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30話 入り婿の乱心と再構成

 その時、アルベルトは国王の直轄領のある街に滞在していた。

(あの女が倒れた、か)

 ピッタリア商会を通じてもたらされた報せに、アルベルトが抱いたのは苛立ちだった。


「第一王子殿下には晩餐会を欠席する旨を詫びる手紙を出すしかないか」

 立太子が確実視されている次期国王との交流は重要事項だ。しかし、妻が倒れたと知っても出席する程ではない。寧ろ、それにもかかわらず社交を優先する薄情な夫だと悪評が付きかねない。


 多少でも耳聡い者なら、オルフェ伯爵夫妻が名ばかりの夫婦であるのを知っているとしても。

(私の仕事を邪魔するため……ということは流石にないか。私に態々知らせるということはよほど状態が悪いのか?)

 説明のない短い手紙を何度見ても、カタリナが倒れた以上の情報は読み取れない。しかたなく、アルベルトはオルフェ伯爵領へ向かうことにした。


 そして街を出発しようとした直前に、続く報せが彼の元に届いた。

「これは、本当なのか?」

「内容は存じませんが、確かにオルフェ伯爵家に仕える方から受け取ったものです」

 ピッタリア商会の商会員が言う通り、手紙の封蝋はオルフェ伯爵家の家紋によるものだった。偽造は違法だが、できないものでもない。しかし、そこまでしてアルベルトを欺く理由はないはずだ。


「……ご苦労だった。ゆっくり休んでくれ」

 それは理解していても、アルベルトはカタリナが亡くなったことを現実として受け入れられなかった。

(何故だ? クラハドールが死んだときはもっと喜べたはずだが……)

 自身の心境に、アルベルトは戸惑った。そして、王都近くのピッタリア商会の支店で仕立てた馬車で伯爵領へ向かっても、そのままだった。


 到着したオルフェ伯爵邸は、どこか空虚だった。いつもこちらを睨みつけるように……いや、睨んでいたライオット達は急に老け込んだように見えたし、生意気な若い執事達は怯えて威嚇する小動物のようだった。

 何より、普段は会おうとしても――ここ何年もそうしたことはなかったが――顔を見ることも出来なかったルナリアと、あっさり対面することが出来た。


(そうか、あの女は死んだのか)

 アルベルトがカタリナの死を確信したのは、この時だった。突如、空虚だった彼の胸に大きな感情が押し寄せてくる。


(堪えろ! 平静を保つんだ! せめて葬儀を終えるまでは!)

 感情を押し殺し、アルベルトはカタリナの葬儀を執り行った。どこか無気力な使用人たちに淡々と指示を出し、出しゃばろうとするルルモンド商会を抑え付け、領内に資格を持つ聖職者がいないので自ら神殿の聖典の一節を読んで彼女を弔った。


 そして、埋葬を済ませ弔問客が帰路に就くのを待って馬車に飛び乗って王都へ向かった。彼が真に愛する家族の元に向かうために。

「った……やったぞっ! あの女が死んだ! ははっ、あの女が死んだんだ! ざまぁ見ろ! クラハドールと同じ轍を踏んだ! 節約狂に相応しい末路だっ!」

 そして、堪えていた喜びを爆発させた。御者には聞こえているだろうが、もう我慢の限界だった。


 アルベルトの胸中にカタリナを悼む気持ちは一切なかった。

 遺書とやらも受け取ったが、読む気にはなれなかった。恨み言か、それとも哀れみを誘うための口先だけの懇願か、はたまた常軌を逸したたわ言か。何が書いてあるとしても、関係ないと思ったからだ。


「書類上は昨日までと同じく、私がオルフェ伯爵だ。ただ、カタリナが生きているときとは違い実権が私の手元に来た!」

 カタリナはいない。ルナリアもその婚約者のカルナスも未成年。オルフェ伯爵領の内政にはライオット達伯爵家の文官が必要不可欠だが、彼らもアルベルトを無視することが出来なくなった。

