表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/24

召還組2の男ー1

 * * *


 日本 東京


 子供に似合わぬ黒縁の大きな眼鏡をかけた少年が自室で正座をして目を閉じたまま、(まぶた)の裏で一点を見つめている。

 なぜかは分からないが頭の中には幼い頃に先生が言っていた言葉が甦る。


「点から線。線から円。円は螺旋を通って点に還る。

これがミクロからマクロまで宇宙に共通する真理なんだ」


 (本当にあの人は意味が分からない)

 そう考えながらも少年の口元には笑みがこぼれている。

しかし、首を小さく横に振り、その考えを思考の隅に追いやり別の事を考える。


 (生きているなら必ず今日の対局を見てくれるはずだ)

 少年は今度は口元を引き締め、テーブルの上を瞼の裏から凝視する。

 

 目の前のテーブルの上には一枚の塩ビ製のシートが置かれていた。


 縦36センチ、横33センチ。表面には9×9の升目がシートいっぱいに太い線で書かれている。しかしその線は、半分近くが掠れており、相当の年月使用されているのだろう。


 そして、その上にはプラスチック製の40枚の五角形の表面に漢字が書かれた薄い物体が綺麗に並べられているが、こちらもシートと同じくすり減っており、新品を知るものなら半分の厚みしかないのに驚くかもしれない。


 日本人ならばルールは知らなくても一度は見たことがあるだろう、将棋の盤と駒である。


 この少年の名前は「K」

 史上7人目の中学生プロ棋士である。


 プロ棋士と言っても今年新四段になったばかりの新人棋士であり、今日がプロ棋士として初めての対局がある記念すべき日なのである。つまり実績はまだ0なのだ。


 そのため盤の前に座り、集中力を研ぎ澄ませているのだろうが、プロ棋士ともあろう者が、塩ビの盤にプラスチックの駒を使用しているのに将棋ファンなら驚きを通り越して、怒る人もいるだろう。


 しかしこの盤駒こそKと苦楽を共にした、いや、大袈裟な言い方をすると、Kにとっては命の次に大事にしている宝物なのである。


 これには訳がある。


 Kの父はガチガチの学歴至上主義者であり、Kが物心ついた頃からひたすら勉強を強要するような男だった。

 自身もT大卒であり、一流商社に勤めている事から、低学歴の人間を人間として劣っていると普段から公言していた。

 母も同じくT大卒であり、父と全く同じ考えであった。


 同然息子にも自分と同じ道を歩ませることこそ正しいという考えに凝り固まっており、幼いAに対しても妥協をしなかったのだ。


 友達と遊ぶなどもってのほか(幼稚園にも通ってないのでそんなのはいなかったが)、おもちゃやゲームの類いも一切買い与えず、家から出るのは週に三回のスイミング教室のみで、それ以外の時間は毎日家庭教師が付きっきりで英才教育をほどこされた。


 家庭教師は複数いたが、どの先生もKに知識を詰め込む事しか興味がなかった。


 幼い子供にとってやりたくもない勉強など地獄の苦しみ以外の何物でもなかった。

 Kの心は4才にして冷たく固くなっていった。


 しかし5才の時にKの心を解きほぐす事件が起きた。

 父の友人の息子という新しく現役T大生の家庭教師が来たのだ。


 この先生は今までの家庭教師と違い、無理矢理知識を詰め込ませようとはしなかった。

 それどころか勉強道具を見て、いたずら子のように笑いながら「それは使わないから片付けていいよ」と、言って唐突に話を始めた。


「K君、全ての法則を知ることが出来れば、学歴なんて無くてもいいんだよ」


 Kは父や母の口からは一度も聞いた事がないその言葉に最初は変な先生だな。としか思わなかった。


「人より上に行くには三歩先を予測して動けばいいんだ」


「知識があるのは素晴らしい。でも知識がある人間を使いこなして何かを創造する人間はもっと素晴らしい」


「知識は一だけど、知恵は百なんだ」


「人一人が出来る事などたかが知れている。人間は影響し合う事によって進歩してきたんだ」


「人間だけだよ。他の動物と違い、環境に適応するのではなく、回りの環境を生活に適応させられるのは」


 Kはこの毎日話をするだけで勉強を教えようともしない変な先生に次第に惹かれていった。



 ある日。


「今日はK君のために面白い物を持ってきたよ」


 先生がおもむろに鞄から取り出したそれは一枚の塩ビ製のシートと、プラスチック製の白い破片のような物だった。


「これは将棋と言って、世界の縮図であり、宇宙の法則を記号化したものであり、深淵への扉であり、

 ……そして神の化石だよ。」


 世界の縮図?宇宙の法則?深淵への扉?神の化石?


