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穴があったから入れてみた  作者: ウツロ
二部 ヒモがあったから引いてみた
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58話 悪い顔

「で、けっきょく肉はどの程度売れたの?」


 豪華な晩餐も終わりに差しかかり、みながほろ酔い気分になったころにそう切りだした。

 売り上げが順調なのはいいが、問題は肉の在庫量だ。

 少なければまた狩にいかなきゃならないし、多ければ腐っちまう。


「売れたのはちょうど半頭ですね。余った分は部屋に運び込んであります」


 答えたのはベロニカだ。

 半頭?

 あれだけ売って、まだその程度なの?


 ということはだ。狩ったのが15頭、ギルドに売ったのが8頭で宿屋に提供したのが1頭だから……。

 残りは5頭半。このまま売ってもあと11日かかるわけか。

 やべー、肉腐っちゃうじゃん!


「在庫をさばき切れるか微妙なところだな……」


 あくまでこのまま売ればだが。

 とうぜんながら次の手も考えてある。


「ちょーしに乗って狩りすぎるからニャ!」


 だが、キャロにツッコまれてしまった。

 わかっとるわ、それぐらい! だからギルドに8頭売ったんだつーの。

 だいたい狩りすぎたって反省したのが昨日の話だ。

 そんなところはすでに通り過ぎた後なのだよ。


「そうだニャ! ギルドに売ってしまえばいいニャ!」


 ところが、またしても一周遅れでキャロが言う。

 ひらめいた! みたいな顔すんな。

 それひらめいてないから。


「キャロちゃん。もう解体してしまったから、ギルドに売れないわよ」


 ベロニカのツッコミが入る。

 そうなのだ。ギルドが引き取ってくれるのはある程度原型をとどめたもの。

 勝手に切り刻んだものなどギルドは買い取ってくれないのだ。

 そりゃまあ、どこの部位を必要とするかなんて人それぞれだしな。

 たとえば、俺たちはアキレス腱なんざ捨てちまうけど、弓の原料になるかもしんねえし。


 バラしても確実に買い取ってくれるのは、カルコタウルスなら青銅といった貴重な素材か、討伐証明のツノぐらいなもんか。


「疲れただけニャー」


 キャロはテーブルに突っ伏して、ショボくれてしまう。

 おおげさだな。

 まあ、気持ちはわからんでもない。

 わざわざ手間暇(てまひま)かけてダメにしたとか、徒労感はハンパないしな。


「大丈夫だ。肉をムダにするつもりなんてない」


 売りますよ当然ね。

 肉の一切れだってムダにはしないさ。


「どうするかニャ?」

「二号店をだす」


 二号店つっても空箱積んで、上で肉焼くだけだけど。


 一か所でやっていたのは人手が足りなかったからだ。

 もう解体は終わったんだ。二手に分けても、じゅうぶんやっていける。

 これでスピードは倍だ。


「なるほどニャ! でも、屋台はまだないニャ?」

「問題ない。荷台に肉と木箱と七輪積んでいけばいいんだ。サッと準備してサッと片付けられる。幸い荷台はすでにあるしな」


 問題があるとしたら場所か。

 どこで店をだすかによって売り上げが大きく変わってくるだろう。


「フラット! 場所の選定はどうなっている?」


 たしかまだ選定中だったように思うが、それでも目ぼしぐらいはつけていると思いたい。

 そこまでグズグズしているようなやつじゃないはずだ。


「それがですね。ちょっいと難しいようなんです……」


 ところが、フラットの歯切れは悪い。

 ん? どした?

 その口ぶりだと、ただ見つかっていないというより、なにか問題があるみたいだな。


「難しい? なにがだ?」


 すかさず問いただす。


「この街では商会同士の縄張りみたいなものがあるらしいんです。といっても大手の商会だけですが」

「ほう?」


 縄張りね。なるほど、だいたい読めてきた。


「縄張り内で商売するとジャマが入るんです。それで過去にいくつも小さな商店がつぶされたとか」


 利権だな。それも大手同士が結託して新規をつぶす形か。

 今日売ったのは宿の敷地内だったから大商店も手出ししてこなかったけど、路上で販売したら飛んでくるってあたりか。


「大通りは全部どこかの大商店の縄張りに入ってます。入っていないところは、人通りがほとんどありやせん」


 だから難しいか。

 そりゃまあ、人通りのないところで店出しても、そうそう売れんからな。

 フラットが場所選びに苦労するわけだ。


「ふ~ん。じゃあ逆にモメたかったら、大通りで商売すればいいワケだな」


 モメてこそ裏稼業ってもんだ。

 とくに小さいうちは、なおさら。


「え!?」


 フラットたちが驚いた顔で俺を見る。

 なんだよ、まさか俺が引くとでも思ってたか?


 そりゃあ弱小のうちは、大商店に目をつけられるのは避けたいよな。

 だが、俺には関係ないね。なんたってフックがある。

 多少の戦力差なんざひっくり返せる。


 それにここは街だ。

 大ぴらに殺し合いなんぞしたら衛兵だって黙っちゃいない。

 相手を殺さずに無効化できるフックの方が断然有利に決まっている。


「あ、そうだフラット。お前をコケにした店ってのはどこだ?」


 どうせ狙うならそこを狙ってやろうじゃないか。

 クカカカ、面白くなってきやがった。


「……オルタレス商会ってとこです」


 戸惑いながらもフラットは答えた。


「デカイとこか?」

「はい」


 大商店だな。

 よ~し、決まり!


「ご主人様、悪い顔してるニャ……」

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