 彼のサインや判が無ければ、決済が出来ない。王国政府への納税や報告の手続き、領内の法執行や予算の執行。どれもアルベルトの存在が不可欠だ。


 ライオット達が勝手に進めるのは違法行為。解雇どころか悪質と判断されれば処刑もあり得る重罪だ。


「さあ、これから――これから、私はどうすれば?」

 しかし、その時アルベルトは思い出した。自分の当初の目的はオルフェ伯爵家を牛耳ることではないことに。出来るだけ有利な条件で、解放されることだった。


 今までそのために奔走してきた。最愛の女性と再会し、彼女との間に生まれていた娘と暮らすようになってから、それを夢見てきたはずだった。

 しかし、それはもう叶わない。正確には叶うが、だいぶ先送りになってしまった。


 死人と離婚することは出来ない。カタリナの死によって、アルベルトはパウルと組んで考えていた予定を変更する必要に迫られていたのだ。


「このままルナリアが成人してカルナス君と結婚するのを待ち、伯爵家の家督を譲れば……いや、それでも同じにはならない」

 離婚して平民になった元伯爵と、家督を娘と義理の息子に譲った前伯爵では、法的な立場や周囲の扱いが変わる。後者の場合、準貴族として扱われるからだ。


 準貴族とは正式な爵位になく、各貴族家の当主と次期当主以外の家族……両親や兄弟姉妹、妻や娘、息子のことを指す。彼女達の当主や次期当主に準ずる地位を保証するものである。

 例えばアルベルトの場合、カタリナと離婚が成立していた場合はただの平民。彼の実家の男爵家を継いでいる兄が彼を一族の者であると認めて雇用した場合は男爵に準ずる者ということになる。


 そして家督をルナリアの夫になったカルナスに譲った場合は、オルフェ伯爵に準ずるということになってしまう。

 言葉通り準ずる権力が与えられるわけではなく、実際に持てる権力は有名無実……相手がどれほど配慮するかによるという程度の地位だ。しかし、しがらみは平民になった時よりも強くついて回る。


 最悪の場合、新しい領主夫婦の統治の障害になるとして辺境の修道院に押し込められるか、「療養」と称して監禁後「儚く」される。

「……連中ならやりかねない」

 ライオット達オルフェ伯爵家の家臣達はアルベルトのことを敵視し、警戒している。だが、それと同じくらい彼もオルフェ伯爵家の家臣達を敵視していた。


 伯爵領の外に出ず、また人も招かない閉鎖的な彼らなら、何をしてもおかしくない。


「それにルナリアはカタリナに生き写しだ。あの女やライオット達の教育で中身もそうなりつつあるだろう。……私のことを恨んでいるはず」

 久しぶりに顔を合わせた実の娘は、母の急死によるショックで始終呆けたような様子だった。死に目に間に会わなかったアルベルトを恨む様子も見せず、置物のようにただその場にいるだけ。


 しかし、ショックから立ち直ればアルベルトがルナリアに父親らしいことをほとんどしていないのを思い出すだろう。ナタリーとレオディーナを連れ帰れば父の不貞を責めるはずだ。

 アルベルトからすれば、死に目に間に合わなかったのは報せを遅らせたカタリナの自業自得。父親らしいことが出来なかったのも、彼女やライオット達のせい。不貞だって言い分はある。


 しかし、それをルナリアが斟酌するかは別問題だ。


(どうにかしてルナリアを懐柔する。そのためにはナタリーとレオディーナの存在を隠し続けなければならないが……そんなことが可能なのか? ルナリアが成人するまでならともかく、それ以降も……カルナス君と結婚し、正式に代替わりし私が隠居して安全を確保するまで隠し通すことが)

 今後アルベルトは、貴族として必要なカタリナがしていた実務も背負わなければならない。社交シーズンで王都に滞在している間も、これまでのようにはいかないだろう。


 オルフェ伯爵家の家臣達もそれは同様だ。これまでは一年中伯爵領、それも屋敷の周囲に引き籠っていた。ルルモンド商会も決まりきった場所以外に出てこず、外の情報に触れる機会が極端に少ない。

