111
「春湖 元気だった?」
春湖の様子を見に行った 春湖の両親が帰って来た。
「男の気配はなかったか?」
とうさんが神経をとがらせている俺をチラチラ見ながら言った。
「男~~ぉ!?
少なくても 春湖には男のおの字もなかったな~ママ~」
「そうなのよ。たくましくなってて…心配しちゃったわ。
就活も始まってるから アルバイトも大概にしないとって……
彼氏?絶対いないわ。本人も就職してから
いい人探すんだ~~って言ってたから。」
とうさんがニヤニヤして俺をつついた。
「なんだよ……。」
「よかったな~春湖はもしかしたらおまえの
ものになるかもしれないぞ~」
俺が春湖を好きになるのは とうさんたちの影響も大きい。
「春湖と結婚すんだぞ~~」
俺が春湖のことを好きだと宣言するたび
とうさんと春湖のとうさんは
「かっこいいぞ~」と大げさに褒めた。
キツイことを言われても へこたれなかったのは
ある意味とうさんたちの存在が大きかったかもしれない。
「好きな女を自分のものにするなんて 男のロマンだからな~」
俺は…俺は…春湖をずっとずっと愛してきた。
離れている今だってそれは変わらないし……
春湖を手に入れるためにする努力は欠かせない。
「勉強はど~だ?」春湖のとうさん
「いいよ。俺絶対 合格できる自信あるから。」
「いいな~その自信!!男はそうじゃないとな!!」
「秋杜のそう言うとこは 理想だな。
自分に対しての絶対的な自信を持てるなんてうらやましいな~」
理想か……
嬉しかった……。
男としての褒め言葉が 何より一番嬉しくて
早く大人になって 春湖と同じスタートラインに立ちたい
ずっとずっとそう思ってきた。
「おまえの一途な想いに うちの強情娘め……
いつ大人しく受け入れるのか見ものだな~~」
「絶対春湖を ゲットするんだ。
だって俺の人生…そこが一番難関だったから・・・・
ある意味 勉強より難しいもんな~」
「おまえも大人になったな~」
二人が目を細めた。
「もっともっと大人になりたい……。」
俺はそうつぶやいた。
春湖の仕事が決まったと聞いたのはもうすぐ夏休みが終わる時だった。
札幌のデパート
ここに戻ってくる・・・・・・。
この春湖のいた風景が……もう少しで戻ってくるんだ……。
俺の心は弾んだ。
早く会いたい それだけを…その日を励みに俺も
俺の夢と・・・・プライドが保てるように
男として成長したい・・・・そう強く決意した。




