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なんとかしてあげたい?

 やって来たのは、和洋中なんでもござれのいわゆるファミレス。どう見ても御曹司が連れて来る店ではない。

 休日と言う事もあって、店内は満席に近い状態。家族連れも多く、かなりにぎやかです。

(逆に言えば高校生らしいし、徹が怪しまれる事ないか)


「これだけあると何にすれば良いか迷うよね」

 この手の店は当たり外れがない。何を食べても失敗はないと思う。


「ここの店たまに使うんだけど、麺類がお勧めだぞ」

 何にするか迷っていたら、徹がアドバイスしてくれた。お嬢様なら『こういうお店初めです』とか言いそうなんだけど……徹の場合一人で牛丼屋にも行ってそうだもんな。


「ラーメンも色々あるね。醤油や味噌だけじゃなく、ご当地ラーメンまである」

 ラーメンって食べ慣れた味が一番だったりする。他の地域からしたら珍しい味付けでも、そこに住んでいる人からしたらメジャーな味なんだから。


「あたいはざるうどんかな。こうしてみるとヨシザトの賄いって、かなりお得なんだね」

 夏空さんが選んだのは一番安い素うどん。前なら折角来たんだからとか、空気が読めない事を言っていたかもしれない。


「俺は山形県の中華そばだな」

 徹が選んだのは、ご当地ラーメン。今はちょうど東北フェアをやっているそうだ。

 この間、マーチャントグループの事を調べたら、徹の先祖は山形県の酒田市生まれだそうだ。庄内地域から出た商人だから庄仁姓を名乗ったらしい。

 酒田公園は故郷に対する敬意で、徹のお爺さんが作ったそうだ……公園作るお爺さんって、凄いよね。


「私は冷たいおそばにする。パスタは信吾君が作ってくれるのが一番美味しいし」

 秋吉さんは冷たいソバにした。一回プロの作るパスタを食べて下さい。僕が作ったパスタは紛い物だって分かりますから。


「僕は何にしよう……ざるラーメンがあるっ!こんなマニアックな物までそろえているとは……」

 今日は暑いから冷たい麵が良いと思ったら、婆っちゃの家で良く食べていた麵があったのだ。懐かしくて涙がでそうになりました。


「初めて聞いた。それも青森のお婆さんの所で食べたの?」

 なんだろう。秋吉さんの口から婆っちゃの事を聞くと、妙に気恥しい。


「うん。冷たいラーメンをそばつゆで食べるんだ。暑い日でも、これなら食べれたんだよな」

 数年前の事なのに凄く懐かしい。最近、忙しくて婆っちゃに電話出来ていないんだよね……言い訳です。秋吉さんの事をなんて言えばいいか迷っているんです。


「……それじゃ私もそれにする。いつか青森のお婆さんとも、お話してみたいな」

 秋吉さんが“とも”と言うのには訳がある。アルバイトを頑張っている事もあり、秋吉さんは婆ちゃんや母さんのお気に入りとなっている。

 今度、収書整理の仕事も任せるそうだ。

 そして母さんに『勘違いしない様に』って言われた。あれはこんな良い子がお前を好きになる訳ないって意味だと思う。


「あたいもラーメンにしようかな。ここクーラー効いているし」

 そう言って徹をチラ見する夏空さん……この二人は確実にお互いを想いあっている。なんとかしてあげたい……でも、ハードルが高すぎて僕には無理です。

(名納にばれる前に進展させないと……徹、気付いてよっ!)

 夏空さんは、お前と同じ物を選ぼうとしているんだぞ。完全にアピールじゃん……本当に鈍いんだから。


「皆は、海に行って何がしたい?」

 話題を変えたのには理由がある。今の流れで徹を茶化したら『秋吉さんもお前と同じ物を頼んだろ』って突っこまれてしまう。そうしたら絶対変な空気になってしまう。もしかして勘違いしちゃった?って言われた時の空気っていたたまれないんだよね。


「一応、専用のビーチはあるぞ。昔は近くに遊園地があった……らしいけどな」

 言葉を濁すホテル関係者(経営陣)。そこに行くお客さん目当てで作ったけど、先に遊園地が潰れてしまったと……不振の理由明らかじゃん。


「海が近いなら泳いだり、ビーチボールで遊んだりか……あたいは、日焼けもしたいな」

 つまり徹と二人にすればサンオイルイベントが起きると……竜也に協力してもらうか。


「近くにお勧めの観光地はないの?」

 ネットで検索してみたら神社仏閣しか出てきませんでした。僕は興味があるけど、海水浴に来る人にはニーズが薄いと思う。


「地元の商店街や市場に行ってみたいな。テレビでも良く行くよね」

 秋吉さんは旅物番組に憧れているらしい……市場か。観光客が入れる所だと良いけど。あれはテレビカメラって、チートアイテムがあって成り立つものなんです。

 市場って、時間帯によっては殺罰とした空気になっているんだよね。


「一応、希望すれば地引網体験が出来る筈ですよ」

 徹は夏空さん以外の女子には敬語で話す。ちなみに僕と竜也は女子全員に敬語で話しているけど、正体が分かった今では全然意味合いが違う。

 僕の場合は度胸がないだけなんだけど、竜也の場合は勘違いされない為だと思う。もしユウと親しくなれたって言いだす女子がいたら、ネットが大荒れになる筈。

 トラブル防止って意味では同じなんだけど、中身は似て非なる物です。


「地引網か。地魚の調理法とか知りたいな、映えスポットとかあるの?」

 今回の本当の目的はホテルの宿泊客の増加。若い人を呼ぶには、映えスポットが良いらしい。


「夕日が沈む海岸があるらしいぞ」

 徹、それ日本海側なら全部そうだから……目新しさは少ないよ。でも、大丈夫。

 僕等には竜也というチートアイテムがある。

海岸に竜也を立たせて写真を撮れば、集客に繋がる筈。事務所にはマーチャントグループに交渉してもらおう。


「良いね。皆で写真撮ろっ……これがざるラーメンか。美味しそうっ」

 流石はマーチャントグループ。完璧な再現だ。

(あれ?この卵焼きは、確か徹の弁当の入っていたやつだ)

 それは業務用の冷凍卵焼き。つまり徹の弁当は自社製品で構成されていたと。だから冷凍食品ばっかりだったんだ……品質チェックあるけど、大変だよね。

奇跡を信じて自分を騙しながらモチベーションを上げていました でも、そろそろ結果発表 少しモチベーションが下がるかも知れません

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[良い点] 他の恋愛やラブコメ作品とは一線を画すストーリー。 路線は恋愛だけれど、舞台設定が面白いです。 [気になる点] テンプレ展開じゃないからブクマや星稼げるのかな? ちょっと心配 [一言] スト…
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