 その言葉の意味は分からなかったが、Kの小さな心臓はドクンと雄叫びをあげたような気がした。


 Kは先生に教わりながら初めて将棋の盤に駒を並べてみた。

 そしてそれを美しいと感じた。


「これを美しいと感じたK君は正しい。なぜならこれは全てに対応出来る最も隙のない形だからだよ」


 更にルールを教わり対局してみるが、あっという間に負けてしまった。


「駒の役割を疎かにしてしまったね。全ての駒が自玉(じぎょく)を守り、敵玉(てきぎょく)を討つために働かないといけないんだ」


 その後、何局指したかKは覚えていない。夢中になって引き込まれてしまったのだ。

 気がついたら先生が帰る時間になっていた。


「今日はここまでだ。どうやら気に入ってもらえたみたいで良かったよ。次回は囲いを教えてあげよう」


 Kはその日の夜は興奮してなかなか寝付けなかった。



 先生は週に二回しか来なかったが、そのたびに将棋を指した。


 一ヶ月。

 二ヶ月。

 三ヶ月。

 半年。


 それまでの苦痛でしかなかった勉強と違い、時間はあっという間に過ぎた。


 先生が来れない日は別の家庭教師の先生が来ていたが、頭の中で詰め将棋を解いたり、記憶を頼りに先生との対局の棋譜を思い出して過ごした。

 Kは将棋に夢中で、勉強に身がはいる事はなかった。


 家庭教師の先生は怒って、一人、また一人と辞めていった。


 ある日。棋譜を再現出来る事を先生に教えたら褒められた。


「K君、やるねえ。僕がそれを出来るようになったのは小学1年生の頃だよ」

 そう言われてKはスゴく喜んだ。


 Kは更に将棋にのめり込んでいく。


「初日に言ったね。これは世界の縮図だと。

 盤に向かう集中力、先を予測する読み、序盤の構想、中盤戦での判断力、終盤戦での決断力、迷った時の閃き、感想戦での記憶力」


「これらを勉強に応用してごらん。なんて簡単なのだと分かるから」


「勉強を部分的な知識としてとらえるんじゃなく、全体として広く考えるんだよ」


「一つの答えは次の問題に繋がっていて、次の問題は更に次の答えに繋がっている。」


「これは勉強だけに限らない、世界の全ては渦のように絡み合っているんだよ」


「点から線。線から円。円は螺旋を通って点に還る。

これがミクロからマクロまで宇宙に共通する真理なんだ」


 後半は何の事だかほとんど理解出来なかったけど、Kはなるほどと思い、言われた通りに勉強に取り組む。


 それまで何度反復しても覚えられなかった事や、分からなかった事が簡単に理解出来た。

 Kは初めて勉強を面白いと思った。


「K君は攻めはいいけど守りが甘いね。

 詰め将棋を普通に解くだけじゃなくて、本を逆さまにして詰められる手順を解くようにしてごらん。これは秘密の勉強方法だけど、K君は特別だ」


 特別だと言われてKは舞い上がった。


 「これも勉強に応用出来るよ。先に答えを仮定して途中を逆算して考えるんだ」


 そしてKは更に更に将棋にも勉強にものめり込んでいく。



 一年がたった頃。先生が多くの定跡書や、棋譜をもって来てくれた。


「定跡は丸暗記しても意味がないからね。先人が発見した洗練されたものだけど、常に別の手順があるんじゃないかと疑うんだ」


「ありとあらゆる全てを疑うんだ。」


「駒の働きと、盤の大きさに限界を決めてしまうと見えないよ。

 疑う事により観えるんだ。可能性はその先にある」


「まずは棋譜を出来るだけ早く並べる練習をしてごらん。呼吸をするように並べれるようになったら流れが作り出すうねりがわかるようになる」


