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第37話 水着選びと試着

「お兄ちゃん、どっちの水着がいい?」


 真央まおは俺に、2着の水着を見せる。


 1つ目は、黒のバンドゥビキニ──ブラの部分が三角形ではなく、横長の帯状となっているものだ。

 トップスやボトムスに、可愛らしいフリルが付いている。

 幼児体型の真央にはとても似合いそうだ。


 2つ目は、黒のワンピース水着。

 こちらも全体にフリルがあしらわれており、可愛らしい。

 1つ目のバンドゥビキニ同様、真央にはとても良く似合うと思う。


 ちなみに、どうして俺が水着の種類を知っているかというと、タグにそう書いてあったからだ。


 だが、兄として考えなければならないことが一つある。

 それは、露出度だ。

 あまり肌面積が多いと、ロリコンたちにナンパされる可能性は高くなる。


 真央は大事な妹だ。

 好奇の目に晒されることは、なるべく避けなければならない。


「ワンピースの方が似合うと思う」

「本当!? ありがとう、試着してくるね!」


 真央は試着室に引っ込む。

 その直後、俺は肩を叩かれた。


弓弦ゆづる、どちらが似合うと思いますか?」


 英理香えりかもまた、俺に2つの水着を見せる。


 1つ目は……白のマイクロビキニッ!?

 布面積が著しく狭いビキニで、乳首や「女の子の部分」といった恥部を最小限に隠すものだ。

 英理香は長身でスレンダーな体型をしておりお胸が小さいが、だからこそ乳房の膨らみが強調されそうな気がしてならない。


 2つ目は……白のタイサイドビキニ。

 トップスは三角形の形をしており、ボトムスは紐で留めるタイプのものだ。

 っていうか、紐っ!? 英理香、大胆すぎるだろ……!


 どちらを選んでもエロく見えるのは間違いない。

 どっちも見てみたい……と思ってしまう。

 だが恐らく、マイクロビキニはただ俺をからかうためだけに選んだと思われるので、除外するのが優しさだ。


 ならば俺は──


「え、えっと……タイサイドにしてくれ……」

「まあ、弓弦のエッチ。浜辺で遊んでいる時に、ボトムスの紐を解くのですね」

「そんなことしない!」

「冗談です。ありがとうございます……うふふ」


 俺は英理香に甘く囁かれ、ゾクッとした。

 そんな俺をよそに、彼女は悠々と試着室に入った。



◇ ◇ ◇



 試着室の前で待つこと数分……

 ついに、戦端はカーテンとともに開かられた。


「お兄ちゃん! どう? 似合ってる?」

「私のはどうですか? 弓弦」


 真央と英理香が、水着姿で現れる。

 女の子の水着姿を見るのは背徳的だが、しかしながらこちらには「頼まれた」という大義名分がある。

 いかに女性客や店員が俺に熱い視線を送っていたとしても、羞恥心など鋼の意志で抑え込める。


 真央は黒のワンピース水着を着用している。

 へそや腹部が布で隠れているが、むしろ妄想を掻き立てられる。


 一方の英理香は、白のタイサイドビキニだ。

 長くスラリとした脚が綺麗で、ボトムスの側面にある紐がエロい。


 ──思ったより、恥ずかしいな。


「二人ともよく似合ってるよ。真央は可愛いし、英理香は綺麗だ」

「ありがとう!」

「ありがとうございます──それで、私と真央のどちらが弓弦の好みですか?」


 英理香はいたずらっぽい笑みを浮かべている。

 まったく、とても答えにくい質問だ。


 英理香は赤の他人だし、前世では本妻かつ最愛の人だったので、エロい目で見ても問題ない。

 だが真央は血の繋がった実の妹で、エロい目では見れない。


 ぶっちゃけて言うとどちらも好みだが、答えは決まっている。


「私だよね!? お兄ちゃん!」

「ごめん、真央。英理香の方が好みだ……」

「ありがとうございます……うふふ」

「むー! ──前世の私だったら、もうちょっと高身長で綺麗だったんだけどな……」


 真央は少しうつむき加減になり、落ち込んでいる様子だ。

 確かに、夢で見た彼女の前世──魔王は長身スレンダーだったな。


 英理香も前世のことを思い出したのか、真央をじっと見つめている。

 

「大丈夫だ、真央。今のままのほうが、俺は好きだ」

「本当……?」

「本当だ。実は俺、英理香の方が好みだって言ったけど、本当はすごく迷ったんだ」

「ありがとう、お兄ちゃん……」


 真央は顔を赤らめ、目を潤ませている。

 その後、真央と英理香たちは試着室に戻っていった。



◇ ◇ ◇



 水着購入後、俺たちはランチタイムを楽しんだ。

 その後しばらく雑談をしたり、ウィンドウショッピングをしたりしていた。


 そして昼下がり……


「弓弦、次はどちらに行きましょうか?」

「ゲームセンターに行こう」

「いいですね、行きましょう!」

「わーい! 楽しみ!」


 ──ここからは、俺のターンだ。

 先程までは英理香や真央に合わせてきたが、いいところを見せておかないとな。


 俺たちはゲームセンター、いや『戦場』に足を踏み入れる。

 戦場にはすでに猛者共が集っており、銃声やエンジン音が鳴り響いている。

 だが、その戦場ではダンスミュージックが流れており、道化共が舞台の上で踊っている。


 ──えっと……要するに、FPSとかレースゲームとか音ゲーとかがある、ということだ。

 クレーンゲームやメダルゲームもあるぞ。


 俺は英理香たちを引き連れ、レースゲームのコーナーへ向かう。

 そしてその中でも異彩を放つ筐体に座る。


 このゲームの特徴は、市販車が収録されているという点だ。

 日産・GT-Rのようなスポーツカー、トヨタ・ランドクルーザーのようなSUV、そしてマツダ・デミオのようなコンパクトカーまで取り揃えてある。

 ぶっちゃけこんなので採算がとれるのかどうかは不明だが、多様な車好きを網羅できるラインナップには非常に好感が持てる。


「英理香と真央もどうだ?」

「私、レースゲームは初めてです。楽しみです!」

「うーん、いつもお兄ちゃんに負けちゃうんだよね……でも、英理香ちゃんには絶対に負けないよ……!」


 英理香は目を輝かせながら、真央は闘志を燃やしながら。

 筐体に座ってシートポジションを整えた。


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