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百合色の鍵姫~転生した元魔王の甘々百合生活  作者: 恋する子犬
第三章 尊い姉妹と幸せを得た少女

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第54話 衝撃

番外編②投稿中です。詳しくは活動報告をご覧ください。

「それにしても、昨日は色々あったな~」


 起きてすぐに、私はベランダに出て物思いに耽る。夜中まで騒いでいたから、多少は眠いんだけど、今日はいつもより早く目が覚めてしまった。


「アリアさん、おはようございます。他の皆さんはまだ寝てるのに、珍しいですね~」


 そこへ洗濯を終えた衣類を干しに、フランがベランダに出てくる。この子も私たちと同じ時間に寝た筈だけど、よくいつも通りの時間に起きれるものだ。


「おはよう、フラン。相変わらず早いね~」

「そりゃ、もう!皆さんに心地いい朝を迎えてもらいたいので、誰よりも早く起きなきゃですから!」


 両こぶしを胸の前でぎゅっと作り、フランは真面目に返答する。


「凄いな~フランは。でも、あまり無理しちゃダメだよ。みんなも、フランの頑張りは知ってるから。偶には、私たちを頼ってくれてもいいからね?」

「アリアさん……はぁぁぁ、もうあなたは女神様か何かなんでしょうかぁぁぁぁ!!」


 そう大げさに反応し、むぎゅっと私をぬいぐるみのように抱き締めてきた。顔が柔らかい膨らみにめり込み、良い意味で意識が吹っ飛びそうになる。

 あ、相変わらず大きい…。これでまだ16だもんね。どれだけ成長するんだ…。

 赤ちゃん返りなんかしちゃって、なんの躊躇もなくフランのお胸にダイブしたいとか、口には言えないことを考えていると、


「あ、ああアリアちゃん…フランちゃん……」


 あまりにも騒がしすぎたのだろう。起こしてしまったみたいで、隣の部屋で眠っていたモナが、いつの間にかベランダを覗き込んでいた。


「ああ、モナさん。おはようございますぅ」


 私を抱擁しながら元気に挨拶するフラン。それとは対照的に、何故かモナは顔を青くさせる。


「二人とも、朝からベランダでそんなことを……。アリアちゃん、なんか色々凄いね!!」

「何が!!?」

 

 モナは何を勘違いしたのか、過激なことをオブラートに包んで言う。()()()赤ちゃん返りしたのだと思っているようだ。


「やだな~、違いますよぉ。授乳中とかじゃないですから~」


 言わんでいいわ!!!

 女の子同士だからいいと思ってるのか、フランから何の恥ずかしげも感じない。全くもう…。


「そ、そっか…てっきり、アリアちゃんはそういうのが趣味なのかと…」

「違うからね!!?」


 朝っぱらから、気迫に溢れた突っ込みをさせられる始末。このやり取りにも、少しだけ楽しいと思い始めてる自分が心配になるのだけど…。


「あ、そういえば…。丁度昨日、お風呂のボディソープが切れてしまったんですよ。急ぎでもないんですが、今日中に買い出しに行ってもらえると助かります」


 と、急にほのぼのとした話題に転換される。


「私行ってくるよ。暇だし」

「あっ、じゃ、じゃあモナも行こう…かなぁ」

「ボディソープ買うだけだよ?」


 一緒に行きたいというモナの意図が分からず、首を傾げる。そんな私に、モナはずいっと近寄ってきた。


「い、いいの!一緒に行きたい!……ダメ?」


 寝起きで少しボサつきながらも、普段は見せない下ろした髪。猫耳も相まって、それが一層妖艶に見えて。

 そんな子が上目遣いに問いかけてきてるのだ。キュンキュンしない訳がない。


「ううん、ダメじゃないよ!いこっか!」

「う、うん!」


 まあ、モナが楽しそうにしてれば何でもいい。こんな私で良ければ、どこでも付き添ってあげよう。




     ◇




 買い出しを終え、それだけじゃ退屈だと、私たちは商店街を散策していた。

 最近ここに住み始めたモナも、すっかり村の一員で、愛嬌と純粋な性格にみんなが引き寄せられる。


「あら、モナちゃん!今日もフードが似合ってるわね~!可愛いから、これサービスしちゃおうかしら!」

「にぃへへ~、ありがとう~」


 思えばモナって、里の同族や勇者パーティ関連以外だと、碌に人に触れられる機会がなかったんだもんね。

 あんなのは、ごくごく一部の連中だ。村には、こんなにも誰かを思い遣れる人たちで溢れているのだから、自分は神霊族だからと、もう劣等感を抱くことはない。

 暴走を引き起こすきっかけも、余程でない限り生まれないしね(というか、私がさせない)。

 と、温かい村の人たちに囲まれているモナを見ながらほっこりしていると、


「ん…?」


 偶々近くにいた知り合いに気づき、挨拶をしていくことに。


「ええっと、人参と茄子と……玉ねぎは、うーんと」

「これですか?」


 八百屋で必要な食材を()()で探し当てようとしていた女性に、手渡しで野菜を差しだす。女性は私の声に気づき、こちらへ顔を向けた。


「この声…もしかして、アリアちゃん!?」

「はい。昨日ぶりですね、アィリスさん」

「あ~、これまた偶然!」


 目の見えない盲目の女性―アィリスさんは、私と分かってにっこりと可憐な笑顔を見せる。昨日も思ったけど、見れば見るほど美人過ぎて、ポッと頬を赤らめてしまう。


「アリアちゃんもお買い物??」

「はい。丁度終わったところなんで、手伝いますよ。何が必要ですか?」

「ほんとに?助かるわ~。そうね~」


 物腰の柔らかいアィリスさんの接し方に、目が見えないことを感じさせない程の余裕を感じてしまう。普段の買い物は、手探りや物の匂い、仕事仲間に協力してもらったりなど、試行錯誤して何とか頑張っているそうだ。