「棋譜は人生と同じだよ。指し手の喜怒哀楽が見えるかい?」


「これは終わった過去なんだ。でも分岐した未来の可能性が眠っている。それを優しく起こすんだよ」


 先生は変わらずにいたずらっ子のような笑みで楽しそうに笑いながらそんな話をした。



 更に一年がたった頃、小学生になった。


 都内で一番レベルが高いと言われる学校だそうだが、授業は簡単過ぎて笑ってしまう程だった。

 私立だったので幼稚園に通ってない事は関係がなかったが、Kに友達は出来なかった。

 一番の理由は、Kにとって将棋が指せない奴を友達だと思うことが出来なかったのだ。


 その頃、先生に道場というのに誘われた。


「K君のパパとママには許可はとってるから。

 いろんな人と指すのは刺激になると思うよ。K君と同じくらい強い人もいるよ。

もちろん成績を落とさないのが条件だ」


 Kは自分と同じくらい強い人がいるという先生の言葉に興味を覚えて道場に行くことにする。


 道場は異様な空間だった。


 何十人もの大人がいるのにパチパチという駒音と、時おり横に置いた時計のような物を叩く音しかしないのだ。


 Kはそこに漂う空気や雰囲気が神社やお寺のような神聖な場所のように感じられた。


 一緒に来た先生の姿を見て、何人かの大人達が近寄って来た。

 先生は道場でも先生と呼ばれていた。

 この人達にも家庭教師をしているのかな?Kはそう思った。


 そんなに年がいっているとは思えないけど、白髪のおじさんに「キミは二段格だと先生から聞いてるよ。小さいのに凄いねえ。とりあえず、あのおじさんと指してごらん。」

 そう言ってちょっぴり太めのおじさんを指差す。

 知らない大人はちょっと怖いけど、前に先生が「将棋は二人が同じ戦力、同じルールで戦うから大人も子供も関係ないからね」そう言っていたのを思い出して勇気を出す。


 時計みたいなのはチェスクロックというもので、指した方がボタンを押すと相手の時間が動き出すそうだ。

 20分を使い切ったら負けという、20分切れ負けでいいかな?と聞いてきた。


 ちょっぴり太めのおじさんさんは先に「よろしくお願いします」と言ったが、声までちょっぴり太い。


 Kは粘ったが、結局負けてしまった。

 今度はKが先に「ありがとうございます」と言ったが、悔しさのあまり声が震えていた。涙も滲んでいる。


 その後、五人の大人と対局したがKは全敗した。


 Kには聞こえなかったが、先生と白髪のおじさんは


「言われた通りに格上とばかり当てましたけど、あの子、将棋が嫌になったりしないですかねえ?

 ご存じの通り、うちのレベルは全国屈指ですよ?」


「大丈夫ですよ。そんなに浅く浸かってませんから。それに私の見込んだ子ですよ」


「名人がそう言うならそうなんでしょう。

 まあ、昨日のH君もまた来ますって言ってたからねえ。 しかし二人ともまだ一年生なのにどんな指導をしたんですか?」


「二人には盤と駒をプレゼントしただけですよ」

 そんな会話をしていた。


 Kはあまりの悔しさに、その夜は枕に顔を埋めて大泣きした。


 この負けをきっかけに、更にKの将棋の熱は沸点を越える。


 それから週に三回道場に通った。

 なぜか先生に曜日を指定されたが、そういうものかと気にしなかった。


 対局はいつも同じ5.6人のおじさんとだったが、やはり負けに負け続けた。

 

 しかし一ヶ月もすると雰囲気にも慣れてきたし、対策もたてて、次第に勝てるようになってきた。


 Kが二連勝した相手とは対戦から外され、また別の人がローテーションに入る。新しい人は今までの人より強くて、また勝てないようになった。

 

