『神と妖怪とハロウィン』
俺は皆に先日幼児化した九尾、キューちゃんを見掛けたことを話すと、他の皆もそれぞれあの日戦った奴と会ったらしい。
「でもあれは笑えたわね。あの生意気な酒呑がちんちくりんな子供になってたんだから」
「……烏天狗もちっちゃくなってた」
「何故か雪女ちゃんは泣き虫になってた」
「精神まで幼児化しちまったのか? そりゃ大変だな」
そう言って俺はその妖怪達を幼児化させた張本人であるリンを横目で見た。
リンは静かに熱いお茶を飲んでいた。睨み続けると、流石に堪えられなかったのか、ようやくこちらを振り向く。
「私は悪いことをしたつもりはないですよ。事実悪いことをしたのは彼女達ですから」
確かにリンの言うことにも一理ある。奴等はリンの不在を狙い、京都を転覆させようと画策したのだ。それは何があっても許されることではない。
結局はリンが一人で全てを解決してしまい、妖怪達の力を封印したことにより幼児化してしまったのだが、今は置いておこう。
だがそう考えるとリンに責任を負わせるのは筋違いだった。
「ま、確かに俺達が気にかけてやる義理はないな」
「それに、あれで結構しぶといからほっといても大丈夫でしょ」
「……妖怪だし」
「トラちゃんよりちびっこになっちゃったけどね」
俺達はその日はこの話をこれで終わりにした。
ちなみに俺達、というのは、俺、スズメ、トラ、リューの四人のことだ。
つまり、リンはこの話をここで終わらせてはいなかった。
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「り、リン……。今日は一体どういう……?」
「はい。何だかこの子達、行くあてもなくそこら辺をふらついていたので、どうせなら皆と仲良くなっちゃえばいいんじゃないかと思いまして。連れてきちゃいました」
そう笑顔で言うリンの足元には、今にも泣き出しそうなくらいに震えている四人の子供の妖怪の姿があった。
どうやらあの説教、という名の制裁を思い出しているようだった。
「仲良くって言われてもねぇ……」
スズメは卓袱台に頬杖を突きながら四人を見回す。
「妾だって不本意じゃ。きりんに無理矢理連れてこられただけなのじゃ」
「きりん。鬼以上に鬼みたいな女だぜ、こいつは」
「や、やめてよ酒呑っ。また怒られるよぉ~」
「雪女よ。お主は本当にキャラが崩壊してしまっているな」
キューちゃん。シューくん。ユーちゃん。カーくんの四人は口々に話し始め、一気に騒がしくなる。
どこぞの幼稚園の様相を呈してきたな、と思いながら俺はリンを見る。
子供大好きなリンはその四人の様子を楽しそうに眺めていた。おいおい。
「リン。そんな恍惚な笑みを浮かべてないで、そろそろ今回の趣旨を説明してくれ」
「はっ!す、すみません。つい……。で、今回の趣旨ですか? そうですね……。そうだ。ハロウィンやりましょう」
さも名案だと言わんばかりに笑顔で手を叩くリンに、俺達はツッコミを入れるのも忘れていた。
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気付くと天井から「第一回 神と妖怪のハロウィンパーリィー」と書かれた横断幕が吊るされ、部屋もハロウィン仕様と様変わりしていた。
「リン。何でいきなりこんなことを?」
「えっ、と。なんだか楽しそうだなぁと思ったので」
「なら、よし!」
リン以外の全員から「おいっ!?」とツッコまれたが、この際俺はとことんリンに乗っかることにした。
長いものに巻かれておく方が得策だし。
「でも、ハロウィンって西洋のイベントよね? 仮にもあたし達は京都の守護神でしょ。いいのそこら辺のこと」
「まあ、細かいことは気にするなってことで。じゃ早速コスプレしなくちゃな」
「仮装でしょ。ま、でもおんなじかな」
と、言うわけで俺達は早速着替えることに──
「待つのじゃ! 妾達は別に『はろうぃん』とやらを楽しむつもりはないぞっ」
「そうだぜ! てめえらなんかと一緒にいられるかっ。俺様は帰る!」
「うむ。拙者も同じ思いである」
「(こくこくこくっ)」
しかし、ちび妖怪四人組は畏れ多くもリンに歯向かってきた。なんか一人死亡フラグ建てなかったか?
