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懐かしの家に戻ると ママがでむかえてくれた。
「おかえり~よかったね~」
ママが出てきて私を抱きしめた。
「心配かけてごめんなさい~」
「美味しいものたくさん作ったからね~
まずは昼食バージョン食べて食べて~~」
ママは楽しそうだった。
よかった……
「おかえり」パパはソファーに座って新聞を読んでいた。
「尚は仕事で帰ったけどよろしく言ってたからな。」
「うん~」
なつかしい部屋
ちょっとだけ留守にしてたのに 本当にホッとする。
「私も今週一杯はいるからゆっくり休みなさい。
秋杜にはさっさと帰れって言われたけどね。」
「ひどいこと言うのね。」秋杜なら言いそうだ……。
「今日帰らないと怒るぞだって…人を邪魔者扱いしてね…
そうでしょう春湖~」
由美ちゃんは食器を出した。
「昨日秋杜に 春湖を連れて行くって言ったら
ブチギレられたのよね。
あの子の頑固さにも困ったものよ。みんなで説得しても
聞く耳持たないし……しまいには耳栓して寝ていたわ。
全く…誰に似たのかしらね……わがままで横暴で……人の意見も聞かないんだから。」
由美ちゃんがブツブツ言いだした。
「ほら~由美のおとうさんに似てるじゃん~~」
ママが言うと
「あれよりひどいわ。
春湖・・・・大丈夫?」
「秋杜は私にはとても優しいから~~~」
「それならいいけど……自分の子供だけど
あの融通のきかなさには先が思いやられるわ。」
さらに盛られたあんかけ焼きそばがいい香りがした。
この間までのつわりが嘘のように食欲を誘う。
「食べなさい~」
「いっただきま~~~~す」
一気に頬張った。
「うわ~~~めっちゃ美味しい~~~」
「でね……あんたから秋杜を説得してくれない?」
「え・・・・?」
口が止まった。
「あんたの言う事しかあれなら聞かないわ。
今の現状なら秋杜と春湖の関係がばれたら大変なことになるでしょう。
この間だって芸能人と噂になった時だって
大変だったんだし……それが妊娠したなんて
高校生で父親なんてわかったらそれこそ一体何書かれるかわかんないわよ。」
ママの言葉に何も言えなくなる。
全くその通り
「まずは卒業を無事にさせることが大事だわ。
秋杜には春湖と子供を養ってもらわないといけないから
この名門だけは卒業してもらわなと
この先絶対に不利だからね。」
「私からも春湖にお願いしたいわ。
子供のことはバックアップするし二人のことも応援してるから
でも秋杜のためにそうしてもらえないだろうか……
あの子が卒業してそれからはすぐに一緒に暮らしていいから。
週末は秋杜に向こうに来てもらっていつも一緒にいられるようにするから
秋杜を説得してくれない?」
由美ちゃんが思いつめた顔で言った。
「体が落ち着いたら デパートも新しい人が動けるようになるまでは
少し仕事もしたいんだけど……そうしてほしいって言われてる。」
「お腹が目立たないうちはそれでもいいけど……。」
ママと由美ちゃんは顔を見合わせた。
「秋杜そんなに怒ったの?」
「まったくあの子は 春湖のことになるとムキになるからね。」
「絶対離れないからなって朝もそう言い残して行ったわ。」
嬉しかった…けど
「春湖がしっかりしなさいよ。
秋杜の将来考えて 誰も何も言わないわけがないんだから
お腹大きくなったらすぐに二人のことばれるでしょう?」
「そうだけど……。」
「秋杜のためだよ。
春湖はもう秋杜の奥さんになるんだから……
秋杜の将来を考えなさい。」
「わかってるけど・・・・・・。」
二人に熱く見つめられて 私もさすがにタジタジになっている。
「冷めちゃうぞ~まずは食べろ。春湖……。」
パパの声に ホッとしたけど
「うん~」
私は 一気に食欲を失くしていた。




