は…なんか震えてるな、味覚があるのか?
「あと持ってるのはスコップや消臭剤だし。後は水魔法以外のスキルに何かないか」
今まで確認していなかったスキルの詳細を確認していく…採掘スキルには崩落の危険がわかるパークがあるのか…いやこれも便利だけどそうじゃなくて。
「次は農業スキル――これいけそうだな」
そこに書かれていたパークはグロウ。確か成長するとか大きくなるとかの意味だった筈…これで種を発芽させるとかできないか?
「まずはやってみるか…いくぞ種よ!グロウ!」
その掛け声とともに手を出すと、種に緑の粒子が舞い落ちた…少し種自体も光ったか?
シーン…
「う~ん、発動自体はしたけど種が地面に植わっていないし不発か?光った気がしたから行けるかと思ったけど、周囲の壁を掘って土を被せてもう一度やってみる」
ピシ
「うん?」
壁の方に向かおうとしていたが、後ろから何かが割れるような音がしたため振り返る。
ピシッ…ビシ
「おお!上手くいってたか!」
グロウが上手くかかっていたことに喜ぶモルト。これで成長してくれれば魔力も安定するんじゃなかろうか?
ビシ…パキ…
ゴゴゴゴゴゴ…
発芽するにしてはやけに種が震えているような…後何か液状の何かが漏れ出ている。
ボゥ!
「発火した!?」
温度が高すぎて自然発火する液体があるのは知ってるけど、初めて見たぞ…というかこれマズいのでは。
「あの液体が大量に種から出てきたら耐えられないよな…火耐性はないし……急いで離れよう!」
パキパキ…
ゴオォォ…
後ろから嫌な予感のする音が鳴り響いているし若干明るくなってきているが、転ばないよう気を付けながら駆け足で洞窟を離れようとする
パキン!ドガッ!
ドパン!
「間に合わなかったか!」
種が割れたような音と同時に天井にでも何かが打ち付けられる音がし、液体が溢れ出る音も聞こえた。
「どうする!?少しは離れられたけど、ここから走っても飲まれるだけ…」
生き延びる術はないかと周囲を見渡すと、先ほど硬貨等を仕舞った窪みがあった。
「ナイス!」
後ろから炎を纏った液が迫っているのが見え、急いで窪みに向かう!
「よし!アースウォール!」
更に土の壁を作り出し液体がこちらに来るのを防ぐ。
ドドドド!
「どうにかなったか…一時はどうなるかと…なんか暑いな」
熱耐性薬を飲んでるのに何故…もしかして1500度以上になってるのか!?
ゴオォォォ!
「やばい!ダメージが入ってきてるぞ!」
チャリ
「……こうなったら仕方がない」
壁の外からは燃え盛る音が聞こえ、気温もどんどん上昇していく…万事休すかというところで、なにやら主張するベルトの瓶。
「どうかまともな味であってくれ…南無三!」
そしてモルトはその主張した瓶の蓋を開け、中身を一気飲みした。
「………辛ぇー!!!!?」
”ギャアー!”
…濃縮熱耐性薬は味以前の問題だったらしい。
地面を転がることで辛味…いや痛みと戦い、ライフポーションで熱で受けたダメージを回復させた後は炎が収まるのをひたすら待ち続けた。
「まだ口の中が辛い…モンスターの攻撃は静電気みたいな痛みなのに、何故こんなにも辛味を再現したんだ!」
おかげで唐辛子とかを栽培するのが楽しみになったぞ!
ならば別にいいんじゃなかろうか。
「そろそろいいかな?”ドザッ”うわ、洞窟の上が真っ黒だ」
壁を消してみると、液体は無くなっており炎は収まったようだ。
「さて、あの種がどうなったか確認しに行くか。クエストにもなってるんだからきちんとしないとな…それにあの叫び声も気になる」
俺があの劇薬を飲んだ時に聞こえたけど、あれは何だったんだろうか。
また洞窟を奥に進み先程の空間に向かうが、何故か中央辺りから光が降り注いでいる。
「あ、天井が抜けてる」
どうやらあの時種の皮でもぶち当たったのか天井の岩たちが無くなっており、下に幾つか落ちてきている…上にあったのは吹っ飛んだんだろうか?あの種の中身威力有り過ぎじゃない?
ちょっと落下した場所が心配だ。
「そんで種の中身は…鱗?」
種の種皮が広がっている場所にあるのは数枚の鱗。え、植物の種じゃなかったのか!?
ヒュウゥ
「まじかぁ、フォルクさん達には悪いけどちょっと楽しみにしてたのに」
ウゥゥ…
「ただこれで魔力が吸収されたりは…してないな!ここにあったのも散ってるし問題は解決したかな」
ウウウ
「……何の音だ」
明るくなった空間で落胆したり魔力の確認をしていると、上の方から何か音が聞こえ――何かが迫っているのが見える。
「なんかデジャブ」
迫ってきているなら、あの時と同じくここから避ければいいだろと種皮の上を離れる。
ヒュウゥ…グン!
「なんとぉ!?」
ゴン!
「ごはっ!」
まさかの落下物が急カーブし、モルトの腹めがけて激突した!
シュウゥゥゥ…
「いってぇ…何で2回も痛みに耐えなくちゃいけないんだ…しかもHP2しか残ってないし」
ごっそり持っていかれた気がしたので確認すると一気に50も持っていかれている…減りすぎだろ。
「よりによって散歩のときと似た腹だし…んで、激突してきたのは――小人?」
顔を腹部に向けると…そこには白いシャツに紫の花模様が入った服を着た、オレンジ髪の小さな子供が居た。
「花模様とはまたセンスのいい……花?もしかしてこいつが種の中身か!?」
これにて1章終了!
ブックマークや評価を頂けると嬉しいです!