「どうしてですかキューちゃん。ハロウィンは仮装をしてお菓子を貰う、子供にとってはとても楽しい行事ですよ。それにキューちゃん達は既にコスプレしているみたいな感じじゃないですか。やりましょうよハロウィン」
「どうしてかって……。それは──妾達が子供ではないからじゃ!!」
あぁ……うん。確かにそうだな。ここにいる奴は全員子供なんて言える歳ではない。
「でも見た目は子供じゃないですか」
「頭脳は大人じゃ!!」
「パクんなパクんな。どこぞの名探偵かお前は」
俺はリンに噛みつこうとするキューちゃんの頭を押さえる。じたばた動いて俺の手を振りほどこうとしているが、所詮子供の体躯。俺の力には遠く及ばず、やがて力尽きた。
「はぁはぁ……。くそぅ……。封印さえされていなければっ」
「諦めな。リン様に逆らったら今度は赤ん坊にされるかもよ?」
「え?」
本気で怯えたような声音で俺を見上げるキューちゃんは目に涙を溜めていた。流石に可哀想なので頭を撫でて励ます。
「大丈夫だって。いくらリンでもこれ以上の封印は──」
「そうか。確かにそうですよね。私が母親として赤ん坊からちゃんと育てていけば、ゆくゆくはしっかりとした妖怪に育つかも。はっ! ならお父さんは──」
「はろうぃん大賛成じゃ! やろう! 今すぐ! のう? お主ら!」
リンの不穏な台詞に恐怖を感じたのか、キューちゃん達は手のひらを返したかのようにハロウィンに乗り気になった。
実のところ、俺はこの哀れな妖怪達に軽く同情していた。そしてリンは何故か少し不服そうだった。
本当にやる気だったのか……? ただの冗談だと思いたい。
~~~
ハロウィン。もともとは秋の収穫を祝う収穫祭で、悪霊などを追い出す宗教的な意味合いもある行事であったが、今ではコスプレしてお菓子をもらってまわるというお楽しみイベントとして定着している。
だから俺達も全員それぞれコスプレをすることにした。
そして、しばらくしてから。
「……てか、俺のコスプレ衣装、手抜きしすぎたかね」
俺は一人、皆の着替えを待っていた。
何故俺だけこんなに早いのかというと。
「うわっ! 誰だてめえ!?」
「俺だよシューくん」
「シューくん言うなっ! って、その声、げんぶか? 誰だか全然わかんなかったぜ」
「はは……そりゃそうだろうな」
なんせ俺は、体全体を白い布で覆い隠しているからな。
俺のしたコスプレは、所謂テンプレな幽霊というやつだ。白い布を頭から被り、目の部分だけが黒く塗られているだけの、たったそれだけのコスプレだ。
着替えにかかった時間、約十秒。
それに引き替え、今部屋に入ってきたシューくんはというと。
「それは……吸血鬼か。確かに鬼のお前にはぴったりだな」
「うるせえな! 食い殺すぞ!」
「血を吸えよ吸血鬼」
黒いマントに貴族のような服装、鋭く伸びた歯に、よく見ると何故か両方の目の色が違い、赤と黄色のカラーコンタクトをしていた。
なんだか、とても中二臭いコスプレが出てきたもんだな。見た目は中二より幼いが。
「どうせやるなら格好つけねえとな!」
「あぁ、うん。格好良い格好良い」
「バカにしてんのかコラァ!」
「そう騒ぐな酒呑。弱く見えるぞ」
「おっ、カーくん。それは何のコスプレだ?」
「曰く、堕天使なのだそうだ。拙者の黒い羽を見て決められた……」
そう言うカーくんは羽をショボンと竦め、持っていた鎌をカタンッと床に置いた。
見ると頭の上には黒いリングが浮かんでいた。どうなっているのかとよく見てみると、針金で留めてあった。
「男衆はこれで全員だな。あとは女衆だが。なぁ、どんなコスプレが出てくる思う?」
「興味ねえ」
「右に同じく」
「お前らなぁ……」
少しは楽しめよ。そう言おうと思ったその時。
「トリック・オア・トリート!!」
「……お前が言うな。お前はどっちかっていうとお菓子あげる側だからな」
「おっ? その声、タケシだな。何それ、ちゃっちいの~ププ~」
「うるへぇ」
部屋にやってきたのはリューだ。そのリューの姿を見たチビ二人は一斉にリューから目線を逸らす。
