護衛と奇襲 Ⅴ
「目標が移動を開始!」
「チッ――連合の艦のクセにコソコソしやがって、気付かれないとでも思ってんのか? 絶対に見失うな」
不意を突いたつもりが、こうもあっさり2人やられるとは……だが、まだDDの数で勝っているこちらに分がある。
「なっ……これは……! 高密度の光子エネルギーを確認! 直撃コース!」
「な、なんだと!? 回避しろ!」
「無理だ! 間に合わない!」
一隻の宇宙戦艦の側面を一閃――戦艦の対光子装甲さえ容易く貫通出来るであろう収束率の高い光子がギリギリの所を通過すると、思い出したかの様にアラームが遅れて艦内に鳴り響く。
「あ、危なかった……一体どこからだ!?」
ほぼ真正面からの攻撃だったが、距離のある護衛戦艦が攻撃を仕掛けてきた形跡はない。仮に射程範囲内だったとしても味方のDDが射線上にいる間、奴らは撃ってくる筈がない。
「方向からしてDDの攻撃かと」
「馬鹿な……」
こちらのセンサーが感知する前に光子を収束させ発射できる武装が……
それもこの距離をこの精度で狙撃してくる奴がいるのか?
だが、今の狙撃を外して向こうの計算はかなり狂ったハズだ。
こちらの計画も大幅に変わるが護衛艦と護衛機が増える前にここで畳み掛ける。
「計画変更だ! カルゴを出せ!」
カタパルトハッチに複合多重装甲を纏った機体が固定される。
その複合多重装甲には数多の違法改造パーツが取り付けられている。
「カルゴ! 俺も前へ出る。 先行しろ!」
艦を仕切る男の命令に顔の隅々までタトゥーが入った筋骨隆々の男が低い声で応答する。
『計画変更? あいつらヘマしやがって、めんどくせぇなぁ……』
不機嫌そうな言葉とは裏腹に、男は口角を上げ『減った人数分は俺の分け前にしろよ』と不気味な笑みを浮かべた。
***
ライアン・キャンベル大佐が駆るマイル・ゼロは5機の敵に囲まれながらも一切の被弾もなく、寧ろ敢えて隙とも思えるような動きを混ぜながら相手を惑わし、引き付け続ける。
そして戦闘の最中でも部下であるソフィアへの注意も怠らない。
「おいおい……威嚇射撃だぞ? 危うく当てちまうとこだったじゃねぇか」
『ちゃんと はずした』
「あのなぁ……重要人物は捕らえて色々と聞き出さねぇとだから、しっかり加減を――」
『あ、たいちょう なにか でてきた』
ライアンは蠅の様に周りをブンブン飛び回る敵機を簡単に振り切り、敵艦の方向を確認する。
「仕掛けてきたにしては手応えが無いと思っていたが……予想通り戦力を残してやがったな。それを釣り出せたとなればまぁ、威嚇射撃の結果はオーライだ」
『どうするの?』
「俺はこいつらを誘導して、このままアルキオネと敵艦の間で戦闘を続け防護巡洋艦と合流する。
恐らくあの機体はアルキオネを狙ってくる。アルキオネの進路を確保しつつ時間稼ぎを頼む」
『たおしちゃってもいい?』
「できれば捕らえたいところだが、中尉に余裕がなければそれもやむを得ないなぁ」
ライアンの煽りにソフィアはムッっとする。
『じゃあつかまえる』
「無理はするなよ。もう一度言うが時間を稼いでくれればいい」
『らじゃ』
「さてと……アルキオネ聞こえるか――?
新手を感知しているとは思うが、そのままこの場を脱しろ。シェーンベルグ中尉が時間を稼ぐ」
サラ副長が応答する。
『承知しました。 キャンベル大佐、ご武運を』
「おうともさ――キャンベル隊、敵の武装は削いでおく。合流後、各個この無法者共を取り押さえろ」
『『『――了解!!』』』
***
「アスト艦長、新手はソフィア中尉が時間を稼いでくれるようです」
「分かった」
あいつらが護衛とはいえ念には念を――
「戦闘態勢。Team A出撃。
ザヴァリィは敵艦及び敵機から見えないアルキオネの後方へ張り付け、リュドミラは甲板上に機体を固定、狙撃態勢を取らせろ」
「Copy――Team A出撃させます」
「主砲及び対空機関砲展開します!」
サラ副長が出撃のオペレーションを開始する後ろでメアリーがアルキオネを戦闘態勢へ移行させる。
「メアリー、主砲は常に敵艦の進行方向へ向けるように伝えてくれ、それと速度を敵艦に合わせ、常に敵DDと敵艦がほぼ直線上に重なるように進路を取れ」
「了解です!」
『機体固定完了致しました。 あ、いつでも撃てますので』
『後方に付いたよ』
「Team A、各機、指定の位置へ着きました」
よし、後は相手の出方次第……それと違法改造による あれ が起こらない事を祈るだけだ。
「何もなければ予定の航路に戻り最大艦速へ移行。正体不明の敵は第51艦隊へ任せ、敵艦を振り切る。 その際Team Aは振り落とされないように注意しろ」
『『――了解』』




