31個(エピローグ)
「子どもが出来た」
――はっ?
何と言いました!?
とんでもない衝撃発言が聞こえた気がするのですが……(汗)。
「ほら、君とボクの子どもだよ」
彼女のお腹の辺りに、青い小さな光の点が生まれていた。
「今のでできたみたいだね。君とボクの子ども。ふふ。話には聞いていたけど、自分で体験する事ができるなんて。驚いた」
そ、そうなんですね。
ど、どうしましょう?
「ははっ。この場所では現世とちがって養育費とかも掛からないし、ボクに任せて君は先に進みなよ。大丈夫さ」
学者さんは本当に嬉しそうだ。
そうか、僕も嬉しいな。
僕も父親になれたのか――。
「この子の名前、何にする?」
えっ。
そういえば学者さんの名前はあるのですか?
「ボクのここでの名前はまだ決めてなかったな、そういえば。意味ないと思っていて。うーんなんにしようかな」
そんな話をしながら、僕と学者さんはイチャイチャしていた。
「我慢しなくていいんだぞ。我慢なんてできないんだから」
わ、バレてる。
「もう、本当に君はしょうがないなー」
そういう学者さんも結構乗り気な気がするんですけど?
そして。
ドバーン! ザバーン!!
「もー、君ってば本当にしょうがないね」
学者さんのセリフ自体は否定するものだったが、その表情は何か満足げなものだった。
そして、学者さんのお腹には――。
31個もの光が――。
「本当に、君ってば、獣の様だったね」
だ、だって、学者さんが可愛すぎるから……。
本当にスミマセン……。
本当に養育費が掛からなくて良かったです……。
「今度は、冥界での魂の子育てを研究テーマにしてみようかな」
学者さん、本当に研究熱心ですね。
「しかし、本当に君には感謝だよ。君に出会えて本当に良かった。ありがとう」
こちらこそありがとうございます。
「ボクの今までの研究結果によると、冥界では魂の成長は無いと考えてられていた。でも、君との出会いで、ボクはとても成長出来た気がするんだ。これは今までの常識を塗り替えた事になる。本当に凄い発見だよ!」
あ、ありがとうございます。
僕も脱童貞できました。
「うん? どうだろう。さっきのはあくまで魂の交わりであって、体の交わりとは言えないんじゃないかな。脱童貞はまだじゃないか」
ええっ、そ、そんなバカな……。
「ふふ。本当に君はかわいい魂だよ。――さて、どうだい。もう上の方に行きたくてしょうがないんじゃないかい」
確かに。
僕のヒトダマはまた直ぐにでも階段を上っていきたくてフルフル震えていた。
"それでは、もう……行こうと思います。学者さん、本当にありがとうございました"
今度は、僕が後ろも振り返らずに階段を上っていく。
――いや、名残惜しすぎて振り返った。
でも上に上りたいという本能は止められない。
涙 (のようなモノ)を垂れ流しながら上っていく。
"学者さん、ありがとうございました! 本当にありがとうございました!"
僕の語彙力とコミュニケーション能力では、これくらいしか言えなかった。
"愛してる"とか"大好き"とか、この冥界ではとても薄っぺらい気がして、かといって代わりの言葉は見つからなかった。
学者さんの声が後ろから聞こえてきた。
「縁の糸は冥界ではずっと繋がっているんだ。転生前にはボクに連絡してくれよ!」
"分かりました!"
そう返事しながら、僕の歩みは止まらない。
確かに僕も一つ経験して成長したようだ。
僕の階段を上るスピードが更に上がった。
◆ ◇ ◆
「君が転生しちゃったら、ボクも後を追いかけちゃうかもな」
学者さんはひとり呟いた。
「研究の続きはまた次にしたらいいしね」
自分自身と相談する。
「この子達がどうなるか見届けたらそうしようか」
何かが決まったようだ。
「うん。また会う時まで。またね!」
~fin~
最後までお読みくださりありがとうございます。
もしよければご指摘、ご感想など頂けますと成長に繋がりますw
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業の審判官「おい、お前の妄想の産物が現世に怪電波として伝わっているようだぞ。どうしてくれるんだ!」
業の審判官「何とかしろ。このままでは現世で命を大切にしない輩が出てきかねないぞ!」
学者さん「すまない、ボクとしたことが。誤解を招くのは本意ではない。しっかり説明しよう」
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学者さんの考察蛇足編
(どうせ転生するのだから、命は粗末にしていいか)
・君はVRMMOとかRPGゲームを体験したことはあるかな。君にとってはゲームでもその世界の住人は真剣に生きていただろう。君の魂が入り込んでいる人物も、その肉体にとってはたった一度の人生だし、その肉体には肉親だっているんだ。けして粗末に扱ってはいけないし、真剣に生きるべきだとボクは考える。
・こういう風に冥界の記憶を現世に持ち込むと、良くない結果を生みかねないし、『現世で真剣に生きた上で死を迎える』という『魂の成長の場』の本質も失われてしまうので気を付けるように。
(自殺について)
・君は現世の位置付けを学んだばかりなのにその質問が出るとは……。
・現世で物質世界の肉体と魂を結びつけて、一人の人間を生み出す。この世界のシステムとしてのどれくらいのコストが掛かっているのか考えてみてごらんよ。それに、現世の命はけっして君だけの命ではないんだ。預かりものなんだ。そんな預かった命を勝手にダメにした時のペナルティ――考えただけで恐ろしいよ。((((;゜Д゜)))
(本当に辛いときはどうしたら良いか)
・魂の成長と経験を信じて本気に生きてみるんだ。その場所が辛いなら逃げ出せば良い。いじめられているなら、自殺するくらいならそいつを(~規制~)。
(病気で苦しいんですが)
・本当に辛いだろう。君の辛さを分かってあげることが出来なくて本当に済まない。
・体は辛いかもしれないが、君の生まれてきたことには意味があると信じて、1日1日をしっかり生きてみて欲しい。とにかく生き抜いて欲しい。
・応援しか出来なくて済まない。本当に応援しています。いつもお疲れ様です。




