159話 試食準備と調味料
連れ去られていく犠牲者をよそに、数ある包丁もといナイフの中からフルーツナイフっぽいのを取り出して、収穫してきた果物と野菜を適当な大きさにカットしていく…勿論事前に洗ってあるぞ?
「果物はそのままでもいいとして…野菜はどうしたもんか」
レインボートマトはそのままでいいとしても、鮮血ネギは俺が試食できん。フェルは喜んで食うだろうけど、モンスター撃退にも使われる辛味を味わいたくはない!
「う~ん、いったん置いといて生のままで食えるのをやって行けばいいか」
と言うわけでトマトを色ごとに分けて皿に並べてと…次は気になっていた真っ赤なオレンジだ!収穫した時も思ったけど本当に皮全体が真っ赤で少し目が痛くなるレベルだよ。
【ヘモグオレンジ・品質7:通常オレンジには含まれていない鉄分を豊富に含む珍しい変種。船乗りの間ではこれを積んでおけば病気に心配する必要はないと言われている。食用:果肉自体も真っ赤であり、酸味や渋みが強いためジュースなどに加工されることが殆ど。鮮度が悪くなると皮の色が赤茶色に変化しぽろぽろと剝がれる様になる】
「早速生食向きじゃねぇ!」
いや一応生食か……どちらにせよ絞ったりとかで加工が必要だけどさ。船乗りの間の病気って多分壊血病だから鉄分は関係ないと思うんだが?あ、でも鉄分がないと貧血とか色々出てくるから重宝されてんのか。
「ま、俺は船乗りとかじゃないから関係ないけど」
今重要なのはこれをどうするかだ。といっても鑑定結果の通りにジュースにするしかない――まてよ?
「メープルシロップがあるんだしこれを使って煮込むのもありか」
「良いわね~」
「ぬおっ!?パネットさん!?」
「はいパネットよ~」
いつの間に戻ってきていたんだ。あ、ピリンさんも戻ってきてるな……まぁでっかいたんこぶだこと。
「まだジンジンするー」
「変な所でふざけるからそうなるのよ。それよりも貴女も手伝いなさい~」
「ええー、フェルちゃんの相手をしたいんだけどー」
「一緒にやった方が早く試食の準備ができるし、運ぶ手間も減るからお話の時間も増えると思うわよ~?」
「喜んでお手伝いいたします!」
おお、流石親…まるで姉ちゃんを抑える母さんの如くだ。
「お待たせフェルちゃん!」
『んむ!』
本当に待ったぞとフォークとテーブルナイフを両手に持ちながら宣言している。思いっきりご飯が待ちきれない子供の動きだな…
「代わりと言っちゃなんだが色々と持ってきたぞ」
『あぅ』
「ええ、期待して頂戴な~」
先ずはとパネットさんが並べるのは小鉢に入った一口大のレインボートマトたち…しかもオリーブオイルや塩と和えてある。
『んぬ?』
「試食じゃなかったのかって?まぁそらそうなんだが…」
「もうお昼になるから、どうせならってことで素材を生かした料理を軽く作ったのよ~」
「それで時間が少しかかっちゃったけどね!」
私は早くフェルちゃんの相手をしたかったにと小声で言うんじゃないよ。そう思われていたご本人はまたパネットさんが作ったものが食べられるって目をキラキラとさせているんだから。勿論俺もだけどな!
「本当はバジルとかも加えたかったんだけど、それだと本来の味が楽しめなくなっちゃうから止めておいたのよ。でも途中で変えられるように色々調味料は持ってきたわ~」
そう言ってテーブルに並べられていく調味料たち…胡椒だけでも5種類以上あるんだけど多すぎないか。唐辛子とかもめっちゃあるしハーブはまだ取り出し終わらないらしい……テーブルが埋まるぞ。
「お母さんストップー!」
「何でよ~?」
「フェルちゃん固まってるから!今回は胡椒は4種の唐辛子は1つ、それでハーブはバジルやローズマリーとかの基本的なものだけでいいでしょ!」
「でも色々と試した方が思いもよらない組み合わせがあって良いものよ~?」
「何時間かけるつもりなの!?宴会料理も作らなきゃなんだから少しにしておきなさい!」
「もう、しょうがないわね~」
渋々ではあるが取り出しまくった調味料たちをマジックバッグ――どうやらエプロンのポケットがそうらしい――に仕舞っていくパネットさんとそれを手伝うピリンさん……流石子供だ、母さんが父さんへの愛を語らうのをストップさせる姉ちゃんの如しじゃないか。
「フェル」
『んぬ?』
「その驚いている顔を継続しながら仕舞った唐辛子は返そうな」
『……ん』
全く油断も隙もありゃしない……こっちはまだ首元がピリピリするんだぞ!
子供は知らぬ間にポケットに何かを仕舞っている…そして洗濯して大惨事になったりする。
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