 だから、彼らの行動範囲の外でどれだけ動いてもナタリーとレオディーナの存在が知られることはなかった。


 今後ルナリアは、次期オルフェ伯爵夫人として王族の方々に挨拶をする必要がある。何より、十五歳になったら彼女も王立学校に入学する。レオディーナが入学を目指している学校に。その際、伯爵家の家臣は彼女の従者や護衛として王都に同行することになる。


(無理だ。喪に服すという名目で今年一年は誤魔化せるが、来年の社交シーズンにはルナリアを王都に連れて行かなければ……伯爵家が捜査対象にされ、最悪の場合取り潰しだ)

 初代から続くラドグリン王国の忠臣の家系。しかし、その評価が今も変わらないと幻想を抱いているのは当のオルフェ伯爵家の一族と家臣団だけだ。


 先々代が傾けてから、一向に立て直せないどころか減り続けている税収。王都に寄り付かず、他の貴族にも姿を見せない先代伯爵とその一人娘。そして近隣の領主達との著しい関係悪化。

 これでオルフェ伯爵家に問題がないと思うほど、王国政府は愚かではない。脱税、そして反逆を何度も疑われてきた。


 実際、アルベルトは文官や騎士団から腹を探られたことが何度もある。もっと言えば、現在の国王の忠臣達との会食で尋問まがいの目にも遭っている。

 それでもカタリナが存命の間はオルフェ伯爵家が取り潰しになっても、最悪構わなかった。元々平民になる予定であったし、捜査する側も彼が実権の無い入り婿であることは知っている。


 責任を負うのも多くを失うのも、伯爵家の正当な血を引くカタリナだ。アルベルトも無傷ではいられないが、重罰を受けることはない。

 しかし、カタリナ亡き今オルフェ伯爵家の責任者は彼だ。取り潰しになれば身の破滅……地位や財産だけでなく、命を失う可能性もある。


(いっそナタリーとレオディーナを連れて国外に……いや、それこそ何か企んだに違いないと疑われる。それに逃げた先で上手くやれるとは限らない。それに、ディーナがせっかく積み上げた実績が無駄になる)

 確かなコネや入念な準備もなく国外逃亡なんて、正気の沙汰ではない。平民になることも逃げることも出来なくなったアルベルトは、オルフェ伯爵家を存続させつつルナリアを懐柔し家臣団の力を削がなければならなくなってしまった。


「伯爵領を建て直せば可能か? パウルの協力とディーナの才能があれば、出来るはずだ」

 当初の策でも、オルフェ伯爵領を富ませる予定だった。それをそのまま進めればいい。だが、その考えにアルベルトは何故か納得できなかった。


(何故、苦労してまであの女の生き写しのルナリアが継ぐ領地を富ませてやらなければならない?)

 以前は納得して、寧ろ喜々として進めていた策に今は理不尽さと徒労感を覚える。今の当主は自分なのにと言う思いが、アルベルトの胸の内で大きくなっていく。


(そうだ。ルナリアを懐柔する必要はない。追い落とす。そしてディーナを伯爵夫人にすればいい)

 王国法では、オルフェ伯爵家の後継者に成れるのはカタリナの血を引く子か彼女が認めた養子だけ。彼女が儚くなった以上、後者はない。条件に合うのはルナリアだけだ。


 一方、ディーナはアルベルトの娘だが、王国法が認めるオルフェ伯爵家の範囲からは外れている。彼の庶子でしかない。貴族としての権利どころか、オルフェの姓を名乗るのも難しい立場だ。


 だが、アルベルトは王国の歴史に本来資格を持たない庶子が貴族家の当主となった前例があることを知っていた。

 それは百年以上前、グレコ伯爵家を貴族として無能な嫡男ではなく後妻の聡明な連れ子が継いだ事件。

 それと同じ条件を満たして、王国政府を納得させれば可能だ。ルナリアではなく、ディーナがオルフェ伯爵夫人になることが。


(やれるか? 七割……いや、九割以上上手くいくはずだ)

