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魔法使いの世界にて  作者:
三章 マジックバトルトーナメントにて
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決勝戦の雲行きにて

* * *


「皆様、大変長らくお待たせしました。それではこれより、マジックバトルトーナメントの決勝戦を行いたいと思いまっす!!」


 露出度の高い女性審判が、マイクで声を拡声させて観客に告げる。

 ついに始まろうとしている決勝戦に、観客席は一つも空きが無いほどの満員状態であった。


「それでは登場していただきましょう。もはや大穴なんて言わせない! 今では有名にして本命! 若き新生ワイルドファング~~!!」


 いつもの通りリーダーのアレフを先頭に登場すると、割れんばかりの声援が鳴り響く。

 そんな声援に、またしてもアレフは感動の涙を流していた。


「あ、みて下さい師匠! ノードの街の人達が応援にきてくれています! あそこには四回戦のシルベーヌ支部もいますよ!」


 チカは興奮しながら両手を振る。前回のように思いつめた表情は影を潜め、元気いっぱいであった。

 準決勝の大将戦に勝利した彼女は自信を取り戻したのか、明るい性格に戻っていた。そしてガルは、そんなチカをみてホッとしていた。


「続きまして、やはり勝ち上がってまいりました! 今大会の大本命。メンバー全員が安定した強さを誇る、正に熟練の強者たち!! マグノリア支部~!!」


 そしてこちらも同じように、鳴りやまない大歓声に包まれた。

 そうして、両者は中央に並び整列をする。


「リーダーのアレフだ。よろしく」

「へへっ、俺はソルティってんだ。ま、お手柔らかにたのむぜ!」


 ソルティと名乗るマグノリア支部のリーダーと握手を交わす。愛想が良いと言えば聞こえはいいが、どこかチャラチャラとして軽そうな青年だという印象をアレフは受けた。

 身長は高くスラっとした体型で、若者が好みそうなシャツにジャケットを着こなす最近の若者といった雰囲気である。

 マグノリアといえば大きな大陸の首都に当たる巨大な街だ。当然、人口が多いぶん店も多いため、必然的に物凄い速度で発展していく。

 ソルティの格好や言葉遣いを聞いていると、ローブにマントと言った風貌の自分達が田舎者のような気がしてくるアレフであった。

 ……まぁ、ノードの街は森と平原に囲まれた、正に田舎である事は間違いないのだが。


「それにしてもさ、そっちのチームって女の子が三人もいるじゃん? いいよねぇ~華があって! だってほら、特殊部隊って野郎しか入って来ないじゃん? ウチのところなんか人数は多いのに女の子が一人もいねぇの! マジで出会い少なすぎだっつーの!」


 アレフと同じくらいか、もしくはもっと若いであろうソルティはタメ口で愚痴を聞かせるようにしゃべり続ける。

 そんな彼を止めたのは審判であった。


「コホン! それでは今から、リーダーである二人に対戦形式を決めてもらいます。それでは、お願いします!!」


 そう宣告した瞬間であった。なんと観客側が突如として騒めき始めた。


「まさかここで三ポイント先取なんてしないよな!? 全滅させろ全滅ぅ!!」

「最後の闘いに相応しく相手を全滅させるべきだぁー!! 勝ち抜き戦やれぇー!!」


 勝っち抜っき戦!! 勝っち抜っき戦!! 勝っち抜っき戦!!

 観客席からコールが巻き起こっていた。


「あっちゃ~……この空気は変えられそうにねぇな」


 ソルティはやれやれと両手を広げる。


「そのようだな。なら、勝ち抜き戦でいこう」


 アレフも迷うことなく、そう答えた。

 実はこのバトルトーナメントはいつもこうである。決勝戦になると、その戦いにふさわしく、相手を全滅させて完全勝利を願う声が巻き起こり、とても勝ち抜き戦以外を選ぶような空気ではなくなるのだ。

 アレフもソルティも、それを知っていたため潔く勝ち抜き戦で話を進めたのだ。


「それでは決勝戦は、勝ち抜き戦に決定致しました! 両者は一度控え室に戻り、メンバーの配置を決めて下さい!!」


 そう言われ、アレフはすぐにきびすを返す。そんな時だった。


「あ、そうだ! ワイルドファングのリーダーさん。ちょっと話があるんだよ。忘れるところだったぜ」


 そうソルティに声を掛けられ、アレフの足は止まるのだった。


* * *


「そう言えば、この大会はいつも最後は決まって勝ち抜き戦だったな。今回もそれは変わらないって訳か」


 そうガルが、メンバーのみんなに聞こえるように言い放った。


「でもそれだと私達は不利だわ。こう言うのもなんだけど、隊長さんは戦力としてちょっと頼りない……」


 セレンが気まずそうにそう言った。


「大丈夫です! 私達四人が、相手を二人ずつ倒す勢いで攻めればいいんですから!」


 チカはやる気満々である。これも準決勝で勝った賜物だろう。


「って、あれ? 隊長は?」


 アイリスがそう言うと、他の全員が周りを見渡す。確かに、一緒に歩いていたと思っていたアレフの姿はどこにも見当たらなかった。

 ——そんな時である。


「こ、これは大変なことになりました!!」


 フィールドにいる審判が、マイクを通してそう叫んだ。


「な、なんと、この決勝戦に勝ったチームが負けたチームを吸収し、合併する模様です!!」


 そんな審判の声に、一同は唖然とするのであった。

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