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アスカニア大陸戦記 英雄の息子たち【R-15】  作者: StarFox
第三章 辺境派遣軍

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第四十七話 東部方面軍到着、捧げる純潔

--翌日。


 飛行空母の艦橋にいるジークの元に伝令の兵がやってくる。


「殿下! 帝国東部方面軍の大型輸送飛空艇の第一陣が州都に到着しました! 後続の大型輸送飛空艇も順次、州都に到着しております!」


「朗報だな」


 伝令からの報告にジークは笑顔を見せる。


(これで我が軍の勝利は確実だ)


 帝国東部方面軍二十五万の大軍が大型輸送飛空艇によって、続々と州都キャスパーシティに到着、集結していた。


 到着した大型輸送飛空艇は、州都キャスパーシティの周辺に着陸して帝国機甲兵団と東部方面軍の諸兵科の大部隊を下船させていた。






 アレクはジカイラを訪れ、カルラ達の『身の振り方』を相談する。


 カルラは、全裸になってまで姉妹で飛行空母に留まることを懇願していた。


 ジカイラは、アレクからの相談を快諾する。


 ジカイラが口を開く。


「下手げに、あの姉妹を地上に降ろすより、飛行空母のほうが安全だろう。地上には、まだ鼠人(スケーブン)がいるからな。……ただし、いつまでも乗せておく訳にはいかない。この艦は軍艦だ。帝都に帰還したら、あの姉妹はナナイのところの孤児院に預ける。衣食住、全部面倒見てくれるうえ、学校にも行ける。それで良いだろ?」


 アレクは、ジカイラに礼を言う。


「はい! ありがとうございます」


 アスカニア大陸は、『ユートピア』ではなく『ディストピア』である。


 この世界で人間は万物の霊長ではなく、様々な脅威に晒されており、より強力な種族に捕食されることもあった。


 また、その人間の社会の中においても、人狩りと奴隷商人による奴隷貿易や、麻薬商人による麻薬貿易が行われ、貧富の格差は激しく、亜人種たちは差別され、一部の強者が富と繁栄の恩恵を享受する一方で、弱者が強いられている貧困と犯罪、疫病、飢餓、戦乱などによる『死』は、直ぐ隣りに存在していた。

 

 バレンシュテット帝国は、皇帝ラインハルトによる『奴隷貿易と麻薬貿易の禁止』『帝国種族融和政策』『産業奨励政策』と『大陸横断鉄道、大陸縦断鉄道の建設』により、労働人口と消費人口は増加、資本の再分配が進み、帝国の人々は豊かに暮らせるようになった。


 しかし、他の国では未だ『暗黒の中世の時代』が続いており、人間は『簡単に生まれ、簡単に死ぬ』世界であった。


 




--夜。


 湯浴みを済ませたソフィアは自分の部屋に戻ると、三面鏡で自分の容姿を入念に確認していた。


 今夜、ソフィアは初めて想い人であるジークの寝室を訪れるため、その準備に余念が無かった。


 ソフィアは、どうしても『ジークがどのように自分を抱くのか』を想像してしまい、気分は高揚して上気したように頬は赤くなってしまう。


(もう、こんなに……)


 ソフィアは、下着は何も着けずにバスローブだけを羽織りジークの寝室を訪れると、緊張した面持ちで寝室の扉をノックして伺いを立てる。


「ジーク様。ソフィアです」


 中からジークの声がする。


「入れ」


「失礼します」


 ソフィアは部屋の扉を開け、ジークの寝室に入る。


 ジークはバスローブ姿でベッドに横たわって枕元のランタンを点け読書をしていたが、読んでいた本を閉じて枕元に置くと、寝室を訪れてきたソフィアに言葉を掛ける。


「よく来たな。ソフィア」

 

「はい」


 ソフィアは、ベッドに横たわるジークの傍らに来てベッドに腰掛ける。


 ジークは、頬を紅潮させて緊張した面持ちのソフィアに優しく微笑み掛ける。


「緊張しているようだな。楽にすると良い」


「はい」


 微笑むジークを見て安心したソフィアは、ジークに甘えるようにジークの左の二の腕に自分の頭を乗せ、ジークの方を向いて添い寝する。


 そして、ソフィアは身体をジークの身体に押し付けるように密着させると、うっとりとジークの顔を眺めながら呟く。


「ずっと、こうしたかった……。ジーク様」


「ソフィア……」


 ソフィアは、ジークの首に両腕を回して目を閉じるとキスする。


「んんっ……」


 想い人と交わる悦びにソフィアは夢中になる。


 ソフィアは羽織っているバスローブを脱ぐと、ジークの上に跨がりバスローブを脱がせる。


 ジークはソフィアを抱いた。






 抱き終えたジークはソフィアにキスする。


「ソフィア。痛くなかったか?」


 自分の事を案じてくれるジークに、ソフィアは微笑みながら答える。


「はい。……とても気持ち良かったです」


「そうか」


 ジークは、起き上がってベッドの縁に腰掛けると、傍らでぐったりと横たわるソフィアの頭を撫でる。


 ソフィアは腰が抜けて立ち上がれなかったが、毛布を手繰りよせようと足元に手を伸ばす。


 すると、ソフィアの目に親指大の破瓜の血の跡が数点と、まるで失禁したような様相のシーツが目に映る。


「も、申し訳ありません! ジーク様の寝所に、とんだ粗相を! 私……、私……」


 そこまで言うと、あまりの恥ずかしさにソフィアは涙目で赤面して両手で顔を覆い隠す。


 ジークは微笑みながらソフィアの頭を撫でると、穏やかに話し掛ける。


「気にするな。『女は誰でもそうなる』と父上も仰有っておられた」


 ソフィアは、顔を隠す両手の指の隙間から、ジークの様子を伺うように目を覗かせると、ジークに尋ねる。


「陛下が!? で、では、皇妃様も?」


 ジークが苦笑いしながら答える。


「恐らく、そうだろう」


「アストリッドもですか?」


「彼女の事は知らない」


 ソフィアはジークの答えに驚く。


「え!?」


 ソフィアは、アストリッドはソフィアより先にジークの寝室に出入りを許されていたため、とっくにジークと肉体関係を持っていると思っていた。だからこそ、ソフィアは焦燥感を募らせていた。


 しかし、ジークは、まだアストリッドを抱いていなかった。


 ジークは、指先をソフィアの顎に当て、自分の目線とソフィアの目線が合うように、ソフィアの顔を起こすと、静かに告げる。


「私の初めての相手は、お前だ。ソフィア。……愛してる」


 ジークの言葉にソフィアは驚く。


「……ジーク様。私もです」


 ソフィアは、自分が純潔を捧げた想い人が初めての相手に自分を選び、その童貞を自分にくれた事に胸が一杯になる。


 ジークは、潤んだ目で自分を見上げて見詰めるソフィアの隣に再び横たわると、傍らに抱き寄せてキスする。


 二人は、そのまま深い眠りについた。



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