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アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち【R-15】  作者: StarFox
第五章 霊樹の森

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第八十二話 地下都市、ジークの采配

 明るさにアレクたちの目が慣れてくると、広大な空間の様子がアレクたちに見えてくる。


 アレクたちが通ってきた地下道は、広大な空間の中腹の外壁に続いており、広大な空間を見回すことができた。


 ドーム型の天井には、沢山の尖った大きな六角柱の水晶が生え出ているように突き出し、魔法の青白い光を放って、広大な地下空間を照らし出していた。


 アレクたちが見下ろす空間の床には、薄汚れた木片や大きな植物の葉で作ったであろうバラックのような雑多な建物が、ところ狭しとひしめきあい、雑居街のようになっていた。


 街の中心に一際大きな神殿のような建物が見えた。


 アレクは、雑居街のような街を眺めながら呟く。


鼠人(スケーブン)の地下都市……」


 ルイーゼがアレクに答える。


「ここが奴らの本拠地ってことね」


 エルザは眉間にしわを寄せながら口を開く。


「何か、……汚い感じのところね」


 アルが軽口を叩く。


「やつら、まだ、こっちが侵入したことに気が付いてないな? ……やつらのボロ屋に火でも着けてやるか」


 ナディアはアルの軽口に同意するように答える。


「名案ね! 火蜥蜴(サラマンダー)なんてどうかしら?」


 トゥルムもアルとナディアに追従するように口を開く。


「そいつは良い! 奇襲を仕掛けよう!」


 アレクは、奇襲する気満々の三人に告げる。


「まず、街はどうなっているか、住人はいるのか、探ってみよう。奇襲するのは、それからでも大丈夫だろう」


 ドミトリーはアレクの言葉に賛同する。


「うむ。隊長の言うとおりだ。もし、やつらに捕まった人がいたら、一緒に死なせてしまう」


 エルザはドミトリーに尋ねる。


「アイツら、人間は食べちゃうんじゃない?」


 ドミトリーは、したり顔でエルザに答える。


「……いや。鼠は、餌を蓄えておく習性がある。鼠人(スケーブン)も鼠と同じ習性とは、断言出来ないが……」


 ドミトリーの言葉にナディアは感心する。


「なるほどね。火をつけるのは、人が捕まっているかどうか、調べてからでも遅くないわ」


 アレクは結論を出す。


「潜伏に長けているルイーゼとオレで街を調べてくる。アルたちは、いつでも脱出できるように、この地下道の出入り口を確保してくれ」


 アルは自信満々に答える。


「判った。ここは任せとけ!」


 ナタリーはアルに寄り添いながら二人に告げる。


「アレク、ルイーゼ。二人とも気を付けてね」


 小隊の仲間たちに見送られながら、アレクとルイーゼは、鼠人(スケーブン)の地下都市の探索に向かった。




--飛行空母 ジークの私室。


 フェリシアの監視役の女性士官がジークの私室を訪れ、ソフィアとフェリシアの(いさか)いの件を報告する。


 ジークは、椅子に座ったまま報告を聞いていたが、自分の右手を額に当てて机に右肘を着くと、左手を女性士官にかざして答える。


「……判った。ソフィアには、私から言って聞かせる。……ソフィアを呼べ」


「では、失礼致します」


 報告を終えた女性士官は、ジークに一礼するとジークの私室を後にした。




 程なくソフィアがジークの私室にやって来る。


 部屋に入ったソフィアは、ジークに一礼して口を開く。


「ジーク様、お呼びでしょうか?」


 ジークが口を開く。


「ソフィア。フェリシアとの一件を聞いたぞ」


 ソフィアは、ジークから叱られると思い、俯く。


 ジークは優しくソフィアに告げる。


「ソフィア、済まなかった。今回の件は、私の配慮が足りなかった。許してくれ」


 謝罪するジークにソフィアは、驚いて顔を上げる。


「ジーク様……」


 ジークが続ける。


「お前とアストリッドにも、同じ帝室の紋章のブローチを与える。ソフィア、これへ」


「はい」


 ソフィアはジークに一歩、近づく。


「もっと近くだ」


「はい」


 ソフィアは、ジークの傍らまで来る。


 ジークは傍らまで来たソフィアを自分の膝の上に抱き上げて座らせる。


「ここだ」


 ソフィアは、ジーク顔を見詰める。


「……ジーク様」


 ジークは、机の引き出しを開けると、中から化粧箱を取り出して開け、中の帝室の紋章のブローチを取り出すと、膝の上に座るソフィアの制服の襟に付けてやる。


「ほら。似合っているぞ」


「ありがとうございます。ジーク様」


 ジークを見詰めるソフィアの目が感激で潤む。


 ジークが優しくソフィアを諭す。


「お前は私の正妃だ。他の妃に軽々しく嫉妬など、するものではない」


 ソフィアはジークの言葉を素直に聞き入れる。


「はい」


「あとひとつ、ソフィアが望むものを与える。……ただし、私に与えられるものだ」


「私の欲しいものは、ジーク様も既にご存知のことと思います」


 そう言うソフィアの頬が赤くなる。


「何だ? 言ってみろ」


 ソフィアは、上目遣いでジークに甘えるように告げる。


「……ジーク様の吾子を授かりたく」


 ジークは微笑みながらソフィアに答える。


「判った。努力しよう」


 そう言うとジークは膝の上に抱くソフィアにキスする。


 これ以降、ソフィアがフェリシアに嫉妬して揉め事を起こすことは無くなった。



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