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そろそろ、寝ないと体力が……

ウォレスたちは街道付近の疎らな木々の生えた林で一夜を過ごしていたようで、俺たちがその辺りまで辿り着いた時に声を掛けられて合流することになった。


「しかし、大所帯になったものだね」


「ワフ、ワォアオォン ガルォアルァ ヴァルファウォアン

『あぁ、捕縛した連中も含めればかなり人数が増えたからな』」


ということで、食糧事情が問題だ。一応、ここからセルクラムまで約40㎞、馬を休ませながら無理の無い道程を考えれば……


(一日半といったところか…… 馬の気分と調子次第だが、到着は明日の午後だな)


乗ってきた馬車の中に俺たち五匹とウォレス、城付きの御者二名の食料三日分が積んである。魔導騎士隊の副長グレンが用意してくれたもので、硬めのパンに干し肉の塊、木の実の類が複数の麻袋に詰められている。


後は奴隷商たちの荷物からランサーたち、徒歩組が多少の食料を頂いて持ってきたから…… 大体、食事毎に中型の獲物を二匹狩れば何とかなりそうだな。


手早く考えを纏め終えれば、疲労と少しの眠気を感じる。俺がそう感じるという事は他の仲間たちも同様に疲れていると見るべきだ……


(昨日の午後に目覚めてから日を跨いで十数時間、活動時間の限界か…… 狩りは一眠りしてからだな)


「聖獣様、言われた通り、ここまで馬車を御してきた商人たちを縛りました」

「ワォアン『ありがとう』」


ここで一度、昼過ぎまで休息を入れる予定だったので、御者台の後ろから監視し、二頭立ての馬を御させていた商人らをまた捕縛してもらったのだ。


「ウォアフ、ガゥアクァン ガルォオオウ?

『ウォレス、そっちの休息は取れているのか?』」


「勿論、交代で休んでいるよ。君たちも疲れているだろうし、僕らが動けるようにね」


なら、俺たちが休息を取っている間に馬の世話を城付きの御者二人にしてもらおう。見張りの一人はウォレスとして…… 徹夜になってしまうが、こっちからも出そう。


「ワオファン ウォアファ グウァルォワン、ワオァン?

『すまないがウォレスと見張りを頼めるか、ブレイザー?』」


「ウォン、ワゥア ガルクァル ガォルファ ファウオォオアァン

(いいぜ、そのために王都からの馬車の中で眠らせてもらったしな)」


そういえば、行きの揺れる幌馬車の中で頑張って仮眠を取っていたな。夜襲後の明け方頃に皆の疲労がピークになる事を見越してのことだろうとは思っていたが……


「ガゥッ ヴォルオウァン、ガルルァン クァルォ ガォルウォンッ、グルァ?

(それに体力も温存してる、そのつもりで帰りも馬車に乗せたんだろ、御頭?)」


「クァルッ、ガルワォン『助かる、よろしく頼むぞ』」


違法な奴隷商から頂戴した食料と革の水筒を長身痩躯のコボルトに手渡した後、皆にこの林で昼過ぎまで野営をすることを伝えて休息とする。


「クゥ、ワゥ、ワファ クルァア―ン♪

(あ、ここ、何か幸せな感じだよぅ~♪)」


早速、木漏れ日が微かに降り注ぐ丁度良い場所をアックスが見つけ、蒼い巨躯を丸め、尻尾をパタパタさせていた…… 何気に奴は幼い頃から居心地の良い場所を探すのが上手いのだ。


「ワォア、クルゥアンッ (じゃあ、あたしはここでッ)」


妹も適度に風が通る木陰を選んで丸まり、モフモフの狐しっぽで目元を隠して日差しを遮り、その近くにランサーも腰を下ろす。


(俺もさっさと寝るか……)


既によさげな場所は占領されてしまったがな……


……………

………


どうやら、奴隷商たちを襲撃したエルダーコボルトの小規模な群れはここで仮眠をとるようです。


「…… 不思議な(ウェルウェア)光景です(レスタディ)


馬を外されて停車する幌馬車の外では、人と猫人、コボルトの三種族が一緒に行動しています。エルダーコボルトともなれば高い知性があるため、人や猫人とも交わるのでしょうか……


確か、私が生まれる前のフォレストガーデンの戦いでは、エルダーコボルトやハイコボルトに率いられた犬人たちも森の民として、フィルランド共和国と戦ったと聞きます。


その戦いで、主力として前線に立って血を流した黒曜のエルフに報いるという側面もあって、長命な種族らしく緩やかに彼らに権利を拡張する風潮が生まれました。


かつてと比べて黒曜や青銅の同胞たちが選べる職種や居住区画もゆっくりと広がっていて、国政を司る中央議会への参加も機が熟したと思ったのですが……


(いえ、未練がましいですね。どう言い繕っても私は判断を誤ったのです…… この状況も自業自得というもの)


たとえ理想的な概念であっても、既成の社会構造を顧みずに権力を以って押し付けるというのは今思えば身勝手なことでした。


色々と後悔はあります。ですがデルフィスの言っていた通り、私が何かの行動をすれば、皆の対立を深めてしまう可能性を否定できません。


(もしかすると、この様な経緯でも私が国を離れたのは良いことかもしれませんね……)


それに種族を越えて交わり合う彼らの事を少し見てみたいという気持ちもあります。


(あの銀毛のコボルト、人族の大陸共通語を理解していました)


私たちエルフ族もかの戦いの後に人族と一時期は交流を持ち、その言語の理解も済んでいますし、ある程度の官職に就く者はその言葉を扱えます。


勿論、私も…… 彼の言葉は恐らく魔道具の仮面の効果で念話として送られてきますので、次は人族の言葉で応じようと私は決めたのでした。


……………

………

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