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空の自販機(微SF)
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通勤途中の自販機に惰性でお金を投げ入れてから、彼は気付いた。
陳列棚のサンプルが空になっている。いつの間に撤去されたのだろう。
ガチャ、とコインの落ちる音を聞いて、慌ててボタンを押した。
何も起こらない。仕方ない。溜息と共に諦めて立ち去った。
立ち去った後のことを、彼は知らない。
本当は売られていたのは「無」だったのに。
購われた「無」は、触れられることもなく、今も取り出し口に止まっている。
後から落ちてくる誰かの「無」がぶつかって、論理破綻による世界崩壊を起こす日が来るまで。
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2019/04/01(月) ジャンル:微SF




