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手のひらの一滴  作者: 狼子 由
2020年に作ったもの
480/514

わたくしの歌を聞け(ヒューマンドラマ)

●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


 あの方はわたくしの手を取り、琴を爪弾かせてくださいました。

 ぽーんと高い音が舞い上がり、あの方はその音を追いかけるように空へ目を向けられました。


 わたくしではなく、遠いどこかを見ている。

 それが寂しくて。

 こちらを見てと叫ぶために……ええ、わたくしはエレキギターを始めたのです。


 初めてのステージ、スポットライトを浴びるわたくし。

 背後でバンドメンバーのスティックカウントが聞こえます。

 体育館の後ろにあの方を見付け、わたくしはピックを握りしめました。


 さあ、お聴きなさい、拝聴しなさい。

 せめて、わたくしのこの音を聞きなさい。


 壁際で顔を上げるあの方の視線が、ステージの上のわたくしと重なって――


●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●○●


2020/11/04(月) ジャンル:ヒューマンドラマ

綺想編纂館(朧)@Fictionarys さんの企画「#novelber」

11月の間、各自で毎日1題の物語を作っていく企画です。

Day4のお題は「琴」。

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