 思い返せば、条件は整っている。ディーナが天才であること、そして何よりカタリナの教育方針のお陰だ。

(このままナタリーとディーナを迎えに行き、オルフェ伯爵家に戻る。そしてライオット達だけでなく、ルナリアの力も削ぐ。そしてカルナス君をディーナに靡かせれば、ウェンディア伯爵家も協力させることが出来るはずだ。

 その間のナタリーとディーナの安全は、カタリナとルナリアの部屋を使えば確保できる)


 当主の私室同様に夫人の私室と子供部屋は頑丈に作られている。そこにレオディーナの魔法が加われば、ちょっとした要塞並の防備になるはずだ。

 ルナリアは、物置部屋に押し込めればいいだろう。丁度、屋敷を出る前にライオットに使えるようにしておくよう指示を出してあった。


(最初はナタリーとディーナに使ってもらうつもりだったが……何が幸いするか分からないものだな)

 不意に王国政府の徴税官や査察官が訪れた時のために、数少ない使える客間を空けておかなければならない。また、ディーナだったら地面に近い一階の部屋の方が好みだろう。そう考えて出した指示だった。


(後は、どれだけ早く戻れるかだ。ライオットやルザム、ルルモンド商会が動く前に伯爵家を掌握できれば、私達の勝ちだ)

 今後の方針は決まったと、アルベルトは落ち着いた様子で座席に座り直した。


 そして迎えに行ったナタリーとレオディーナは困惑していたし、アルベルトが自分は伯爵であることを打ち明けたら驚いていた。

 しかし、アルベルトは自身の考えを二人に説明しなかった。それは彼女達に手を汚させたくないからだったが……後にして思い返すと、説明することで二人に自身の醜い面を見せるのが嫌だったのだろう。


 それが災いし、ディーナがルナリアの部屋を使うことを拒否して彼女を押し込めるはずだった物置部屋を強請りだしてしまった。さらに、ナタリーもそれに同調して彼女も物置部屋を使うことになった。

「旦那、事を急ぐにしてももっと人数を揃えるべきだったと思いますぜ。サイラスは歳の割に腕利きですが、一人だし何より男だ」

「分かってはいるつもりだったが……思うようにはいかないな」


 そして翌朝、護衛の傭兵達からそう苦言を呈されていた。

「今日からルナリアの食事を減らし、気力を削いで判断力を奪うつもりだったが……ディーナとナタリーだったらそれも止めるだろう」

「お二人ともお優しい方ですからねぇ」


 傭兵達はアルベルトがやろうとしていることを、だいたい察していた。それで止めないのは、彼らが傭兵で、アルベルトがやっているのは王国では「良識のある人からは咎められても、違法とは言い切れない」範囲。所謂グレーゾーンだからだ。

 しかし――


「それと旦那、そのうち倒れるような食事量にしようとしたら止めますからね」

 流石に金があるのに栄養失調に追い込むような真似は、現代日本と比べて倫理観や人権意識が遅れているこの世界、この王国でも違法になる。


「分かっている。もっとも、私が口を出すまでもないかもしれないが」

 以前、この屋敷で寝泊まりしていた頃に出された食事を思い出してアルベルトは遠い目をした。とはいえ、ルナリアもこの家で十歳になるまで生き残って成長しているのだから、当時よりはマシな食事が提供されているはずだ。


「保存食の準備をしておいてくれ。しばらくそれで食いつなぐことになるかもしれない」

 とはいえ、オルフェ伯爵家一族が茹でジャガイモと水だけで生きていける、特異体質である危険性もある。その時は、念のためにラング子爵領の町で購入しておいた保存食とレオディーナの魔法の出番になるだろう。


 だが、オルフェ伯爵家の食堂で提供された朝食はアルベルトの予想に反して普通だった。上級貴族の朝食に相応しいメニューと味かと言われればそんなことはない。しかし、十分な量と栄養が摂れる内容だった。


(やはりあれはイビリだったのか)

