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賢者 VS 剣聖

「ッ、ギャオオォゥ!! (ッ、罷り通る!)」

【発動:腕力強化(中)】


小鬼族の(ゴブリン)双剣使い(ソードマスター)の両腕が瞬間的に膨れ上がり、曲刀による横一閃を縦に構えた双剣で受け止めた状態から押し斬ろうとしてくる。こちらは抜き打ちの勢いを止められており、右手一本では抗しえずにぐっと押し込まれてしまう。


「クゥッ (くぅッ)」


咄嗟に飛び退く俺に対して、奴は上体を軽く捻りながら右手の鉄剣を左肩の上にくるように振りかぶり、左手の鉄剣を脇に引き付けて連撃の姿勢を取る。


「ガデラゥスッ!! (喰らえやぁッ!!)」


「ガゥ、ヴォウル (はッ、御免被る)」


身を躱しながらも右掌に収束させた風属性の魔力を開放して風刃を放ち、相手の連撃の起点を潰しに掛かるが……


「ゼトスッ! (甘いぜッ!!)」

「ワフッ!? (なッ!?)」


至近から撃ち出された疾風の刃を見切り、小鬼族の双剣使いは左脚を軸にくるりと回転しながら外側へと身を躱し、勢いのままに振りかぶった右鉄剣を俺の首筋へと薙ぎ払う!


「ギャオォッ!! (うらあッ!!)」

「ウォオオオォッ! (うぉおおおぉッ!)」


思わず叫びながらケモ耳を伏せてしゃがみ込むと、頭上スレスレを奴の鉄剣が凄い速度で走り抜けた。耳を引っ込めなければ今頃俺は “耳なしコボルト” になっていただろう……


「グッ、ゴォルアァアァッ!! (ぐッ、この野郎ッ!!)」


屈み込んだ体勢から左手を地面に突き、右足を少し後ろに退いて立ち上がりながら力任せに奴の脛へと右手の曲刀を振り抜く!


「ッ、ウォッ!!(ッ、うぉッ!!)」


小鬼族の双剣使いは素早いバックステップで湾曲した刃を回避するが、引き切るような一撃は革の脛当てごと奴の身を浅く切り裂き、一瞬だけその動きを鈍らせる。


「ガルァアアァッ (だらぁああぁッ!)」


その機に乗じて相手の喉仏目掛けて迅速な突きを繰り出すが、俺の一撃は奴の左鉄剣で逸らされ、逆に右鉄剣がこちらの心臓に打ち込まれてくる。


「ギゥアッ、ギラドレス!! (くそがッ、斃りやがれ!!)」


「ガゥウッ、ヴォルアァッ!! (ははッ、やるじゃねぇかッ!)」


野生の本能さんが騒ぎ出して、何故かハイになってきた俺は心臓突きを半身で躱しながら、相手が踏み込む勢いも上乗せした左拳のカウンターを顔面に叩き込む。


「グゥウゥウッ!? (ぐぅうぅうッ!?)」


小鬼族の双剣使いが呻き声を上げてよろめくのに合わせ、土属性の魔力を右脚に籠めながら力強く大地を踏み込んだ。


「ガゥアオォッ、ウォルフ!! (喰い散らせッ、大地の牙!!)」


「ウォオオオッ! (うぉおおおッ!)」


驚いたことに魔力の流れを感知したのか、俺の足元から斜め前方に飛び出す土塊の牙を奴は倒れ込むように躱して、地面を転がって距離を稼ぎながら身を起こす。


当然、その隙を逃すはずも無く、追撃の刃を撃ち込もうとするが……


「グウゥ、レイジッ!! (ぐうぅ、纏雷(てんらい)ッ!!)」


顔を顰めながらも小鬼族の双剣使いが紫電を双剣に纏わせたため、途中で動作を止めて一定の距離を保つ。


(ッ、咆哮の効果が切れたか!)


ここにきて体内の魔力循環を阻害するハウリングノイズの効力が薄まっていくが、あれは魔力を練り上げておく必要があるため、余程の実力差がなければ戦闘中に使える技ではない。


「ガゥア ウルヴ クヴォルァァアァンッ!!

(要は得物に触れなきゃいいんだろうがッ!!)」


俺は風魔法の旋風を左拳に纏わせながら、右掌に握り込んだ曲刀を中段に構えて小鬼族の双剣使いと対峙する。


周囲では先程からコボルトとゴブリンの両種族が俺たちの戦いに手を出させないため、互いに刃を打ち鳴らして牽制し合っているが、いつまでも時間を取られる訳にもいかない。


それは相手も同じことで…… 暫時の静寂の後に裂帛の雄叫びが響く。


「ウガァアァアァ!! (うがぁあぁあぁ!!)」


気勢を上げて小鬼族の双剣使いが突進と共に掲げた纏雷の双剣を振り降ろす!


その斬撃を円の動きで右側に躱すと、間髪入れずに紫電を帯びた左鉄剣が横薙ぎに振り抜かれて俺の首を狙う。紙一重で迫りくる凶刃を左拳に纏う旋風で弾き飛ばすが、手の甲が浅く切り裂かれて血飛沫が舞い散る。


「ガウゥッ (ちいぃッ)」


左手を襲う鋭い痺れと痛みを気に留める余裕もなく、小鬼族の双剣使いは弾かれた左腕の下を潜らせて俺の脇腹を串刺しにする右鉄剣の刺突を放つ。


意識の虚を突くように繰り出された一撃を躱しきれず、紫電を纏った刃が俺の腹を浅く切り裂く。


「グゥアァッ!?ッ、グルァアアァッ!!

(ぐぅあぁッ!?ッ、ぐるぁああぁッ!!)」


刹那の瞬間に電撃が身体を駆け抜けるが、金剛体の応用で純粋な魔力を体内に巡らせて干渉系魔法への抵抗を上げていたことが奏功する。一瞬の硬直を咆哮と共に跳ね除け、攻撃直後に僅かな隙を晒す奴の胴体を曲刀で引き切った。


「グブッ、ァア、ギズ ギレウスァ……

(ぐぶッ、ぁあ、俺もここまでか……)」


脇腹から胸までを切り裂かれた小鬼族の双剣使いは力なく頽れていく。その手に握る双剣がずり落ちてカランと乾いた音を鳴らした瞬間、怒鳴り声と共に閃光が奔る!


「ギードォオオォオ!! (ソードォオオォオッ!!)」


「ワファ!? グォオオォッ!!

(なぁッ!? ぐぉおおぉッ!!)」


いつの間にか射撃の距離まで接近を許していた大剣持ちのゴブリンが顎を開き、輝く閃光のブレスを撃ち出して俺の右肩に風穴を穿つ。


「ッ、ウゥア……ッ」


眩い光に視力を奪われながら、激痛に曲刀を取り落とし………… 気が付けばいつもの真っ白な空間、白銀に輝く螺旋階段の踊り場に佇んでいた。

”皆様に楽しく読んでもらえる物語” を目指して日々精進です!

ブクマや評価などで応援してくれれば、本当に嬉しく思います!


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