表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/49

第19話 恋のライバルたちの集結

「今日はこれでホームルームは終わります。さようなら」

「さようなら!」


 翌日の月曜日……

 怒涛のテスト一週間前が幕を開けた。

 学校のクラスメイトの反応は様々で、余裕ぶっている者・焦っている者・冷静な者の三通りだ


 そして時は放課後……

 家に帰ろうと席から立ち上がったその時、ポケットに入れてあるスマホが小刻みに振動した。


《今日も勉強会するわよ。今からあんたの教室に行くわ。真央まおも誘ってあるから》


 なんと、由佳ゆかからのメッセージだった。

 嬉しいような恥ずかしいような、そんな気がした。


 っていうか、昨日の段階で約束してくれても良かったじゃないか……


「──弓弦ゆづる、どうしましたか?」


 後ろから英理香えりかの声が聞こえてきた。


 ──まあ、英理香は勉強会に誘わなくてもいいだろう。

 彼女は俺に次いで、成績優秀だからだ。


「これから由佳と真央の三人で勉強会をすることになった。だから済まないけど、今日は一人で帰ってくれないか?」

「いえ、それなら私も参加します。人に教えるのも、自分の理解力向上に繋がりますから」

「そうか、ならよろしく頼む」


 俺と英理香はここで待つことにした。


 ちなみにこの時期は教室が解放されており、生徒が自由に使うことが可能だ。

 図書室は私語禁止だし、カフェやファミレスだと金がかかるので、とてもありがたい。


「──弓弦先輩! はあっ……はあっ……」


 ふと、教室に俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

 入り口の方を見やると、息を切らしている様子の後輩・茉莉也まりやがいた。


「弓弦って誰だっけ?」

「さあ?」

江戸川えどがわくんの下の名前が『弓弦』だった気がする」

「でもあいつが女の子にモテるとは思わないけど……」

「しかもあの子、めちゃくちゃ可愛いじゃん! 絶対江戸川とは関係ないだろ! 頼む、そうであってくれ……!」


 クラスメイトたちが好き放題言ってくれているが、まあ事実なので俺は怒らない。


 茉莉也が走ってここまで来た理由については疑問だが、俺は彼女に近づく。

 見たところ少し汗をかいており、ジャスミンのような甘い香りが強く感じられた。


「こんにちは、茉莉也。どうしたんだ?」

「あ、あのっ……勉強を教えてほしいんです!」

「そうなのか。でもそれならスマホで連絡してくれれば、わざわざ走ってこなくても──あ、そう言えば連絡先交換してなかったな」


 茉莉也と出会った日は、色々ありすぎた。

 放課後に話し込みすぎて弓道部に遅刻しそうになったり、英理香が乱入してきたり……

 友だちになったはいいが、連絡先を交換し忘れていたのだ。


 とりあえず俺と茉莉也はQRコードを使う。

 これで、メッセージアプリ上の「友達」になれるはずだ。


「こんにちは、茉莉也」

「あっ……こ、こんにちは……」


 俺たちが連絡先を交換している間、英理香は笑顔で挨拶する。

 が、茉莉也は少し怯えているような気がした。


 まあ無理もない。


 英理香は校内一の美人だし、男子からの告白を何度も断ってきた《難攻不落》の優等生だ。

 それに彼女は茉莉也の上級生である。


 萎縮しないほうがおかしい。


「茉莉也は何の科目が得意なのですか?」

「えと、英語です……でも理系が全然で……」

「私も優しく教えますから、わからないところがあれば何でも聞いてくださいね」

「あ、ありがとうございますっ……!」


 英理香はとても慈悲深い目をしていた。

 てっきり「私から弓弦を取らないでください!」と言うものかと思っていたが……


 って、何考えてるんだ、俺……

 きっと疲れてるんだな。


「弓弦、来たわよ!」


 ふと、教室の外から声が聞こえてきたので見てみる。

 するとそこには由佳と真央が二人して立っていた。


 弓道部員である茉莉也は真っ先に、先輩である由佳に「こんにちは」と挨拶をする。

 すると由佳は「あなたも弓弦に勉強を教えてもらいに来たの? 奇遇ね」と返した。


 クラスメイトたちは由佳と真央を見て、「うおっ……すっげえ美人じゃん!」「あの1年もちっちゃくて可愛いな……」「また江戸川くんの女友達? 随分とモテるのね」と色めき立っていた。


「お兄ちゃん──って、あれ!? わ〜、相羽あいばさんだ〜!」

「え、ええっ!? 江戸川さん……だよね!?」


 真央は相羽茉莉也の両手を掴み、嬉しそうにはしゃいでいた。

 確かに同じ1年だから、面識があるのも不思議ではないが……


 茉莉也は突然の出来事に、対応しきれていないようだ。


「えと……江戸川さんはどうしてここにいるの?」

「ここは俺の教室だからな」

「むー……弓弦先輩に言ったんじゃないんです……って、そういえば弓弦先輩の名字も江戸川だよね……あっ、もしかして!?」

「気づいた? 私達、実は兄妹なんだよ。えへへ……」

「え、ええええええっ!?」


 茉莉也は真央の言葉に、大声をあげて驚いてみせた。

 その声を聞いて、他のクラスメイトたちも「なんだなんだ?」とこっちを見始める。


「うわあ……なんで気づかなかったんだろう……もし気づいてたら、弓弦先輩ともっと早く会えたかもしれないのに……」

「相羽さん、お兄ちゃんが好きなの?」

「う、ううん! そ、そんなこと……」


 茉莉也は顔を真っ赤にしていた。

 それを見て、真央は妖しげな表情をして茉莉也に迫ってくる。


「ふ〜ん……だったら私と同じだね。友達になろうよ、相羽さん──じゃなかった、茉莉也ちゃん」

「あっ……わたしの名前、覚えててくれてたんだ……うれしい……」

「どうする?」

「よ、よろしくね、江戸川さんっ……!」

「江戸川じゃなくって『真央』って呼んで? お兄ちゃんと紛らわしいし、それに茉莉也ちゃんとは仲良くしたいから」

「うん、真央ちゃん! えへへ……」


 真央と茉莉也はとても雰囲気が良さそうだ。

 真央は誰にでも人当たりがよく、また茉莉也も遠慮しがちであると同時に礼儀正しい。

 二人は全然性格が違うが、上手くやっていけそうな気がする。


「こ、こほん! あんたたち、早速だけど勉強会するわよ!」

「はいっ!」


 由佳の掛け声で、2年1組の教室で勉強会が始まった。

 俺・英理香・真央・由佳・茉莉也の五人で。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