再会と新世代 Ⅷ´
予測されていた規模を遥かに超えるENIMの出現数に右翼を守る手練れの第2艦隊は、陣形こそ崩されないものの、中央を護る第43艦隊が壊滅的な状況の為、援護に数を割いている所為で攻めあぐねていた。
左翼側を護る第51艦隊 DD部隊 隊長のライアン・キャンベル大尉は、陣形が崩れ徐々に劣勢になる戦況の中、自分の母艦だけはと孤軍奮闘していた。
そんな中、朗報と言うべきか思わぬ援軍の情報が入る。
『ライアン隊長!パルラスより援軍報告。本艦の左舷前方にアルキオネです!それと左舷後方に訓練艦のテレテ!?』
「アルキオネだと?!」
あの臆病者がグリーゼに来ていたのか……よくもこんな所まで出てきたものだ。それに何故、訓練艦なんぞを連れている?
『アルキオネ、大型ENIMを撃破の後、180°回頭。訓練艦テレテの方向へ向かっている模様です』
天音、お前は何をやっている?!
「奴らの動きに気を取られるな!今は目の前の敵に集中しろ!」
『隊長!更にパルラスより情報です……後方より所属不明?これはENIM?』
「なんだ?!はっきりしろ!」
『どうも正しい情報か分かりませんが、DDと推定される機影を捕捉!パルラスによると増援とのことです!』
***
――アルキオネが南8番ゲートを発進してから約15分後――
北暦290年
ケプラー日時 12月10日 17:52
第2超巨大コロニー グリーゼ 南ゲート "サクラメント・エレクトロニクス" 専用ドック
サクラメントの女性技術者、フローレンス・N・ウールウォード博士は交渉を持ち掛けようと動いていた。
「ご機嫌ようエルキュール提督」
『春夏秋冬の次は貴様か……戦闘中だというのに、騒々しいな』
「――その春夏秋冬司令の部隊、今回の戦闘への参加を許容したとお聞きしました。であれば我々の"新兵器"の出撃もご検討していただけますでしょうか?」
『耳が早いな。だが、その兵器は最後にパイロットの安定性を確認してからではなかったか?』
「本日その検証をするはずが、この騒ぎで出来なくなってしまいまして――』
フローレンスは残念そうに言いつつ、口振りは何処か嬉しそうだ。
「つきましては、今回の実戦で機体と操縦者、同時にデータが収集できれば。と思いまして」
彼女の隠しきれていない裏の態度にエルキュール提督は悩み、髭を撫でる。
『更新済みの機体情報を送れ』
「承知しました。送信いたします」
型式番号:|Drive Dummy NE-S001 LM
識別名:――――
N:第9世代ENIM生体データ使用
E:地球外骨格
S:サクラメント・エレクトロニクス
001:開発ナンバー
LM:Late Model(後期型)
これが新世代のDrive Doll……|Drive Dummyか――到底人間に扱える物とは思えんな……
『――どちらかに不具合が出た場合、貴様はどう責任を取る?」
「私の方で無難に処理しても構いませんが。勿論、それらをENIMと断定し、機体もろとも撃っていただいて構いません」
下劣な奴よ……
『そうだな……1つ、私の条件を呑めば今回の出撃を了承しよう』
***
『ヴェルル、出撃の許可が出たわ――起動しなさい』
「承知しました。マスター」
感情の無い返事をする銀髪の少女は専用のヘルメットを被り、乗り込んでいる機体を始動させた。
――"|Drive DummyNE-S001 LM" 起動シークエンス開始――
メインエンジン/接触――
AI E/起床――ヴィジランスレッド知覚。
【オールアラウンドモニター】/コネクション――
【バイアスモーメンタムシステム】/コネクション――
【フォトンウェポンシステム】/コネクション――
【放熱姿勢制御翼】を知覚――
【EXTRAギア】 コネクション正常
登録戦艦情報なし――通信未接続
サクラメント・エレクトロニクス 通信室との接続を申請――通信接続
「起動完了」
『問題なさそうね。――カタパルトへ繋げたわ』
サクラメント・エレクトロニクス専用ドックのゲートの扉がゆっくりと開き、リニアカタパルトのレールが宇宙へ伸びていく。
カタパルトに固定されている漆黒の機体はイヴサ アセンドが装着する複合多重装甲とも異なる黒い装甲に覆われ、そのシルエットはまるで開花直前の睡蓮の蕾。
徐々にゲートが開いていくにつれ、星明りに機体が照らされていく。
その姿は――人型のDrive DollよりもENIMに酷似していた。
『――発進しなさい』
「イエス マイマスター――"ブラックロータス"。ヴェルル・デ=グロート行きます」