 今はもう慣れて、不自由はあまり感じていないとのこと。それでも、お店の人が一つ一つ値段や鮮度を説明してくれているのを見て、アィリスさんがこの村にいて本当に良かったのだと心の底から感じた。

 

「あー、いたいた!アィリスちゃ~ん!」


 アィリスさんの買い出しを終えると、別の店にいた彼女の仕事仲間が駆け寄ってくる。アィリスさんの職業である〝行商人〟のリーダーだ。


「ごめんね~、一人にしちゃって!大丈夫だった?」

「【カナ】ちゃん!うん、この子が手伝ってくれたのよ」

「へぇ!もしかして、いつも話してる妹さん?」

「あー、違うの。昨日知り合った子で、今日も偶々会ってね」

「そっかそっか!お嬢ちゃん、優しいね~。ありがとう!」


 元気いっぱいなリーダー、カナさんは私の頭を優しく撫でる。ちょっと照れ臭さがあったけど、この人たちにとっては、私はまだまだ子供に思われても仕方ないと素直に受け入れた。


「それじゃ、アリアちゃん!手伝ってくれてありがとうね~」

「はい、お気をつけて~!」


 カナさんがついてるから、帰り道は大丈夫だろう。凄く優しそうな方だったし、仕事上のリーダーとはいえ、アィリスさんとは対等に接していたから、まるで友人のようだった。

 暫くはカギ村に留まる予定と言ってたから、その間に妹さんが帰ってきて再会なんてことがあるかもね。

 

「アリアちゃん、そろそろ帰ろうか」

「うん。…て、随分持たされたね。半分持つよ」

「えへへ、ありがと」


 大量にサービスされた品々を両手に抱えたモナと横並びに、私も家へと戻る。

 この時、私は思いもしなかった。幸せそうなアィリスさんの事を考えていたのも束の間であったことを。

 私は今日、彼女の〝妹〟から衝撃的な過去を語られることになる――。




     ◇




 昼時、みんなでフランの作ってくれた昼食を囲い、いつものように会話に花を咲かせる。そして話は自然と、昨日獣人の里で敵対した〝ホムンクルス〟へと切り替わった。


「昨日の機械人形みたいな奴ら、ホムンクルスって言うのだな」

「いや、知らなくて戦ってたの…?」

「敵の名前なんて、いちいち覚えてられないのだ」

「本気で戦うなら、相手の情報はある程度予習しておいた方がいいと思いますが…」


 呆れたようなフランの口調に、「ん」とだけ言って、ユィリスは昼食にがっつく。

 興味のない話には、とことん興味の無さそうな態度をとるな、この子…。


「それでね、そのホムンクルスを作った錬金術師っていうのが…ええっと、ファモス?だっけ。そいつが――」


 しかしこの何気ない私の一言で、場の空気が180度変わってしまう。

 予想外も予想外。この話題に関して、全く関心を示さなかった子が、異質なまでに豹変した。


 ――カタンッ……。


 ファモス。その名を聞いた途端、食事に集中していたユィリスの手から、スプーンがずり落ちる。それに気づき、全員が一斉に彼女へ視線を移した。


「ユィリス…??」


 口元を手で押さえ、目を異様に白黒させている。気持ちが悪くて、吐きそうな雰囲気ではないように思えるけど…。


「ちょ、ちょっと大丈夫!?」


 そんなユィリスに、只事ではないといち早く悟ったルナが気に掛ける。そして数秒の沈黙が流れた後、異様な緊張の中、ユィリスは俯きつつ話し出した。


「なあ、アリア…」

「う、うん…」

「その錬金術師の名前…本当にファモスっていうのか?」


 私は即座にシャトラへ視線を移す。その意図を察し、こくりと深く頷いたシャトラを見て、上手く話を合わせた。


「そうだよ。レアリムの戦いの後、ヴァイスの口から聞いたことがあってね。それを思い出したんだけど…」

「……」


 再び黙り込むユィリス。その表情は先程とは別人で、拳を強く握り、下唇を噛みしめ、怒りを必死に堪えている。

 皆、ごくりと生唾を呑みこみ、彼女の言葉を待っていた。

 冷静という言葉は似合わない。そんなユィリスでも、この場では溢れ出る感情をグッと抑え込み、気持ちを落ち着かせている。


「そいつは…そいつはな……」


 深呼吸を挟んだ後、ユィリスは衝撃的な事実を口にした。





「「そいつは、姉ちゃんの〝光〟を……奪った女なのだ!!!」」





 えっ……?

 光という言葉が何を意味するのか分からず、首を傾げるルナたち。でも、私は一瞬で察した。

 背筋が寒くなる。私の頭には、すぐに一人の女性が浮かび上がってきた。

 まさかと思い、私の心が即座に確認を促す。

 

「ねえ、ユィリス…。その、お姉さんの名前って――」

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