 その朝食の席でアルベルトはかつて自分が受けた仕打ちが不当なものだったと確信したが、それに意識を削がれて結局ルナリアの食事を制限するよう命じるのを忘れてしまった。

「……まあ、いいだろう。たしかに、倒れられては困る」

 餓死に追い込んで謀殺しようとしたと疑われれば、監獄行きだ。ルナリアの気力を削ぐ方法は、ほかにいくらでもある。アルベルトはそう思いなおすと、すぐに次の手を打った。


 カタリナの遺品、オルフェ伯爵家に伝わる品を売り払うのだ。そうすることでライオット達伯爵家の家臣達を挑発し、それに乗った者を主人に対する反抗を理由に解雇するのだ。

 国宝に登録されている家宝以外なら、妻の遺品をどうするかも無礼を働いた使用人の処遇もアルベルトの自由にできる。ライオットが抗議するかもしれないが、構うものか。


 ルナリアは亡き母の遺品を粗末に扱われると同時に、ただでさえ少ない味方を削られる。気力を削ぐには十分な仕打ち。さらには、ナタリーとディーナの敵も減らすことが出来るので、一石三鳥の手だ。

 その狙いに、まずは侍女頭のケイティがかかろうとしていた。まずは一人。そう内心ほそく笑むアルベルトだったが――。


「アルベ――」

「ダメよ、アトリっ!」

 それをナタリーが良識と常識をもって止め、愛情でアルベルトを思い直させた。


「ううん。私にとって大切なのは、あなたが私を想って贈ってくれたことよ。ドレスも靴も、そしてデートの時に買ってくれた宝石も全て宝物だわ」

「ナタリー……っ」


 この時、アルベルトはオルフェ伯爵家のことなんて心底どうでもよくなっていた。ただただナタリーが愛おしく、それ以外頭に入らなかった。

 ケイティに何か言った気もするが、それも覚えていない。


「アトリ、そのまま聞いて。私……妊娠したの。あなたの子、ディーナの弟か妹よ」

 そして、ナタリーのその告白によって彼の精神は再構成された。

「私達の子が……二人目の子が生まれるのか」

「そうよ。だから、危ないことはしないで。私達の、そしてこの子のために」


 まだ法的には妻ではない最愛の女性との間に出来た二人目の子、ディーナの弟妹。


「ああ、分かった。君と子供達のために……」

 出来ることは全てやろう。ルナリアを排除し、ディーナを次期伯爵夫人にする。たしかに素晴らしい未来だ。しかし、失敗したとき失うものが多すぎる。思い返せば不確定要素も多いし、肝心のナタリーとレオディーナがルナリアを追い詰めるのを良しとしない。


(そんなことを企んでいたとは、やはり私は冷静ではなかったようだ。頭を冷やさなければならないな)

 それに、今朝受けたサイラスからの報告もある。ノーマン達伯爵家の……旧伯爵家の家臣達から家族を守らなければ。


 部屋にいるのが自分達以外には傭兵達だけであるのを確認してから、アルベルトはナタリーに改めて尋ねた。

「ナタリー。私は君達を連れ帰った当初、この家を乗っ取るつもりだった。ディーナとその夫を後継者に据えて。勝算は十分ある。その気はあるかい?」

「な、ないわっ。恐ろしいことを言わないで、アトリ! ディーナもそうよっ!」

 涙目になって、小声で即答するナタリー。


「分かった」

(復讐も、オルフェ伯爵家も諦めよう。繁栄してくれた方が望ましいが、没落さえしなければ衰退しても構わない。私は、私の家族が平穏無事に、そして豊かに暮らせるならそれでいい)

 もっと穏便に、そして何より慎重に動こう。ナタリーとディーナが反対しないように。


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誤字報告ありがとうございます

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パパよく耐えた、元嫁の娘や家臣なんて無視して。 これから生まれてくる子たちと、四人で仲良く暮らせ。 面白かったです、ありがとうございます。
酷く、醜い。 醜いが、本人も後々に自覚したようだし暫く様子見かな。何より殺されかけた家相手に保身第一で立ち回ろうとするのは自然な動き。因果応報というかなんというか。 負の感情に負の感情をぶつけたら更…
まぁ…なんて言うかあれよね。 パパが荒むくらいに伯爵家がヤバいわ そしておそらくルナリアの矯正は可能だと考察(^^)
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