 週に二日は今まで通り先生と指した。


「勝ったのは置いといて、負けた棋譜をひたすら並べるんだ。敗着はもちろん、局面の揺らぎを感じるまでだよ」


「相手側から見た棋譜も並べてごらん。違う景色が見えるから。見えたら次は駒を裏返して並べるんだ。

 神は下から眺めているかも知れないよ」


「局面のバランスが崩れた時は世界が歪んで見えるんだよ、相手側が歪んでいたら攻める。自分側が歪んでいたら我慢だよ」


「これは日常生活でも同じだ。(かたよ)った食事や生活は体調と精神を崩す原因だよ。

 でも世界は偏る事によってバランスをとっているとも言える」


 その頃にはKにとって、将棋がない生活は考えられない程に頭までドップリ将棋に浸かってしまっている。


 更に一年がたった頃、道場主催の子供将棋大会に出ないか?と言われた。


 自分は大人相手に勝率五割はあるのに、小学生に負けるはずがない。Kは優勝するつもりでその大会に出た。


 Kは上級生を何人も薙ぎ倒し決勝に進んだ。


 何と決勝の相手は同い年の赤い野球帽をかぶった小学二年生の男の子だった。


 野球帽の男の子の名前は「H」


 まさか決勝の相手が自分と同じ低学年だとは…

 Kも驚いたが、Hも同じくらい驚いていた。


 そして二人は視線を交錯した瞬間に理屈ではなく直感したのだ。


 この相手こそ自分の終生のライバルなのではないかと。



 (負けるわけにはいかない)