「どうした二人とも」
「ど、どうしたって?! 別に何もねえよ!?」
「せせせ、拙者も別に何もないでござる?!」
「いやいや……。何でそんな口ごもる? あぁ、リュー。お前のその格好のせいだな」
「ぼくのせい? 何で?」
「そりゃお前、そんな大胆な格好、子供には刺激的過ぎるんだろ」
「あっ、なるほど」
リューは自分の姿を見て納得する。今、リューは人魚のコスプレをしていた。
下半身を人魚のヒレのような青い服(?)を着ており、上半身は胸に貝殻の水着を着ているだけの状態だった。
そして、宙をまるで泳いでいるかのように飛んでいた。
「空飛ぶ人魚か。面白いな」
「でしょ? ぼくもそう思う」
元来イベント好きのリューは始めこそリンに圧倒されていたが、ハロウィンを大いに楽しんでいるようであった。
そんな俺達を見てシューくんがぼそっと言った。
「てか、何でげんぶはそこまで平然としてられるんだよ」
「お? それはぼくも気になるぞぉ? ねえ? 何でなのタケシぃ~」
「何で、って。見ないで後悔するより見て後悔する方がいいからな! あとでスズメあたりから制裁受ける気がするが、それに屈して目の前のパラダイスを見逃すわけにはいかないのだよ!」
「最低の答えが返ってきたでござるな」
カーくんが心を抉るようなツッコミを入れてきたがなんとか堪えることが出来た。
「な、なはははは。照れるなぁ……」
リューは照れ笑いを浮かべながら頬を掻く。
「そう言えば、他の奴等はまだなのか?」
「ん~。もうそろそろじゃないかな。期待してていいんじゃない? ぼくから一つ言えるとしたら、リンちゃんを仲間にすると何をしても許される、ってことかな。って言ってる側から、来たみたいだよ」
リューが指差した先には、巨大なカボチャを頭に被ったトラの姿があった。
「おお。ジャック・オー・ランタンか。ハロウィンの主役みたいな奴じゃん。良かったなトラ」
「……でも、これ、重い」
「トラちゃんの頭の十倍くらいの大きさがあるからね」
トラはカボチャの口にあたる部分から顔を覗かせていたが、その顔は険しかった。
頭、そこまで重いのか。大変だな。
俺なんて布一枚だけだからその気持ちはわからんが。
そんなトラは頭を片手で持ち上げながら、もう片方の手を伸ばす。
「……お菓子」
「ん? お菓子欲しいのか? まあ、トラにならやってもいいか。ほれ」
「……ありがと」
「えぇ~! ずる~い!」
リューがぶつくさ文句を言っていたが、気にせず俺はトラにさっき待っている間に作ったカボチャのお菓子を手渡す。
「ほれ、お前らにも」
「けっ! 仕方ねえからもらえるもんはもらってやらぁ」
「かたじけない」
ついでなので先に来ていた二人にもお菓子を渡す。シューくんは素直じゃなかったが、カーくんは礼儀正しかった。
「ちぇ~。ぼく、ちゃんとトリック・オア・トリートって言ったのに~。イタズラするぞこんにゃろ~」
「わあったよ。ほら、やるよ」
「ひゃっほ~。ありがと~。さすがタケシだね~」
この中でお菓子をもらって一番テンションが高くなったのはリューだった。何故か恥ずかしいわ、俺……。
そんな俺達の元にまた一人やって来た。
「うっわ!! 誰?! 怖いっ!」
「……ワタシ」
「雪女か? 何だそのかっこは」
「貞子、だって。酒呑は吸血鬼? カッコいいね」
「お前はキモいけどな」
「えええっ!? うぅ、ひどいぃ……」
ユーちゃんは床にまで届くくらい長く黒い髪で顔を覆い隠しているため、その泣き声が余計に怖かった。泣くチビ貞子とは、また新しい。いやいや、それより。
「「あぁ~あ、シューくんが泣~かした~」」
「……泣かした」
「泣かしましたな」
「な、何だよ!? 俺が悪いってのか?」
いや、誰がどう見てもお前が悪いだろ。と目で訴える俺達。
シューくんはその視線に耐えられなくなったのか、ユーちゃんに近付く。
「もう泣き止めよお前」
「シューくん怒ってる?」
「シューくん言うなっての!」
「うわぁぁん! やっぱり怒ってるぅ~!」
