160話 野菜たちの試食と辛味
結局駄々をこねるパネットさんに折れたのか、生胡椒などの少し珍しい調味料をテーブルに残すことになった…因みにフェルはあの一瞬で3種類の香辛料をポケットに忍ばせていたみたいだ。そんなところで恵まれた俊敏を発揮しなくてもいいから……唐辛子を回収した後にまだ持ってるかと聞いたら渋々出してきましたよ。
『んぅ!』
「ちゃんと返すつもりだったと言われてもな。ちゃんと使ってもいいか聞く前に隠すのは違うだろうに」
『……む』
よし、謝れてえらいぞ。
「パネットさんもすみません」
「いいのよ~。気になるものは試してみたい気持ちは理解できるもの~」
「お母さんはその試す量が多すぎるのよ…テーブルが埋まるレベルだったじゃない」
「あれでも抑えていた方よ?」
ええ?250mlサイズの瓶ばかりだったからかなりの種類が出ていたのに、あれでも抑えていた方だと!?……正直全部出して見て欲しいけど、我慢だ我慢――――確認していたら、日が暮れるどころか宴会が出来なくなる。
「さてさて、まずはそのまま頂きましょうか~」
「了解です!」
「こんなにシンプルに食べるのなんて久しぶりー」
『……』
フェルはもう目の前にあるトマトに意識が向いているな…カチャトーラの時もそうだけどトマト好きなのだろうか?確かにトマトってフェルが好きな唐辛子と同じナス科で、しかもかなり近い種だけど…ただそれだとナスの時も嬉しそうにするはずなんだが……まぁ嫌いじゃないのならいいか!トマトって苦手な人が案外多い野菜だしな!
「じゃあ、恵みに感謝を」
「感謝をー!」
「いただきます!」
『あむっ!』
あっこら!挨拶せずに食べ始めるんじゃない!
『ぷぅ~…あぅ』
「お腹いっぱいってか?確かに色々試食したもんなぁ」
パネットさんは軽くって言っていたけど色長ナスのオーブン焼きとかは軽くじゃないと思う。いやまぁ、めっちゃうまかったから文句を言うどころか感謝したいぐらいだけどさ…最初に食ったレインボートマトたちも味わいがそれぞれ違っていて旨かったし。
「赤トマトの濃厚さがすごかったなぁ」
「あれはそのまま食べると本当に強いのよねぇ。でも熟しているのはトマトにあるはずの青臭さとかが全くないから、お肉やお魚を使ったスープや掛けるソースに使うととても美味しいのよ~」
「良いですね!黄トマトをダイスカットしてソースに混ぜると酸味もプラスされて食欲が増しそうです!」
「そうよね!やっぱり料理の話ができる子がいるのっていいわ~」
「私も多少はできるじゃんー」
「あなたはどちらかと言うと、料理の中でも目で楽しませる方を重視してるじゃないの」
「そりゃ本業は細工師だもん!デザイン性を重視するのは当たり前!」
うーーん、どっちの意見も正しいな。正直俺は味が良ければいい派ではあるんだけど、折角自分が育てた野菜や果物達なんだから見た目も良くしてあげたいという気持ちはある。
そもそもパネットさんが作る料理も別にデザイン性がないわけじゃないしな。フランス料理とかにある数種類のソースが皿に添えられていたりとかは当たり前のようにされていたし……まぁそれを見たときにソースもあるのに更に味変の調味料を出そうとしていたのかと驚いたけどな!食に関しては本当にプロングさん並みのこだわりだなぁ。
「それにしても、フェルよ」
『む?』
「それは旨いのか?」
『ん!』
いや、笑顔で生の鮮血ネギを食べさせようとしてこないでくれ。その顔と返事からして気に入ったのは分かったからさ…
『むぅ~』
「……わかった、1口だけだぞ?」
『ん!あぃ』
流石に1口だけなら大丈夫だろう…フェルはシャクシャクと食べてるんだし。
シャクッ
「お、おお?炒めたのよりも更にシャキシャキ感が強い――かっら!?」
マジで辛いぞこれ!?鼻から抜ける香りは良いんだけど、その気化した成分たちが目に刺さってくるし口内も支配する!ついでに面白いぐらい爽やか!もう口内がしっちゃかめっちゃかだ!?
「うわぁ…あ~んは羨ましいけど凄い苦しみ様ね…」
「大丈夫かしら?駄目だったらシンクはそこの奥にあるわよ~」
『ぬぅ……』
「だ、大丈夫です…」
フェルが心配そうに見ているのもそうだけど、一度口に含んだものは毒とかじゃない限り吐き出したくない!それにこれぐらいの辛み、あの濃縮薬に比べたらどうだって……ん?
【一定の習熟により、痛覚耐性を習得しました】
なんか変なの覚えたんだけど!?
耐性取得…長ネギは表面を黒焦げにして中身をトロットロにしたい。特に冬の時期のは絶品。
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