漆黒の花々 Ⅰ
Cypher偽装小惑星基地
宇宙海賊 Cypherのキャプテン ドレークは、反宇宙連合組織 "MARE" と交渉を行っていた。
『前回は良くやってくれた』
「……あぁ」
前回というのは第13艦隊のディラン・マッカートニーが護衛をしていた
ニューヘイヴン社製の新型機、16機を強奪した件だ。
機体名は確か……"バイネッケ"だったか
「それで次は?」
通信相手はMARE 幹部の1人 "ラビアータ" という男
何度か交渉を行っているが常に良い案件を回してくれる。
『ケプラー方面。少し長旅にはなるのだが、一つ手に入れて欲しい物が――』
『ラビアータ様。対談中失礼いたします。情報通り第3艦隊から輸送されている例の物資がグリーゼを通過したと報告がありました』
彼の秘書か何かか、交渉中の会話に割って入るということは余程重要な件なのだろう。
『そうか。やはり安手ではどうにもならんものだな……丁度いい、その物資の件。君にも任せたい、ケプラー方面の件は忘れてくれ。――情報を彼へ』
『承知いたしました』
早速、暗号データで情報が届く。
ラビアータからの情報は相手戦力の事前情報は勿論、輸送ルートも正確に提示してくれる。
ケプラーからグリーゼ、そして第3コロニー建設宙域への輸送。
今回は内容物の詳細まで確認できる。
警備強化のための戦力の補充を目的としたDDの輸送が主な内容か……
だが……
最短ルートとはいえ、俺達がバイネッケ16機を強奪した宙域とほぼ同じ場所を通過するというのは余りにも無警戒に見える――
それに第3艦隊絡みか……少々厄介だな。
ドレークは少し俯き艦長席に深くもたれ掛け、左目の眼帯を何度か撫でると「――報酬は?」とその交渉を簡潔に済ませようとした。
しかしラビアータの通信音とは別の男の通信音が突然割って入る。
『おいおいラビアータ。その物資の件は"FUNG"の連中と俺が直接行く手筈だっただろ?』
MARE 幹部の1人 "ヴェスヴィオ"だ。
彼は想定には無かったCypherの参入に否定的な声を上げる。
こいつはラビアータとは違い、話の通じないタイプだ。
だがFUNGも関わってくるとなると十分 金の匂いはする……
FUNGは宇宙海賊の中でも巨大な組織で取引は合理的に行う。
依頼は手際よく熟し、裏組織の間では信頼度も高い有能な犯罪組織だが、敵や裏切り者に対しては容赦はしない。
敵に回せば宇宙連合以上に厄介な連中だ。
『――ヴェスヴィオ。我々は万が一を想定して動かねばならない。手数は多い方がいい』
『万が一だと?俺が出るんだ。何も起きやしねぇよ。ラビアータ俺はな、外部の弱い連中に頼る方がお前の言う万が一ってのより何倍も怖いぜ』
身内で口喧嘩でも始まるのかと思えばこちらへ火の粉が降りかかってきた。
「……弱いだと?」
『聞こえなかったのか?貴様らでは役不足だと言っているんだ眼帯野郎』
分かりやすい挑発にドレークは小さく溜め息を吐く。
「そんなに吠えるなよ。前回のニューヘイヴンの新型機は依頼通り手に入れた」
『それだけで満足しているから役不足だと言っている! マッカートニーなんぞを取り逃がしているようじゃぁ程度が知れている!』
「腐っても奴はエースだ。一筋縄ではいかんさ」
『チッ……ラビアータ。こいつが来るのは構わねぇ……だがな俺の邪魔だけはさせるなよ』
ヴェスヴィオはそういうと通信を切った。
『すまなかった。あれでも我々MAREにとって必要な男なんだ』
呆れた口調でラビアータはドレークへ謝罪する。
「構わない。奴は不満だろうが、お前の言う万が一という状況までは手を出さず傍観させてもらおう。だがどのような結果でもきっちり報酬は頂く。いいな?」
『あぁ。よろしく頼むよキャプテンドレーク』
「一応確認だが、お前の言う万が一というのは強奪中のENIMの出現か? それともヴェスヴィオの失――」
『勿論どちらもさ。露払い。もしくはあいつの尻を拭ってやってくれ。報酬はどのような結果でも必ず支払おう』
ラビアータ……腹の内が読めない相手だが、やはりこいつとの取引はやりやすい。
さて、ヴェスヴィオがどう攻略するか……見ものだな。