「怒ってねえよ! あぁもう! 幼児化してからのお前めんどくせえなぁぁあ!」
「うわぁぁあああん! シューくんに嫌われたぁぁぁ!!」
「ちっげえだろおおおがぁぁあ!」
……なんというか、本当に子供みたいだ。幼児化の影響のせいか、ユーちゃんは大人モードの時には見せなかった感情を表に出していた。
俺はこっそりカーくんに確認を取った。
「カーくん。もしかしてユーちゃんって……」
「気付いたか。そうだ。雪女は酒呑に惚れとる」
やっぱりな。なんか前は仕えてあげてるみたいなこと言ってたけど、本当の理由は違ったんだな。
「ちなみにお前はキューちゃんに惚れてたりするのか?」
「我が主として敬愛はしているが、恋愛感情というものではないな」
「か、堅苦しいな、おい」
本当に悪の妖怪なのか? と言いたくなるカーくんと共に俺は生暖かい視線で二人を見守る。
当の本人であるシューくんはユーちゃんの気持ちには一切気付いていないみたいだ。
泣き止まないユーちゃんをどうにかしようと頭を捻らせていた。
「あ、そうだ。雪女。これやるから泣き止め!」
「な、なに、これ……?」
あっ、それ俺があげたお菓子じゃねえかよ。
「菓子だ。味は保証しねえが、これやるから泣き止め。な?」
ほっとけ。ちゃんと味見もしたわ。ちゃんと旨いから。
そんな俺の心情はさておき、ユーちゃんはようやく泣き止んだ。
「あり、がと」
「あ、あぁ。もう泣くなよ」
どうにかこうにか、落ち着いたようだ。
そのタイミングを見計らっていたのか、リンが部屋に入ってきた。
「仲直りできてよかったですねユーちゃん」
「リン。見てたのかよ」
「はい。ちょっとタイミング的に入り辛かったので外で」
そういうリンは魔女のコスプレをしていた。手にはいかにもな箒を持っている。胸元もいつもより大胆に開いていて色っぽい。
「ど、どうですか? 似合ってます?」
「あぁ、完璧にな。クオリティも高いし、俺とは大違いだ」
「タケシさんも格好良いですよ」
どこがだよ。布一枚だけだっての。むしろバカにされたのか今?
「まあ、いいか。それよりあとの二人は?」
「あれ? キューちゃん何してるんですか~?」
リンが部屋を出てすぐに、キューちゃんが喚き声が聞こえてきた。
「やめんかっ! こんな格好で皆の前に出られるか!」
「大丈夫です。可愛いですって」
「バカにされるだけじゃ!」
「わがまま言わずに行きますよ~」
「抱き抱えるでないわ~!」
その声はだんだん大きくなり、部屋の扉が開かれそこにはキューちゃんを抱えるリンがいた。
そして、キューちゃんはというと。
「……いっそ殺せ」
目が死んでいた。キューちゃんは頭に猫耳を付け、猫のしっぽも付いていた。布地は少なく、顔は羞恥で赤くなっている。
俺は、笑いそうになるのを懸命に堪えていたが、やはり駄目だった。
「だ~っはっはっは! 何だよそれ! 既に狐耳と狐しっぽがあるのに、さらに猫耳と猫のしっぽ付けるとか、何の動物なんだよ!」
そう。キューちゃんは狐の妖怪。頭には最初から狐耳が生えており、腰辺りにもふさふさの狐しっぽが生えている。
なのに、その上黒い猫耳猫しっぽを付けているせいで、かなり珍妙な姿になっていた。
「き~り~ん~! やはり笑われたではないか!」
「あ、あはは……。可愛いので大丈夫ですって」
「何の励ましにもなっとらんわ!!」
「……でも可愛い」
「そうそう。可愛いよキューちゃん」
「うん。可愛いよ九尾」
「似合っておるぞ、主」
「ぎゃははは! バカみてえ!」
「ふんっ!」
「いっでぇ!?」
シューくんだけバカにしたのでキューちゃんに飛び蹴りされていた。
「あの狐猫は置いといて。そんで、スズメは?」
「スズメたんは外にいるよ。たぶん中に入れないんだね」
「入れない?」
どれだけ巨大なコスプレしたんだよ。
俺はリューに言われて部屋を出てみる。
「あだっ。なんだ? 壁?」
部屋を出てすぐに何かぶつかり、額を押さえつつ上を見る。そこには──。
「死ね」
