156話 辛さ耐性と静かな食事処
なんとかポケットにしまうのを防いで、特級危険物をマジックバッグに厳重に封印させた……なんかフェルを肩車してから首辺りが温かいというかひりついているなと思ったのはコイツが原因だったのかよ。
「まだ若干熱い感覚があるぞ」
『んむぅ?』
「フェルちゃんは何ともないみたいねー」
「何故だ…」
『あむ!』
鍛えてますからって、そんなどこぞの鬼みたいなことを言われましてもね……あ、もしかして熱耐性が原因か?あの濃縮薬も最初はあり得ないぐらい辛いというか痛かったのに、少し経ってからだとヒリヒリするぐらいに治まってたしあり得るぞ。ふつうあの辛さのカクテルが長続きしないなんて考えられん。
「強すぎる辛み成分って火傷みたいになるもんなぁ」
「火傷…そう言えばフェルちゃんは素手で持っていても問題無かったわね」
『ん!』
「なんとも無いっぽいです。お陰で肩車から降ろしてマジックバッグに仕舞わせることが出来ましたけど」
「手袋は唐辛子の場所に置いてきちゃったものねー」
「そもそもコイツがポケットに隠し持っていなければ解決した話ですけど」
『ふぅ~?』
お前は口笛を吹く以外の誤魔化し方しかバリエーションがないのかね?
『んあぅ!』
「美味しそうだったから仕方がないって…鑑定結果が劇物扱いだぞ?」
『んぅ』
それでも魅力的だと。う~~ん、熱耐性があって辛味が大丈夫だからそれ以外の味を楽しめるってことかね?テリブル君はフルーツみたいな甘みと香りがあるそうだし……俺には耐性がないから鼻をカプサイシン系の者たちが襲い掛かるだけだけどな!
「熱耐性があれば同じ気持ちを持てるかもしれんけど、流石に薬を使ってまでやることじゃないし…それに」
「それに?」
「今使ったらパネットさんの所で作る料理が激辛ばかりになりそうです」
耐性薬って割と長時間続く便利な物だけど、代わりに今のところ解除方法が無いんだよ。仮に今使ったとしたら間違いなく効果時間の間に料理の手伝いをすることになるし、その時に普通の辛みがわからないのは致命的だ……普通の胡椒とかはまだ分量で分かるけど、採取してきた香辛料の中には少量でめっちゃ辛いってのもあるからさ――――宴会が地獄絵図になること間違いなしだ。
『んむ!』
「俺はそれでも大歓迎だと?」
辛味ジャンキーは黙ってなさい!
他にも採取したものの話やカロッツさんから聞いた話をしながら、時々出会う村の人たちに挨拶を交わし歩くこと少し――ピリンさんからすると年上な筈のウィーツさんたちの息子であるベールさんはやんちゃな弟みたいだったそうだ…何となく想像できるな――いやに静かな食事処『豊妖の恵み』に到着した。
「なんか静かですね」
『やぅ』
「そりゃ夜までは営業していないし、更に言えばキッチンには外に音が漏れないように防音の付与が掛かってるからいつもこんな感じよ?」
「確かにあの時も調理の音とかは聞こえてきませんでしたね」
ついでに折檻されたらしきプロングさんの声も…
「でもここまで来て振動や窓から光が漏れてくることもないし……たぶん今は休憩中ね!」
「そうなんですね~」
それならちょうどいいタイミングだ。ちょっと耳を疑う言葉が聞こえてきた気がするけど気のせいってことにしておこう。そうしておいた方が精神衛生上良い気がするんだ。
『お?』
「店に入るから肩車はここでおしまいな」
『んぅ!…んん?』
「じゃあ席までは私が抱っこするわ!」
『……む』
「任せて頂戴!」
俺の手からサッと奪われたフェルではあるが、代わりに美味しいご飯をくださいって要望を投げかけて諦めるように片手でドアを開けたピリンさんによって運ばれていった。
「まぁ、嫌がってないし良いか?」
このまま変人耐性を蓄積していって欲しい所だ……そのうち出会う姉ちゃんも似たようなもんだからさ。好みからは離れてるから大丈夫だとは思うが、問題は姉ちゃんの格好とかなんだよなぁ――ほぼ間違いなくおかしなことになってると思うから。
「モルト君ー?」
『んあ~』
「おっと、未来のことを考えても仕方がないし入るとしますか」
今はこっちの変人たちが相手だ。
尚自分自身も変人である。
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