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護衛と奇襲 Ⅳ

――ブリッジに入り艦長席へ座ろうとしたその時、サラ副長がアストへ報告をする。


「アスト艦長。 ミュルティロスから緊急入電です」


「どうした?」


「敵艦を捕捉したとのこと。 敵機は既に本艦進行ルート上に散開、こちらへ向かっています」 

 

 護衛終了目前のアレイア(防護巡洋艦)とミュルティロス(通報艦)が方向転換し、俺たちが警戒宙域を超えるタイミングを狙ったか……


 俺たちの何を狙っているのか知ったことではないが、護衛艦が完全に離れきる前に手を出してくるとは……いや、護衛艦諸共奪ってしまおうという魂胆だろうか?


 強襲されるタイミングのテンプレの1つとして考慮はしていたが、散開距離も甘くただ真っ直ぐに突っ込んできているだけ、余りにも無鉄砲な奴らだ。


 悪党共とはいえ20年前に比べれば――


「随分と質が下がったものだな……」

 

 あぁそうか。 きっとライアンも俺にそう思ったんだろうな……昔の俺はもっと――


 感傷に浸っている間にも戦況は動き続ける。


 CIC補佐のメアリーはその状況をアストへ報告をする。


「現状確認できる敵機の照合はCypher(サイファー)の物とは一致していない模様です! 確認できる敵機の数は5――いえ、7機です!

 想定される敵DD武装の射程圏内まで残り600です!」


 ライアンたちのいるこのタイミングでCypher(サイファー)と相対できれば有難かったが、奴らは情報的にこんな所で仕掛けてくるようなアホな集団ではないか……。


「ヴィジランスレッド発令。 減速し、護衛艦との位置を修正する。

 既に動いてくれているとは思うが、潜んでいる敵部隊が存在しないか隈なく探す様にミュルティロスへ連絡してくれ」


「Copy――」


『ヴィジランスレッド発令。ヴィジランスレッド。Team A(アルファ)、Team C(チャーリー)搭乗機にて待機。繰り返す――』


 けたたましいアラート音と放送が艦内に響き渡る中アストは急ぎ艦長席へと座る。


 艦長席のモニターには既にライアンから通信が入っていた。


『お前んところのパイロット諸君は待機だけしておけ、奴らは俺たち(第51艦隊)だけで叩く。 お前はお得意の目立たない立ち回りをしてろ』


「頼む……だが無茶だけはするなよ」


『無茶するな? 今回は護衛任務なんだそれは聞けない話だぜ。

 ただの遠足で終わらなくて良かったぜ』


「何もない方がいいに決まってるだろ……」


『皮肉だよ皮肉! そんじゃあ数十年ぶりにアルキオネからDD相手の戦場へ出るとするか! 嬢ちゃん(ソフィア)出れるか?』


『いつでもいいよ。 だけど、そのよびかた(嬢ちゃん)は やだ』


『悪い悪い、シェーンベルグ中尉殿』


 その通信を聞いていたサラ副長とメアリーがアイコンタクトを取り発進シークエンスを開始する。


「第1気密シャッター閉鎖。DD、ドッキング工程省略――」



『第51艦隊1番機 "マイル・ゼロ" 。 15番機"ゼヴサ アセンブル"。

 起動を確認しました。第2、第4気密シャッター閉鎖します。両機リニアカタパルトへ固定確認。発進スタンバイ完了です!』



『あるきおねから はっしんするの おちつく』


「あぁ、その気持ち分かるぜ……」


『どうして?』


「俺も元アルキオネのクルーだったからな」


『そうなんだ……しらなかった』


「あの野郎、教えてなかったな……? まぁいい、俺が遊撃を行う。

 変に前に出ずアルキオネの護衛に徹しろ」


『らじゃー』


「それにシェーンベルグ中尉はその機体で初の実戦だ。 機体性能に引っ張られるなよ?」


『よけいなおせわ。いわれなくても わかってる』


「言うねぇ。若いパイロットは尖っててナンボだ。 

 中尉はアイツみたいに丸くなるんじゃねぇぞ」


『あいつ?』


「フッ……いや、何でもねぇ。さぁ気ィ引き締めるぞ」



『両舷、ハッチ開放します!

 ――リニアカタパルト、音声認識接続しました! 発進して下さい!』



「よし。 マイル・ゼロ、ライアン・キャンベル出るぞ!」


「ゼヴサ アセンブル――ソフィア・フォン・シェーンベルグ でます」



 新たに編成され1週間程しか艦内での訓練を行っていないアルキオネの新人クルーの多くが冷静に対処しようと心掛けてはいるが、驚き慌てふためく。 

 そして護衛を務めていた第51艦隊アレイア(防護巡洋艦)とミュルティロス(通報艦)も慌てて陣形を戻そうと必死だ。


 正にこの状況は敵の思惑通りと言ったところだろうか。

 

 そんな中、動揺せずしっかり対応できる隊員も勿論いるが特に2人のおっさん(大佐)には何故か冗談を言い合う余裕すらあるのだった。

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