壁、もとい壁の着ぐるみを着て顔だけ出ている状態のスズメが立っていた。
いやこのデカさだとおそらく自分の足で立ってすらいない。一体何のコスプレなんだこれ。
「ぬりかべだよタケシ。ぷふっ!」
部屋の外から顔だけ出したリューが笑いを堪えながら答えを教えてくれた。
「あぁ、ぬりかべか……。あ、壁──」
「殺す!」
「ってぇ!? 危ないだろ! いきなり火ぃ飛ばすな!」
「何で、何であたしがこんな目に会わないといけないのよ!! 誰が壁よ! 誰の何が壁だってのよ!!」
「え? 胸」
思わず、本当に思わず口に出してしまった。
ぷつん、と何かが切れる音がした。
「ぎゃあああっ!? あいだっ!?」
「シューくん。どこから飛んできたし?」
「いってぇな九尾! つか、この壁も固すぎだろ! なんだよこれ?」
「スズメだ。上見てみ?」
「ん? ……ぶっ! ぶわはははははっ! すざくかよっ。固ってえ壁だと思ったがまさにその通りだな、あははははは、腹いてて!」
ここまで自分の状況を考えずに思ったことをぶちまけられるのもある意味才能かもしれない。
「酒呑! 逃がさぬぞ! ぬ? げんぶ。貴様もさっき笑いおったな。二人まとめて狐火の餌食にしてやるわ!」
「ちょうどいいじゃない九尾。あたしもそいつらを焼き尽くす必要が出てきたのよ。手伝うわ」
「すざく……。ふむ、よかろう。今だけは協定を結んでやろう」
共通の敵を得たスズメとキューちゃんは手を組んだ。炎の神と炎の妖怪。嫌な予感しかしない。
「やばっ……。逃げるぞシューくん!」
「その呼び方はやめろ! だが、その提案には乗る! ただでさえ火は苦手だってのに、あのキモいキツネコと哀れな断崖絶壁に手を組まれちゃ身がもたねえ!」
「バッカ!! お前真性のバカだろ!! 何で火に油注いだよ?! くっそ! 完全に目がやばい光を宿してる! 走るぞこんちくしょう! うおおおおおおおっ!!」
~~~
「やれやれ。そろそろまた旅に出ようと思って挨拶に来てみれば、また遊んでおるのか。それに妖怪共と一緒になって」
「いいじゃないですかゲンさん。ゲンさんも何かコスプレしましょうよ」
「遠慮しておく。儂に似合う服なぞないだろう」
「ぼくが作ろっか?」
「ロクなことにならん気がするからよい。それにしても、お主らのコスプレのクオリティは高いの。ゾンビに、ミイラか?」
ゲンさんの質問に、しかし俺は答えない。否、答えられないでいた。
俺は身体中にやけどを負い、そのまま放置されたせいでゲンさんの言う通りまるでゾンビみたいになっていた。無駄にクオリティが高くなった。嬉しくはなかった。
シューくんも俺と同じくらいのダメージを受けていたが、ユーちゃんが包帯をぐるぐる巻きにしていた。だからミイラだと思われたのだった。
そして俺達をボロボロにしたスズメとキューちゃんは既に着替えていた。
キューちゃんは巫女服を。
スズメは侍のような格好をしていた。そのスズメはまだ怒りが収まらないのかイライラとしていた。
「はぁ……。まだ燃やし足りないわ。もう一撃くらい入れてやろうかしら」
「……そろそろ、許したら? もともとは、リューが悪い」
「いやいや、ぼくはリンちゃんを抱き込んでスズメたんにぬりかべを強く推しただけだから~」
「せいりゅう、貴様卑怯極まりないな」
「きりんに言われたら、誰も逆らえないよ」
「ええっ?! そ、そんなことないですよ。ねえ?」
リンがみんなに問いかけたが、誰も何も言わなかった。
「ふん。リーダーが聞いて呆れるのう。それに比べて妾は配下共からは慕われておるぞ。のう?」
「「「え? あ、あぁ。うん」」」
「……余計に惨めになるから遅れて同意などするでないわ……」
どちらのリーダーも大概だった。
そのあともハロウィンパーリィーは続いた。何だかんだで妖怪四人も楽しんでいたようでよかった。
俺は、ずっとズタボロの状態で放置されっぱなしで全然楽しめなかったのだけれど。
せめて俺も包帯くらい巻いてほしかったと思うハッピーではないハロウィンパーリィーだった。




