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カクテル(微SF)
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生体維持養液が、混ざりきらない二層のまま頭上から注入された。
まるでシェイク前のカクテルのよう。
そんな比喩を教えてくれたのは、主任エンジニアのヤハタだった。
少女はぱちりと瞬きして、ガラスの向こうに目を凝らす。
皺のよった白衣の背中が、今朝も嗚咽を堪えている。
本当は聞いてみたかった。
カクテルってどんな味?
ガラスの向こうには何がある?
ねえ、スマナイってどんな意味?
初めて見る鮮やかな赤い液体が培養槽に流れ込んでくる。
こぷ、と吸い込んだ途端、頭がぼうっとした。
目が覚めたら尋ねてみましょう。一人頷いて、少女は再び目を閉じる。
けして触れられない白い背中に手を伸ばした。
ひやりとしたガラスの感触が指先に当たる。
培養槽のこちらと向こう。途切れた空間は綺麗に二層のまま。
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2020/11/19(木) ジャンル:微SF
綺想編纂館(朧)@Fictionarys さんの企画「#novelber」
11月の間、各自で毎日1題の物語を作っていく企画です。
Day19のお題は「カクテル」。




