表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
百合色の鍵姫~転生した元魔王の甘々百合生活  作者: 恋する子犬
第二章 王都レアリムでの一件(※加筆修正中)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/135

第27話 メイドの癒し

 あれ、私…何してたんだっけ。

 目を開けると、目の前には天井にぶら下がったランタンの灯りが一つ。見渡せば、私はいつの間にか、薄暗い自室のベッドの上に横たわっていた。

 ここ、ルナの家だよね…?


「いつの間に、帰ってきたの?」


 というか、今まで何してたんだっけか…。

 どこから帰ってきたのかも、自分が何をしていたのかも、なぜか思い出せない。まるで、誰かによって思考を支配されているかのように…。


「ふふ、やっと起きたわね。アリア」

「え…?」


 人の気配など一切感じなかった部屋の何処かから、誰かの声が鮮明に聞こえてくる。聞き覚えのある声に、私は耳を澄ませながらキョロキョロしていると、


「こっちよ、アリア。ふぅー…」

「ひゃっ……!?」


 唐突の耳ふーに体をびくつかせてしまった。と同時に、私の体に軽く体重がかかる。

 細目で前を見ると、そこには私に覆いかぶさるようにして寝転がるルナの姿があった。どうしてか、頬を赤らめて息を荒くする彼女に顔を近づけられ、ドキッとしてしまう。


「る、ルナ!?ど、どうしたの!?」

「んー?どうしたのって、アリアをいじめに来たの」

「い、いじめ…?」

「だってアリア、こうされるの好きでしょ?はむ…」

「んあっっ………!!?」


 両手を押さえつけられ、耳を甘噛みされる。とんでもない刺激の強さに、口から変な声が飛び出た。


「る……な、だ……めっ…」


 涙目で体を震えさせる私を見て、ルナはそそられたように興奮した表情になる。


「ハァ、ハァ…その顔、やっば…。もっと見せて…」


 ルナの舌が耳に近づく。

 耳を、凌辱される…。でも、ルナになら…。

 既に薄れゆく意識の中、口を半開きにし、半ば放心状態に陥りながら、されるがままになる。

 

「耳元で囁かれただけで体が跳ねちゃうのに、耳を直接舐められたら、どうなっちゃうのかなぁ…」

「ルナ、ルナ……」


 無意識にルナの名を連呼する。

 耳を舐められるって、どんな感じなんだろう…。ダメだ…体がルナに支配されてるようで、言うこと聞かないよ…。


「いくよ、アリア…」

「うん。きて…ルナ、ルナ……」


 なぜか密着してる感覚が…というか、そもそも体の感覚が殆どないけど、そんなことなんてどうでもいい。この幸せな空間に身を委ねることしか、今は考えられなかった。

 

 ――ルナ…ルナ…ルナ……。



 ………

 ……

 …



「ふへへ…りゅな、もっと~~………ん??」


 アホ面を晒しながら、そんなふにゃふにゃ声を涎を垂らしながら呟く私は、視界いっぱいに入り込む部屋の灯りに気づいて我に帰る。

 ここは…?あれ、私何して…。

 

「ゆ、め…??」


 急に感覚を取り戻したように動く体。どうやら、私は夢の中に入り浸っていたよう。

 あーもう!今、良いところだったのに~~!!

