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護衛と奇襲 Ⅲ´


――同刻――


 アルキオネ艦長室ではコーヒーを片手におっさん2人が談笑していた。


 和気藹々と話が弾む。

 会話していると、共に士官学校へ通いそして戦場を駆けた日々がつい最近の様な気さえしてくる。


 そんな2人も今では大佐。


 日頃から部下には言えない様な愚痴や心の内の事まで、まるで親兄弟の様に隔てなく話は盛り上がったがそんな楽しい時間はあっという間に過ぎていく。


「もうそろそろで警戒宙域を出る。こっから先は管轄している第20艦隊へ詳細を送り引き継いで貰う」


「すまない。 護衛のお陰で皆しっかり休むことができた。 感謝するよライアン」


「そちらの司令官殿に感謝するんだな。

 うちの本部にすげぇ頼み込んできたらしいぜ。

 今はこっちも人手が足りねぇって最初は断ったらしいんだがそっちの気迫に負けて……やれやれ、どんな交渉をしたのか俺らを動かしやがった」


 うちの司令官(春夏秋冬一花)がご迷惑をおかけしました……


「しっかしまぁ独立部隊だか何だかよく分かんねぇが、グリーゼ安全宙域での戦闘にアルキオネが参戦していると知った時は驚いたぞ……」


「俺もソフィアの上官がライアン・キャンベルだと聞いた時は驚いたよ……まさか51艦隊のDD部隊隊長とは――それにまだあの機体(マイル・ゼロ)に乗ってると知って思わず笑っちまった」


「お前が艦長やってる方がお笑いだろうが、臆病者め」


「臆病者か……。久々に言われたよ」


 昔はそう言われてよく口喧嘩したもんだが、今じゃそこまで感情が高ぶらないのは俺が年を取ったからなのだろうか?


 ライアンも昔とは明らかに反応の違うアストに違和感を感じたのだろう険しい表情でアストへ詰める。


「いつもなら言い返してきたのによ……お前、大丈夫か?」


「なんだよ急に」


「いいか?これからお前が戦いに行く相手は"あの日"と同じ……人間だ。

 色々準備だけはしているようだが、ENIM(エニム)相手じゃないからって気を抜いていると足をすくわれるぞ。

 今も()がり(なり)にも艦長って肩書背負ってんなら……しっかりしろ」


「おいおい、いきなり説教か?」


「あぁそうだ。 今後またいつ話せるかも分からねぇからな……

 そんでお前のその感じ――まだ引きずってるだろ?」


「よせよ……"あの日"の話は」


「あの時、消去法で選ばれただけの立場だったんだ。お前がまだ艦長を続ける理由がどこに――」


「俺は……皆が帰ってくるこの場所(アルキオネ)を……

 いや、何でもない。 惰性でやっている気は無いよ」


「皆ってお前……酷いことを言うが現実を教えてやる。

 あれからもう20年以上経ってる。

 お前があの後もそうやってひっそりと戦っている間に"あの日"生き延びたあいつらでさえ……ENIM(エニム)との戦いで命を落とした」


「…………そうか」


「俺らの戦いは"あの日"だけじゃない。

 今だって戦っているんだ。

 だから忘れろとまでは言わないが……いい加減割り切れ」


 アストが心の奥底に仕舞い込んでいた過去の感情を掘り起こされ胸がズキズキと痛む。


「ハハ……やめてくれよライアン。 俺は――」


「帰ってくる場所を守りたい? 違うな。

 お前は自分の目の前で仲間が散っていくのを見たくないだけだ。

 あの日のあいつらは帰ってこれないんじゃない。

 もう帰ってこないんだよアスト」


 そんなことは分かっている。分かっているさ……。


「あぁ……」


 ライアンは今にも消えそうなその返事に大きくため息を吐いた。


 そしてライアン自身も本当はこの話をあまりしたくはなかったのだろう。

 優しい声色に戻りそっと話題を変える。


「――格納庫の2番機、見たぜ」


「あれは……一応積んでるだけさ」


 ライアンの言う2番機とはアルキオネが搭載するDrive Doll(ドライヴドール)の中で現在2番目に登録されている機体のことだ。


1番機 ヴィナミス

3番機 エクスィー

4番機 イヴサ アセンド 等々



「鞘に納まったままの剣じゃ守りたい時に誰も、何も守れない。

 だから俺はまだ、あれ(マイル・ゼロ)に乗っている」


「……相変わらずの世話焼きだな」


「仕方ないだろ。お前の尻を叩ける同期はもう俺だけなんだ。

 護衛して送り出したお前らが全滅しました――じゃあ後味悪すぎるだろうが」


「変わらないな……ライアン」


「お前は艦長になって少しマシになったかと思えば、余計臆病者になっちまってるじゃねぇか」


「……そうかもしれないな。

 納まったままの剣じゃ守りたい時に誰も、何も守れない……か。

 肝に銘じとくよ」


「今みたいに落ち着いたお前も悪くはないが、少しは過去の自分を見習うんだな――

 おっとウチの艦長から帰投命令だ。 こういう時だけ時間が経つのが早くて嫌になるな。 それじゃあ、俺と嬢ちゃん(ソフィア)は帰るぜ」


「あぁ……ソフィアをよろしく頼む」


 言われなくてもと言う様な表情でライアン・キャンベルは振り返ることなく手を小さく振り自身の機体の元へ戻っていった。



「サラ副長、ライアンとソフィアが出る。 機体の準備を頼む」


『対談お疲れ様です。既にお二人の機体の準備は整っています』


「そうか、俺も直ぐにブリッジへ戻る」

 

 アストはライアンから言われたことが何度も頭の中で再生され、それに対し心の中で繰り返し(分かっている)と呟き、俯きながらブリッジまで戻った。


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