157話 再びの食事処とオレンジ
夜とは打って変わってランプもついていないからか余計に静かに感じる店内だ……いやあの時もあの神父みたいな人しか居なかったし、なんなら帰るところだったから店内は静かだったか。俺らが店に入るまではだったけどな!
「ここよー」
『んあ!』
フェル達は窓側の景色の見える場所を選んで座ったようだ。キチンと子供用の椅子に座って…いないな?普通に横のソファ席で寛いでるぞ。
「フェルはそこでいいのか?」
『うむ!』
「お父さんが子供椅子だけだと不便だって追加のクッションを持ってきていたのよー」
「あ、成程」
それで顔がちゃんと見えるのか。近づいてみるとフェルが座っている側のソファにだけ同じ色のかさ増し用クッションが2個置かれていて、横に転落防止の板がつけられていた。これなら子供が小さな子供椅子で縛られているような感じもないし離れてないから愚図ることもないってことか。なんなら愚図ったとしてもクッションが高いからテーブルの隙間から落ちることも無い様に出来てるし…やっぱプロングさんこういうの上手いな。子持ちで色々作れる人ってこうなるのかね?
「プロングさんマメですよね」
『んむ』
「というより事前に面倒ごとをつぶしておきたいんだって。予測できるんだから先にやっておいて損はないって言ってたわよ?モルト君以外にも異転人が来る可能性があるから、それに備えて色々な体格の人用の物を作っておくんだってー」
「それで一番最初に作ったのがこれだったと」
「そういうこと。誰のために作ったのかなんてすぐに分かるのに、素直じゃないのよねー」
まぁ職人って感じだもんなプロングさん…子供好きな所があるってのもテンプレな感じがするぜ。ただ俺以外の異転人が来るのは大分先な気がするんで言い訳の部分はゆっくり作って下さいな。ここが隠し村ってだけあって見つけにくい構造になっているだろうし、第3エリアに他の人が来たとしても大分時間がかかるだろう。
『んんぅ!』
「そんなことよりも試食だって?この食いしん坊め」
『やぅ!』
お腹が減ったのだから仕方がないと。確かに空腹度はそれなりに減ってるな…手はそこにある個別のタオルで拭いたか問題なしか。清潔さを大事にしてるから絶対このタオルも変な付与されてるだろ……怖いから鑑定しないぞ!余計なネタはもう勘弁だ!
「じゃあこれからパネットさんに皿とか借りてくるから待ってるように」
『あぃ!』
「良いお返事ね!じゃあお皿とかはキッチンに入って奥の戸棚にあって、コップとかはその隣に置かれてるからー」
そう言うとフェルの横に座りだして小さなミカンのような柑橘を取り出して剝き始めた。それ確かウェンスマンダリンって名前のやつだったよな?いいよなマンダリンオレンジ…ちょっと小さいけど手で剥けて甘みが強くて香りもいい。漢方や七味とかに使われている陳皮ってのもこのマンダリンオレンジか温州ミカンの乾燥させた皮を利用してるってのを聞けばだいたいどんな香りか分かるんじゃなかろうか?
因みに温州ミカンって「温州」って付いてるから中国原産か何かかと思われがちだけど、日本の鹿児島県の長島で生まれた種だったりするぞ!温州って名前の理由はその場所がミカンの一大産地だからってのが理由っぽい――――ってそんなのを思い出してる場合じゃなくて。
「いやあなたも来るんですよ」
「……ダメ?」
「むしろ来ていただかないとパネットさんの対処が出来ないんで」
休憩中だって予想だけど、料理中だったら俺にはどうしようもないぞ。ゆすったりして邪魔したらお玉スマッシュが来るとか聞いたら行きたくなくなるって。
「でも私はフェルちゃんのお世話しないといけないし」
『やぅ!』
「お世話をされる必要はないそうです」
「そんな!逃げ場が防がれたわ!?」
いやあんたも行きたくないんかい。
あんなお玉の一撃は受けとうない!
ついでに子ミカンと呼ばれる紀州ミカンというものもあるのですが、こちらは逆に日本の地域名なのに原産は中国だったりと結構ややこしいです。まぁそのややこしい紀州が温州ミカンの親だったりとまたややこしいので、頭がこんがらがってしまいそうになります…
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