 夢というのは、なんでいつもいいところで終わるのだろうか。

 寝ぼけ眼で天井をぼーっと見つめていると、


「お目覚めですか?アリアさん」


 と、急に目の前からメイドさんに顔を覗き込まれ、私はびっくりして起き上がった。


「うわっ!!ふら――うっ!!」

「あいた!!」


 その拍子に、お互いのおでこがぶつかり合ってしまう。


「ご、ごめんね、フラン!!大丈夫!?」

「あはは…大丈夫ですよ、アリアさん。急に顔を覗き込んでしまった私が悪いので…」


 そこでようやく、自分がフランに膝枕されていたことに気づく。どうりで顔が近かったわけだ。

 部屋には私たち二人だけで、他には誰もいないようだが…。


「ええっと、私何を…」


 いまいち状況が掴めない私に、フランは色々あったことを説明してくれた。


「アリアさん、お風呂でのぼせてたってルナさんから聞きまして。すぐに部屋へ運ばせてもらったんです」

「そ、そうだったんだ…。なんか、迷惑かけちゃったみたいで、ほんとごめんね…」

「いえいえ、意識が回復して何よりですよ」


 私、のぼせてたんだ…。でも、お風呂に入った記憶がないんだよなぁ。

 体を洗ってる最中に、何かが起こったのは覚えてるんだけど、そこからが…。

 そんな当時の状況を思い出そうとする私の思考を遮るかのように、フランがニヤニヤしながら尋ねてきた。


「それはそうと、アリアさ~ん。眠っている時、ず~とルナさんの名前、呼び続けてましたよ」

「え…!?」

「ルナ~、ルナ~、そこ~って。一体、どんな夢を見てたんですか~?」

「い、いや…き、聞き間違いじゃない?」

「ふふふ、その言い訳は苦しいですよ。私はこの耳でちゃんと聞いてましたから。もしかして~、()()()()夢だったりします?」

「ふ、フラン!!」


 小声で意地悪に聞いてくるフランに、恥ずかしすぎて思わず声を荒げてしまう。図星だけども!!!

 肩頬をぷくっと膨らませて、ちょっと怒りっぽい顔を示したものの、フランには逆効果だ。


「んもう、アリアさんったら~。可愛いんですから~」

「だから、違うってば!むぅ…も、もう知らないから…」

「あ~、ごめんなさいごめんなさい!!調子に乗って、ちょっと言い過ぎました!!」


 あたふたしつつ、誠心誠意謝るフランを見て、私は自然と笑みを零す。


「ふふっ、そんなに謝らなくても」

「怒って、ないんですか…?」

「うん、ちょっと恥ずかしいこと言われたから、つい強く否定しちゃっただけだよ。でも、その…あんまりそういうことは言わないでね…」

「あ、アリアさ~~~ん!!!もう、なんて優しいんですか~~!!」

「ちょ…!??」


 私の優しさに感動したフランが、涙ぐみながら思いっきり抱きついてくる。

 女の子に怒るなんて、よっぽどじゃないとあり得ない。というか、怒ったとしてもすぐ許しちゃう。

 フランの大きな胸を押し当てられ、相変わらずドキッとしてしまう。そんな私に、彼女はある提案をしてきた。


「あの、アリアさん…」

「ん??」

「お詫びと言ってはなんですが、一つ私にご奉仕をさせてください」

「ご奉仕?」

「はい。お耳のお掃除をさせていただきたいなと思いまして…」


 み、耳かき…!?え、いいの!?

 なんて内心は正直に思ったものの、少しだけ遠慮がちに答える。


「え、でも…。お詫びなんて、大丈夫なのに」

「いえ、メイドたる者!お城のご案内と話し相手だけが取り柄ではないことを、しっかり証明せねばなりませんから!!」

「え…もしかして、今日それ以外の仕事はやってないの?」

「そうなんです!!」

「……」


 そんな堂々と言うもんじゃないと思う…。

 国王様が自由だと、メイドさんも同じく自由になるのだろう。好きにさせ過ぎな気もしないでもないけど…。

 