 二人の少年の思いは全く同じであり、互いの背後に蒼白く燃え上がる高温の火柱が見えたような気がした。



 持ち時間は各20分切れ負け。

 二人は競うように大きく一礼して決勝戦が始まった。


 Kは駒にみなぎる闘志を剥き出しのまま乗せて駒音を高く響かせる。

 かたや、闘志を心の内側に凝縮させるように緩やかに持ち上げそっと静かに駒音を立てずに置くH。


 周囲の人だかりは、二人の少年のあまりの気迫に息をするのも忘れて固唾を飲んで見守る。


 まるで世界は二人を残して時を止めたかのようだ。







 39分52秒後。



「負けました」


 その言葉を待っていたように再び世界は時を刻みだす。


 人だかりから巨人が吐き出したみたいな「ふう」という

溜め息が漏れた。




 結果はKの勝ちだった。


 最終盤で敵玉の詰みを読みきれずに、時間に追われたKが指運(ゆびうん)に任せて一手を指した所でHが間髪入れずに投了したのだ。

 Kが分からなかった詰みを、野球帽の少年は読みきっていたのだ。


 勝ったKは小さな体をことさら丸めるように小さくなって項垂れている。


 負けたHは背筋をピンと伸ばして静かに駒を片付けている。


 これではどちらが勝者か分からないな。白髪の席主はそう思った。 


 Kは勝ったのに優勝を素直に喜べない。


 顔面蒼白で一人では立てない程に疲労したKは、チラリとHの様子を伺うが、赤い野球帽を額で押さえつけるように深く被り直していたため表情は見えない。


 Kは自分の着ている服がバケツの水でもひっくり返したように汗で濡れているのに気づく。

 もう一度見ると、Hも自分と同じくらい濡れていた。


 一局でここまで疲れたのは初めてだ。


 いや、そんな事より……



 Kは自分と互角の強さの同い年の赤い野球帽を被った少年の存在に、全身が震える程の歓喜を覚えていた。




 先生に、勝ったけど負けた事を話したら、短く


「運をものに出来たなら、それは必然だよ」


 そう言った。


 それから、三ヶ月に一度の大会の決勝戦は毎回二人で優勝を争った。

 Kが優勝した次の大会ではHが勝ち。

 Hが優勝した次の大会ではKが勝つ。


 それを何度も繰り返し二人は互いを高めあい、互いを好敵手として更に強くなる。


 あいつには負けたくない。

 二人の思いは同じであった。



 Kの棋力はもう道場の大人達を寄せ付けない程強くなっていた。


 先生の勧めで五年生になる直前に、全国小学生名人戦という大会に出た。


 Kは順調に勝ち気進み、東京区代表になった。


 次は東日本大会と言うのがあるらしい。

 帰宅して報告すると先生がいたずらっぽい笑みを浮かべていたが、いつもの事なので気にしなかった。


 東日本大会には東京多摩地区代表でHも出ていた。

 Kはこの事をこの時知ったが、全く驚かなかった。


 二人は順調に勝ち進み東日本代表になった。


 今度は電話で報告した。


「次の決勝トーナメントに優勝したら日本一だよ」先生はそう言った。


 日本一。


 Kは電話を切った後その言葉を反芻してみたが、何の感慨もなかった。


 Hに勝つ。その事だけしか頭にはなかった。


 四人の各県代表で争う決勝トーナメント。

 父も母も先生も会場に来ていた。


 その決勝戦でKとHは優勝を争った。

 小学生名人戦史上最高の激戦と言われたその勝負は


 165手でHが制した。


 負けたKは終局直後の記憶がなかった。


 あるのは敗着を指した瞬間の指の感触と、体中の水分を絞り出す程の涙だけだった。


 Kの意識を呼び戻したのは表彰式の時にいたずらっ子のような笑みを浮かべて優勝者より一回り小さいトロフィーを渡そうとしてきた先生の声だった。


「K君と名人戦を戦う日を楽しみにしている」


 先生は確かにそう言った。




 そして先生は、その日を最後にこの世界から忽然と消えてしまった。



 後で知ったのだが、先生は名人と呼ばれるプロ棋士で、20才で名人位を獲得して100人以上いるプロ棋士達の頂点に上り詰めた天才棋士だったのだ。

 そしてこの日は応援ではなく、決勝トーナメントの解説に来ていた。


 自分が名人である事は父や母、それに道場の人間にも口止めし、自分の写真が載った雑誌をKが目にしないようにして隠していたのだ。

 何故そんな事をしたのかは分からない。

 意味があるようにも思うし、ビックリさせたかっただけにも思える。

 

 現役名人の失踪はおおいに世間を騒がせたが、しばらくするとそんなニュースは世界の日常に埋没してしまい。誰も思い出さなくなった。


 Hも先生の教え子だった事を知ったKは特に驚かなかった。

 道場の曜日指定をしていたのは、ふだんHと対局させないようにしていたからだが、これはお互いの成長を見せない方が、相手は自分より努力をしているかもしれないと想像させて、より努力をさせるためだろう。


 その年、KとHはプロ棋士養成機関の奨励会に入会した。


 二人は同時に昇級と昇段を重ね。


 そしてたったの三年で、二人同時にプロ棋士として認められる四段になった。


 二人とも14才の中学生プロ棋士である。


 そして今日が二人のプロとして初めての対局。


 運命と言うものはあるのだろう。


「必然だよ」先生ならそう言うかも知れない。


 そうなのだろう。


 Kはそう思う。おそらくHもそう思っているに違いない。


 将棋連盟から送られてきた手合い表(対戦表)には


 Hの名前が書かれていたのだから。



 長く瞑想した。


 集中力は極限まで研ぎ澄まされている。


 先生にもらった盤駒で今日までひたすら鍛え上げてきた。


 Hも死に物狂いで来るだろう。


 名人になって先生を待つ。 


 あいつも同じ気持ちだろうな。


 どこかで生きているに違いない先生に恥ずかしい対局は見せられない。


 必ず勝つ。


 そう誓い、Kはゆっくりと目を開ける。


 すると…

 …

 …

 …



 そこは見知らぬ世界の見知らぬ部屋だった。 




 

更新が遅くなってしまい申し訳ありませんでした。


召還組2の男のお話です。


将棋のプロ棋士です。


実は僕は将棋が大好きなのです。


プロの先生方も尊敬しています。


現在は時間が足りなくて更新出来ていませんが、前世が名人を夢見ていたけれど若くして病死した天才棋士を主人公にした小説も書いているくらい大好きなのです。


女の子に転生しています。前世の記憶はありません。


作品名「ウルド」です。


いつか必ず続きを書きます。


もし興味があれば読んでいただければ嬉しいです。


今回は悩みました。


プロになれなかった男にすべきか、プロ棋士にすべきか、プロにするなら何段なのか、何歳なのか。


悩みました。


結果はお話しの通りですが、今でも少し迷っています。


引退した元名人にするって案もありました。


というか、詰め込み過ぎて2回に分けることになってしまいました。


つまり続きます。


中身を見ての通り続きます。


だって異世界アールグロンじゃないですもん。


引きは別の異世界です。


運命の対局直前に召還されてしまいました。


その後です。


もうこの人を主人公にして一本小説が書けそうな気がしてきました。


困ったものです。


それと、全話に前書きか後書きを追加しました。


解説だったり、どうでもいい話だったりします。


お暇な時にでも読んでいただければ幸いです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