第29話 おいでませ旭野家
……ふぅ。
第29話 おいでませ旭野家
―旭野朽―
3者面談。
そんな言葉が脳裏に過る。
しかし、相対するのは教師ではない。
一人の女の子。
そう、宮本明日香である。
彼女は群れから引きはがされた野生の兎のように、プルプルと震えている。
かわいい。
ツンデレで愛らしい彼女のかわいさが、倍プッシュだ。
「宮本明日香さん」
「ひゃ、ひゃい!」
緊張のあまり声が上ずり、噛み噛みの彼女に問いかけたのは母さんだ。
「あなたの境遇や今回の事件のあらましは聞きました。」
「……はい」
「あなたの過去には同情しますし、不憫に思います」
「……」
「しかし、うちの朽が今回の件でとても危ない橋を渡ったことは看過できません」
「母さん……」
唇を強く結ぶ明日香。
彼女を攻めることはお門違いだ。
助けを求められたのは事実だが、彼女にその選択肢を選ばせたのはほかでもない俺である。
彼女が責められるのは納得が行かない。
そう思って口を開きかけると
「責任の所在がどうあれ、あなたは一人の女性として責任を取らねばなりません」
「……はい」
「どう取るのですか?」
「……朽君と」
「朽君と結婚を前提にお付き合いしますっ!」
ジーザス!
―宮本明日香―
彼の母親に会ったとき、一目見てわかった。
彼女は怒っていない。
怒ってはいないが、私という存在を値踏みしていると。
旭野雅。
旭野家次女にして、若かりし頃から様々な伝説を打ち立てている。
彼女の逸話は世代的に離れた私たちでさえよく聞く話だ。
豪気にして豪胆。
名家の出身とは思えないほどのその奔放振りから、旭野本家ですら手を焼いていたという。
そんな人が今私の目の前で、私を直視してる。
真っすぐにこちらを見定める目を私は、真っすぐに見返した。
いくつかの問答の後にどう責任を取るのかと問われた。
私はまだ何の力もない学生だ。
彼女のお眼鏡には到底適わない。
それでも、思いだけは……想いだけは、負けてはならない。
おなかに強く力を入れて宣言した。
「朽君と結婚を前提にお付き合いしますっ!」
そう告げると彼女は満足そうに笑みを浮かべて頷いた。
隣をちらりと見ると朽が信じられないものを見る様にこちらを見ていた。
ふふん!してやったわ。
こいつがこんなアホ面晒すなんて……ってちょっと待って。
私は今、本人の前でとんでもなく恥ずかしい宣言をしたのではないだろうか。
これでは、そうあの女……日野美波を笑えないじゃない!
「これからの事は二人で話すといいでしょう。私と姫子さんは少し出ますので……健全な話し合いをしてくださいね?」
「「……はい」」
私と朽は顔を真っ赤に染めながら俯き返事をした。
―旭野朽―
母親の前で交際宣言に面食らっていると明日香がポツリと呟いた。
「い、一度しか言わないからしっかり聞いておきなさい」
「うん」
「私は、あなたに救われた」
「どうしようもない暗闇から引き揚げてくれた」
「この恩は多分一生かけても返しきれない」
「だから一生かけてあなたの側で返すと決めたの」
「あなたが……朽がそれを許してくれるなら」
「私と結婚を前提としたお付き合いをしてください」
彼女が正座のまま少しだけ頭を下げる。
そんな彼女の頭を優しく撫でて強く胸元に引き寄せた。
「ありがとう。嬉しいよ明日香」
「そ、それはOKってことよね?」
「そりゃ……まぁOKだよ」
抱き合った体制からどちらともなく、コロンと横になる。
見つめ合い、それでもゆっくりとした時間の流れの中で、僕らはキスをした。
そこからの流れは大体わかるだろう。
部屋に移動して若い情欲に身を委ねるんだよぉおぉぉぉおお!!!
3時間ほどして家に帰ってきた母が2,3度鼻をスンスンと鳴らすと彼女は一言。
「想定はしてましたが、少々健全すぎる話し合いだったようですね……」
その一言に俺と明日香は本気で顔を赤らめた。
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