「ご、ごほん!とにかくですね、私たちメイドの一番のお仕事は、お客様に癒しを与えることです!ささっ、お膝にどうぞ、アリアさん!」

「そ、それじゃあ…し、失礼します」


 既に先ほど膝枕してもらってたから、改めて言うのもなんだけど、畏まってからフランの膝にゆっくりと頭を預ける。

 なんか、緊張するな…。憧れのメイドさんに、こうしてご奉仕してもらうなんて、前世の頃は夢物語だと思ってたし。

 妄想の時はあんなだけど、フランは可愛いから猶更だ。今になって、変にドキドキしてくる。

 タイツ越しに伝わる、もちもちしてて柔らかい太もも。私にとっては、どんな高級な枕よりも上質だ。


「ふふ、どうですか?私の膝枕は」

「うん。最高だよ…」

「それは良かったです。バスローブ一枚で、寒くはないですか?」

「大丈夫」


 フランが着せてくれたであろう、白いモコモコとしたバスローブ。とても丁寧に着付けてある。

 仕事してないって言ってたけど、私たちが気づかないうちに、陰で色々としてくれてたんだろうなぁ。


「では、こちらのお耳からしていきますね。痛かったら、すぐに言ってください」


 囁くように柔らかい声で、フランは言った。そのおかげか、心臓の鼓動が収まってきて、落ち着きを取り戻す。

 凄い…声だけで、もう癒されてるよ…。

 部屋に置いてあったフワフワ付の耳かき棒が、ゆっくりと耳に近づいてくる。耳たぶを優しく摘ままれ、先ずは耳の溝から攻められた。


「アリアさんのお耳、すっごく綺麗な形してますよね」

「そう、かな…。そ、その…結構溜まってる?」

「いえ、綺麗な方ですよ」

「あ…そういえば、ルナとユィリスはどこに行ったの?」

「お二人は、少しお城を見て回りたいと出て行かれましたよ。何か手がかりが見つかればと。心配いりません。私程ではないですが、腕っぷしのある衛兵さんが常に城中を見張ってますから。何かあれば、すぐに分かります」

「そっか…」


 まあ、それなら…。

 出来るだけ私の元を離れないでね!とドヤ顔で言ったものの、当の私がどうしようもないことで意識を失ってたら、全く話にならない。もっとしっかりしないと!

 なんて気合を入れ直したが、耳の内壁を丁寧に撫でるように掻かれ、一瞬にしてだらしない顔になる。

 耳かきって、こんなに気持ちいいんだ…。いや、多分フランが相当上手いんだと思う。


「気持ちいいですか?って、聞くまでもないみたいですね」

「うん…」

 

 目を細め、蕩けたような顔になる。自然と垂れてきてしまう涎を必死に止めるので精一杯だ。


「メイドというのは、誰かを贔屓してご奉仕することがあまりよく思われません。ですが…」

「……??」

「なんでしょうね。ただ純粋に、今だけは…アリアさんの専属メイドでありたいと思ってる自分がいます。ふふ、こんなことは初めてですよ」

「そ、そうなんだ…」

「おかしいですよね、出会って一日ほどしか経ってないのに…。ですが、なんだか引き込まれるんです。アリアさんの魅力や素敵な一面を見る度に」

「フラン…」

「それに、百合の妄想がいつも以上に広がりますし!!」

「結局それなのね…」

「あはは…すみません」


 専属のメイドか…。でも、フランは私の専属になるには勿体ない存在だよ。

 いつの間にか耳の中いっぱいに広がっていた梵天の心地よさで、思考が停止する。これはもう、悪魔的ご奉仕だ。


「では、反対側もやっていきますよ。はい、ごろーんしてください。ふふ…」


 反対側の耳を向けると、自然と顔はフランの方へ。私を見下ろす彼女の表情は、優しく、柔らかく、可愛いらしい…。

 それは、まさに私が憧れていたメイドさんの相好だった。

 こんな可愛い子に耳かきしてもらうなんて、贅沢が過ぎるのでは?私は、本当に幸せ者だ。


「なんだか、眠たくなってきたよ…」

「いいですよ、寝てしまっても。あ、でもこの後、国王様に会わなきゃいけないんでしたね」

「そうだった。あ~、このまま寝ちゃいたい…」

「寝たら、また恥ずかしい寝言言ってくれますかね」

「フラン~」

「ごめんなさい、つい…」


 心地よい耳かきを堪能しながら、眠らないよう必死に耐える。私が起きてられるように、その後もフランは会話を続けてくれた。

 最高の癒しだよ、フラン…。


 ――ただ純粋に、今だけは…アリアさんの専属メイドでありたいと思ってる自分がいます。

 

 もしメイドとしてじゃなく、()()()()()なら、私は…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ああ、古典的な親密な瞬間がたくさんあります。 喜んでアリア様の百合願望をもてなしてくれるメイドがいたらいいな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