本格始動と新年 Ⅵ´
隣接されている秘書室から世話係のメアリーがひょっこり出てくる。
「あっ!天音艦長おはようございます。今、荷解きのお手伝いをしていたところです」
「大体終わったので見て下さい」と案内され、蛻の殻だった秘書室を覗きに行く。
「おぉ……ちゃんと物がある」(語彙力0)
各々のデスクの上にはに電子機器や私物等が綺麗に整頓されている。部屋の隅に1つ大型の観葉植物。その横にはフリードリンクコーナーやお菓子などが並べられている。
「朝からご苦労だったなメアリー」
「まだ奥の仮眠室の準備がありますんで、何かあったら呼んで下さい」
そう言うと彼女は再びテキパキと働き始めた。
暇だし、見ているだけじゃ申し訳ない
「俺も手伝――」
「アスト大佐はこちらへどうぞ」
「あ、え?」
ゼノビアが秘書室の真新しいソファーへアストを誘導し座らせた。
続けてリュドミラが「アスト大佐、お召し上がり下さい」と目の前のローテーブルにコーヒーを丁寧に置く。
「ど、どうも――」
「あ、ミルクとお砂糖は?」
「いや、大丈夫……」
「大佐、これ」ザヴァリィがチョコレートケーキ(ホール)を何処からか持ってくるとコーヒーの横へ置く。
「美味しいから食べてみて?」
誕生日か何か!?
「えっと……皆さん、お構いなく」
至れり尽くせり過ぎて落ち着かない……
そしてジョセフィーヌが「もし、宜しければ午後の訓練を見に来て頂けたりなんて――」と少し照れながらアストを誘う。
アストは今後の予定に空きがあるかどうか、余裕のある表情を装いつつ、助けを求める様にサラ副長へ視線を送る。
「本日の昼食後は16時まで予定はございませんので、アスト艦長も彼女達の訓練期間は共に身体を動かされてはどうかと」
彼女達の期待の眼差しを四方から受ける。
回避不可能。望みは、絶たれた。
仕方なく「……わかった」と言い、嫌な表情を隠すようにアストはコーヒーカップを手に取り口に当て、彼女達が働く様を眺めるのだった。
***
北暦290年
ケプラー日時 12月26日 13:42
宇宙連合軍管轄外宙域 Cypher偽装小惑星基地
「解除にどれ程掛かる?」
「まだ分かりやせん……新型なのもあってプロテクトも厳重で」
宇宙海賊Cypherはヘスティア級 輸送艦 5番艦 イテュスを護衛する第13艦隊の半数以上を壊滅させ、物資及び新機体が格納されているであろうコンテナの奪取に成功。第20艦隊が加勢に来るも、それらを退き、彼らが所有する偽装小惑星基地へ無事帰還していた。
「そうか、仕方がない」
ドレークはそう言うと誰かと通信を始める。
「俺だ――」
「――あぁ、奪取に成功した」
「――――1週間でどうだ?」
「――――少々解除に手間取っていてな」
「――――腐っても連合の新型だ。待つ価値はあるだろ?」
「――――あぁ、追って連絡する」
通信を切ると、解除を行うゴーグへ命令する。
「時間は作った。必ず開けろ」
「了解しやした!ありがとうごぜぇやす」ゴーグは深々と頭を下げ感謝すると話を切り出す。
「しかし、ここまで上手くいくとは思いやせんでした」
「かなり信憑性のある情報だったからな。だが、奴を仕留めきれなかったのが惜しいところだ」
「敵の援軍がなければマッカートニーを確実に落とせていやした」
「フッ、運も実力の内。仕留め切れなかった俺もまだまだ甘い……」
「そんなご謙遜を」
「奴には意地がある……また嫌でも戦うだろう。次こそは落とすさ」
「期待しておりやす。キャプテン」
ゴーグは満面の笑みでドレークを見送るとコンテナの解除に勤しんだ。




